毎晩、夢に出てくるお婆さん
最近、寝るのが恐くなった。知らない誰かに見られているような気持ちの悪さ。寝たら寝たで、妙な悪夢を見て数時間ほどで目が覚めてしまう。
スマホを手に取り、幼馴染にLINEをした。
『もう寝た?』
『今、髪乾かしてる。もうすぐ寝るとこ』
異常に返信が速い。
『…………寝るのが恐い』
『ホラー小説書いてるくせに恐がりだよね~。変なの。じゃあ、一緒に添い寝してあげよっか?』
たぶん、私が頼めば彼女は本当に今からでも家に来てくれて、私と一緒に寝てくれるだろう。とっても優しいから……。
『彼氏作って、男と寝る』
『いいね~。それ。私も人肌恋しいなぁ。あっ! 忘れないうちに言うけど、枕の下にある包丁は危ないから片付けた方がいいよ。護身用なのか知らんけど』
はぁ? 何言って……。
枕を静かに捲ると、赤黒い刃がチラッと見えた。
「っ!?」
生唾を飲み込む。ドキドキが止まらない。痰が絡んだように息が苦しい。
私を苦しめるアノ頭痛もしてきた。
『やっぱり、添い寝して!』
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
毎晩、夢に出てくるお婆さん。
包丁を持ち、笑いながら僕を刺すお婆さん。
だけどね、恐くないよ。だって、これが夢だって分かっているから。
夢だから、何されても大丈夫。
殺されても大丈夫。
何日目かなぁ。
夢の中で。僕は、殺される前にお婆さんと色々お話したんだ。
学校やゲームや、テレビの話。
お婆さんは、静かに僕の話を聞いてくれたよ。でも、やっぱり最後は刺されて、殺されちゃったけどね。
そんなことをしていると、いつからかなぁ。お婆さんは、僕を刺さなくなったんだ。包丁も持っていない。笑いながら、僕の話を聞いてくれた。毎晩。
夢の中だけど、僕は友達が出来たみたいで嬉しかった。学校じゃあ、毎日イジメられてたし、家でも親は喧嘩ばかり。僕の話を聞いてくれる人なんて誰もいない。
だからね、最後の夜。
お婆さんとの別れは死ぬほど辛かった。最後は、夢の中で僕は泣いていた。
「どうして、オマエハ、私を恐れない? 」
「だって、僕たちは友達でしょ? 恐いわけない。だから、行かないで。僕を一人にしないで!」
お婆さんは、驚いた顔をした後、大声で笑いながら僕の前から消えた。
朝起きると、僕の枕の下にお婆さんが僕を殺すのに使っていた真っ赤な包丁が置いてあった。
僕は、その包丁を握り、声を出さないで泣いた。
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