カラフル③

「ごめんなさい」


僕は、土下座をして相手に謝った。


両腕と右足を失い、左目は半熟卵。もうすぐ死ぬであろう神の使い。


「ア…ナ………た」




「ごめんなさい」


手加減出来なくて…………。本当にごめんなさい。




頭と体がセパレートしたこの女は、たぶん天使なんだと思う。神様の命令で僕を殺しに来たみたいだし。


でも今更、それぐらいでは驚かない。



未知の敵が現れても、戦えば済む話だし。今の僕には、人間を超越した力がある。何の問題もない。




でも今の殺しは、何か違う。




天使との戦いで、満足するどころか若干のストレスを感じていた。自分に恐怖しない者を殺しても意味がない。




僕は、歩き出す。暇潰しの殺しを求めて。




【 今すぐ、誰かを殺したい 】




細い路地で客引きをしていた女をとりあえず、二人消した。死ぬ直前、二人ともなかなか良い表情をしていて、それなりの満足感を得ることが出来た。だから、二人が働いているピンク色のお店に行き、次に殺す女を品定めしようと考えた。


古い雑居ビルの三階と四階が店舗兼事務所になっているようだ。躊躇なくドアを蹴破り、中に入った。すると屈強な男二人が、僕を見るなり襲いかかってきた。



…………………。

……………。


男達の体をバラバラにした僕は、安い香りが充満する部屋で、女を一人一人品定めする。みんな、僕の顔を見て震えている。床に黄色い水溜まりを作る女もいた。




「……………うんうん。いいね」




とりあえず、全員合格。


ガタガタ


「?」


奥の物置から音がした。中を確認すると手足を縛られた少女が、横たわっていた。


「……………」


誰かに拉致されてきたのだろう。それでも少女の目からは、僕に対する恐怖を一切感じなかった。

どうやら、この少女は盲目らしい。音のする方に顔を向けているが、僕のすぐ隣の観葉植物を見ていた。


「もう大丈夫だよ。すぐ警察が来るからね。しばらく待ってて」



「…………」




舌も抜かれたのだろうか。喋る気配がない。生きた人形のようだ。


僕を恐がらない人間には、興味がない。



「さようなら」



「…………」


あっ。


少女の背中に羽が見えた気がした。改めて良く見ると、そんなものは無かったけど………。




立ち去ろうとした僕に少女の言葉が突き刺さる。



「殺して…………お願い」


なんだ、話せるのか。




「君は、殺せない。もう死んでいるから」




僕は、この少女を解放した。


生きて、殺す価値が出るまで待とうと思った。


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