第12話白虎

 ジャグジーの中から顔を上に向けると、真っ白で大きな虎が宙に浮かんでいるではないか!


「ほう、なかなかの強さだな」


 セイが念話では無く言葉にして話し出した!


「セイ、コイツは何者だい?」


「コイツとは偉そうに言ってくれるな、小僧」


「名前を知らないのでな、何と呼べばいいか分からないんだよ」


「我が一族は白虎(びゃっこ)と呼ばれている」


「じゃあ白虎さん、何の用があるんだい?」


「うむ、我ら一族は綺麗好きでよく水浴びをするのだが、特に温泉が大好きなんだ。我はこの辺りを縄張りにしているのだが、生憎(あいにく)温泉が湧かぬ土地だったのだが、久し振りに温泉の香りがしたので入りたくなったのだ」


「あちゃ~、有馬温泉の素を入れたのが悪かったのか?」


「温泉を作る薬があるのか?」


「ああ、俺の固有魔法なら色々な温泉を再現する薬を配送させる事ができる」


「礼はする、その湯に入らせてもらいたいのだが?」


「分かった、俺は小さい方に移動するから、白虎は大きい方に入ってくれ」


「うむ、有り難い」

 

 いきなりやって来た純白の大きな大きな虎は、御湯が一杯に入っていた大きい方の湯船に入った。体積が大きい分、俺で丁度よかった御湯が溢(あふ)れて勿体無(もったいな)いが、そこは仕方がない所だろう。


「入ると一段と香りがよくなり温泉気分が強まるな、これで酒があれば言う事無いのだがな」


「おいおいおい、虎の姿で温泉酒を飲むのか?」


「うむ、他の者から奪い取った酒を温泉の縁(ふち)にぶちまけ、それを啜(すす)り舐(な)めるのが温泉入浴の醍醐味よ!」


「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な奴だな、俺の風呂を使うのなら人様から奪い取った物を飲み食いするなよ」


「ふん、俺様の勝手だろうが! だがまあなんだ、そこの生命の大樹に逆らうほど命知らずではないから、御前の言う事は聞いてやる。それにここは地面より高いから、酒を飲もうと思えば一旦温泉を出なければならん」


「ほんと仕方のない奴だな、まあ温泉酒が好きなのなら仕方がない、飲ませてやる。その代わり入泉料(にゅうせんりょう)と酒代として、美味しい獣かモンスターを狩るんだぞ」


「酒を飲ませてくれるのか?! 約束しよう、明日はとびっきり美味しいモンスターを狩って来てやる!」


「今用意するから待っていろ」


 まずはジャグジーに浮かべる桶が必要だよな、どうせなら多めに買っておこう。


特大さわら湯桶(27cm×12・5cm)×10×3640=36400

大ひのき湯桶(24cm×11cm)×10×4350=43500

小ひのき湯桶(21cm×11cm)×10×3680=36800


 特大の湯桶をジャグジーに浮べて、中に酒を満たした小の湯桶を入れれば、白虎も入浴しながら酒が飲めるだろう。肝心の酒選びだが、下戸(げこ)の俺に酒の善し悪しなど分からん!


 有名どころの酒を買っておけばよかろう、検索して1番上に来るのは?


山口県産・磨き二割三分・純米大吟醸・1800ml:10800


 次は?


新潟県産・銘酒3本飲み比べセット・720ml×3:4213


 3番目はニューヨークで大成功した日本食レストランが新潟の蔵元に作らせた酒か!


新潟県産・純米大吟醸・1500ml:3780


 4番目は佐渡の酒屋さんが、佐渡新潟の地酒を6本詰め合わせた物だな。2本は2番目の銘酒3本飲み比べセットと被るけど、俺でも知ってる有名な酒だから大丈夫だろう。それに等級や磨きが違う酒かも知れない。


佐渡新潟産・銘酒2佐渡地酒6・300ml×6種:3980


 5番目は甕に入った吟醸生酒か


新潟県産・吟醸生酒・1800ml:6995


 6番目はモンドセレクションの金賞受賞の特選大吟醸酒か、しかも3番目のニューヨークレストランが作らせた酒と同じ蔵元だな。


新潟県産・特選大吟醸・720ml:5400


 7番目はメンドクサイから、被ってもいいから一升瓶のセットを買おう。新潟県産日本酒飲み比べセット、また同じ酒が入っているけどラベルによって等級が違うようだ、値段も違うし大丈夫だろう。


新潟県産・普通酒3・本醸造酒1・純米酒1・1800ml×5:10800


 ありゃりゃ、最初の酒を湯桶に入れて白虎に飲ませてやったんだけど、最後の酒を注文し終わる頃には、4番目の300ml詰めの酒を半分飲み干している!


 魔法か念動力かは分からないけど、器用に酒瓶を宙に浮かせては栓を抜き、酒を飲みほした湯桶に注いでいる。虎の癖に御機嫌に鼻歌まで歌うとは、温泉を楽しんでいるおっさんと変わらないな。


 俺は注文の間湯船に浸かっていたので湯当たりしそうだ!


「俺はこれで上がるからな、後は勝手に飲んで楽しんでくれ」


「おう! ありがとよ!」


 豪快な奴だが、約束通り美味いモンスターを狩ってきてくれれば助かる。まあこのまま飲み逃げ去れても、セイがくれた途方もない財産があるから買い物に困ることもないし、狩りもセイの魔法支援とアドバイスがあれば問題無いだろう。


 俺も喉が渇いたから、瓶入りの成分無調整の低温殺菌牛乳を飲もう!


埼玉県産・成分無調整の低温殺菌牛乳・900ml×10:6430

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