第79話自首

「分かりました、出来る限り努力しますが、背後が心配で集中出来そうにないんですが」


「Y組の戦闘部隊の事ね」


「ええ、毎日毎日反社会組織の構成員とは言え、死に顔を確認するのは苦痛です。それに何時生きたまま異世界にたどり着くか、心配で心配で夜も安眠できません」


「三日三晩寝付いて散々心配させておいて、よくそんな口を利けるわね」


「ごめんなさい!」


「まあいいわ、事ここに至っては盗聴されるのは覚悟の上だから率直に言うけれど、T国やK国が工作員を乗り込ませて死んでくれるのは好都合なの、可愛い動物を実験に使って殺さなくてもよくなったから」


「姉さんも酷い言い方をしますね、Y組の反社会組織構成員は動物以下ですか」


「そうよ、一朗君もそう思うでしょう?」


「まあそれはそうですが」


「それに徐々に入り込む人数が減っているでしょう」


「ええ、流石に人集めが出来なくなったのか、政府が邪魔をしてくれたのか、どちらか分からなかったですが人数は減っていますね」


「確実に死ぬ仕事だから、大規模抗争が起こって鉄砲玉に指名された時と同じ反応が起こっているのよ」


「え? いったいどう言う反応が起こったんですか?」


「異世界行きを命じられた鉄砲玉が、命が惜しくなって捕まるように画策したのよ」


「自首ではないのですよね?」


「自首だと刑務所から出た時に報復されるか、帰る所が無くなるわ。だから武器を持ってドローン出発場所に向かう時に、警察に武器を持った者が集まっていると110番するのよ」


「自作自演で逮捕されると言う事ですか?」


「そうよ」


「でも警察が逮捕せずに泳がす場合もあるんじゃないですか?」


「110番での通報は記録が残るから、もし逮捕に行かなかったらマス塵に叩かれてしまうのよ」


「効果があろうと必要な場合であろうと、泳がすことができないんですね」


「ええ、何かあった場合は誰かが警察を辞めなくてないけないほど、マス塵に叩かれてしまうわ」


「そうなると、いずれは動物実験をしなければならないと言う事ですね」


「せめてのことだけど、殺される運命が決まっている産業動物を買い取ってそちらに送るわ」


「そうですね、その方が少しは罪の意識が下がりますね」


「ええ、でもそうしないと何時一朗君が日本に帰ってこれるか分からないから、何があってもやり遂げなければならないわ」


「ありがとうございます、それで話は戻りますが、Y組の鉄砲玉が来なくなるとしたら、T国やK国の特殊部隊が乗り込んできたりしませんか?」


「可能性は有るけど、確率的には限りなく低いわね、訓練された特殊部隊を無駄死にさせる事は大きな損失よ。壊滅した特殊部隊を再建するには、膨大な時間と莫大な費用が必要になるわ」


「そうなると、特殊部隊を常時待機させておいて、毎日動物を送り込んで突入出来る日を探し続けると言う事ですか?」


「ええその通りよ、彼らは本気だから、ドローン出発点の近くに領事館設立申請を日本に出しているわ」


「日本政府はそれを認めるのですか?!」


「表立って何か起こさない限り拒否することは出来ないようよ」


「参ったな、実験動物がこちらに生きてたどり着いた時が、異世界と地球の開戦日かよ!」

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