第7話軍資金

 姉ちゃんの指示を受けて、俺は大量の必要物資をドローン配達指定で注文した。例えこれが狂信者の行いであっても、狂信者であるがゆえに胡椒を渡すことで解放してもらえるかもしれない。彼らの基準では、胡椒と金は同じ価値で、とても貴重なものだと信じ込んでいる。身分制度や人質の価値も狂信しているのなら、逃亡しないと宣誓すればかなり自由に動くことも出来る。


 問題は本当に異世界に転移していた場合、電波は通じても物質が行き来できない可能性がある事だが、これは試してみるしかない。そして転移が魔法の産物なら、効果期間があるかもしれないのだ。今こうして電波は通じているが、これが何時まで通じるが分からない。


 だからこそ姉さんは、中世ヨーロッパで役立ちそうな情報を、今のうちにダウロードするように指示したのだ。もちろん胡椒を初めとする、換金価値のある商品も教えてくれた。


 そして1番重要だったのは、ドローン配達の輸送距離が10マイル(150km)、重量が5ポンド(約2・27kg)と言う事だ。出来るだけ日本に近い場所にいないと、異世界と日本の距離間隔が魔力で歪められている可能性がある。


 姉ちゃんが日本の価値では安くて、狂信者が高価と信じている物を聞きだしてくれたから、購入資金は心配なかった。家族の遺産と保険料は、幾つかの銀行に分けて定期にしてあるけれど、動画投稿者としての収入はネット銀行に預けてある。遺産の一部も、いざという時の為に幾つかのネット銀行の普通貯金口座に入れてある。


「ここでいいのだな」


「ああ大丈夫だ、ここが1番転移魔法が成功する確率が高い」


「成功か失敗かは何時分かるんだ?」


「2時間以内にはっきりする、1度成功したら、一朗は安全な場所に送り届けてもらう」


「分かっている、大切な人質だから丁重にもてなさせてもらう」


「さっき言っていた月相についてだが、今は安全なんだろうな?」


「今日は半月日だから、完全に安全とは言い難いが、これからどんどん魔物の活動が活発になる。里の中で転移魔法が発動できないのなら、ここで待てるのは3日が限界だ」


「新月が1番安全なんだな?」


「ああ、月が完全に隠れている間は、魔物は魔境から出る事ができない。半月日の今は奥山までしか出て来ないが、明日からは徐々に里山にまで下りてくる」


「だが満月日前後には、魔物だけでなく獣も凶暴になるのだな?」


「それは私が答えよう、一般には獣も月の影響で凶暴になると言われてる。だが魔獣が獣の領域に入る込むから、それに怯えて凶暴になると言う人もいる」


 ドローンを待つ間に、姉ちゃんと騎士家族はスマホやノートパソコンを通じて色々と話し合っていた。特に異世界の政治経済についてと、俺の待遇について話し合っていた。


「おい、あれは何だ?!」

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