【ふ】

 ふさわしい人になりたい

 だから背伸びをした

 それが大人の恋だと思った


 突然の不通に

 訳も分からぬまま

 年上のあなたを

 空恐ろしく感じた


 やがてあなたと同じ年齢になったとき

 いかに不実な人だったかと

 気づいた


 大人というふわふわとした夢を描いた

 小娘の憧れを

 本当は

 その小娘よりも子供だったあなたが

 踏みにじっていた


 それを理解出来たとき

 不覚にも泣いた

 正しい涙が出た


 幼かった自分の愛が

 とても人生で一番清らかだったのだと

 気付いたから


 あの頃の私には

 もう二度と戻れないのだと

 気付いてしまったから


 さようなら

 何も知らずに無垢な愛を捧げた

 あの頃の私


 さようなら。



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