第68話 夢物語⑤
赤い飛行船に映し出されるニュースの映像。聞きたくないのに、耳に無断で侵入してくる。
今日も雨が、降っていた。僕は、雨に打たれながら飛行船を見上げていた。
「はぁ……最悪」
地球はあと3日で無くなるらしい。
爆発するのかな?
だったら、一瞬で死ねるから恐くない。
僕の命もあと3日。短い人生だったけど、やり残したことはない。と言うより、やりたいことを最後まで見つけることが出来なかった。
僕って、何だったんだろ。
家に帰ると相棒のロボットが、何かを作っていた。
「それは、何?」
「タイムマシンだよ。過去や未来に行く機械」
「ふ~ん。よくそんな機械が、作れるね。君は、やっぱりスゴい」
「マモル君は、過去と未来。どっちに行きたい?」
「未来は、残酷で暗いから。過去に行きたい」
「過去に行って、何をするの?」
「お母さんに会って……話がしたい」
「分かった。完成したら、マモル君を過去に連れていってあげるね」
「ありがとう」
でも本当はーーーー
過去に行くより、君との『今』を大事にしたい。だからさ、だから……。
「トランプやらない? タイムマシン作りは、また後でさ」
「うん。分かった。……やっぱり、マモル君はマモル君だね。だから僕は、君が大好きなんだよ」
「?」
小さなテーブルの上で、僕とロボットは、トランプゲームをして遊んだ。時間を忘れて。
…………………。
……………。
…………。
「君さぁ、悲しいぐらいゲーム弱いね。タイムマシン作れるぐらい頭が良いのに。なんでかな~。これじゃあ、勝負にならないよ」
「次! 次! 次! じゃあ、次、もし僕が勝ったらーー」
あれ?
あの時、君は何て言ったんだっけ。
どうしても思い出せない。
大事なことだったはずなのに。
3日は、あっという間に過ぎた。今日は、記念すべき地球最後の日。世界中で今、暴動や戦争が起きている。僕のような下の住人が、何とか助かろうと上を目指して登り始めた。
今さら、ジタバタしても仕方ないのに……。
僕だって、死ぬのは恐いよ?
でも今は、一人じゃないから大丈夫。
「マモル君。何かしたいことある?」
「う~ん。君と一緒に旅をしたい…かな」
「分かった。じゃあ、一緒に行こう」
「うん!」
ガタガタガタガタ。
地球の悲しい叫びが聞こえる。『悲しい』と思えたのは、これが初めて。
僕は相棒のロボットと手を繋いで、外に出た。雨が止み、久しぶりに太陽を見ることが出来た。焦げ臭い風が、僕の前をピューピュー通り過ぎていく。人の焼けた臭いが混じっている。
それでも気分は良かった。
「恐い?」
「恐くない。さぁ、行こう! 」
友達と手を繋いで歩き出す。
今も僕は、世界を旅している。
【 母さん。僕ね、大事な友達ができたんだよ 】
【 そう、良かったわね。今度、ママにも紹介してね 】
うん。その友達、実はねーーーーー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます