第87話 ケルベロス会議

「はい…会議の時間でーす!皆さんしゃっきりしましょー!牡丹に八咫烏くんは年中イチャイチャしない!」


「総帥…しゃっきりしましょうと言いつつスウェットで美術の課題の絵を採点してるあんたが言うか?」

僕は突っ込んだ。大体何でこんなボロボロのスウェット着てんだ?


「紅…お前な、ちゃんと洗濯しろっていつも言ってんだろが!それ何日着てんだよ!」

と翡翠さんが突っ込んだ。


イエロー…雷鳥さんがパソコンに文字を売って機械音声が流れた。


「1週間以上だな…洗え!腐ったイケメン!」


「はいはい…お母さんまたよろしくね」

と翡翠さんにお母さんというと


「誰がお母さんじゃ!このダメ総帥が!Eくんを見習わんかい!」


「僕は時奈さんにパンツ以外は洗ってもらってるしな」


「ホホホ…E様もあまり家事できませんからなぁ」


「うるさいよ!紫水!」


「ところで…さっさと会議とやらを始めろ!俺の右手が暴れ出す前にな!」

と蒼い稲妻…蒼龍がどこも怪我してないのに包帯と眼帯を片方だけ着けている。


「で、総帥?話は?」

ようやく採点の手を止めて紅は話始めた。


「新しい正義の組織ができたみたいだね…」

とボソリと言う。

その情報は鳴島から聞いていた。


「はーいはい!ネットでも話題になってるよねっ!」

牡丹が手を挙げてスマホ画面を見せる。

そこには


【新正義の組織設立か!?】

の見出しと共に五人の仮面を着けた少女達がいた。


さらにケルベロスに対しての批判や嘘を書いて悪はやはり悪だから騙されないように!とか好き勝手書いているのだ。


「鈴金角次郎とかいう奴が裏で動いてるみたいだな。奴の素性を洗うと暴力団とも繋がりがあったり海外ではマフィアとも薬の取引をしてる危ない奴らしいし。この少女達も薬欲しさに活動してる可能性は高いね。さらにこいつの部下が怪人を生み出す薬を作っているみたいだが証拠を抑えられていない」


「くだらん…また歴史を繰り返すと言うのか、早々に潰すべきだ!自分達が正義だと言っている奴ほど残酷なことをしてのける。かつての操られていた俺たちのようにな」

蒼龍が額を抑えながら呟く。


「鈴金氏は叔父さんとも仲が良かった。資金の援助もあったろう…叔父に何かあった場合には自分が代わりにという思惑はあったろうね…。それに怪人を生み出す薬の開発者の正体さえ判れば…」

と僕が言うと


「Eくん、山根博士は何も知らないのか?あの人は一応セントユニバースで光化学兵器の開発者だし吉くん人形だって正確に作れるくらいの腕前だし」

と翡翠さんが言う。


「山根博士は何も知らないみたいだよ。開発チームが別れていたし、それぞれのラボは別の場所に有り、会ったこともないそうだ。嘘をついているかゴリラに脅しを頼んだけど知らないらしい」


「お互いいつ自分の技術が盗まれるか知れないから最新の注意を払っていたようだ…」

紅が補足した。


「ねぇねぇ、その新正義の組織の表の活動は何してるの?」

八咫烏が純真に聞く。


「慈善活動だ。老人ホームや障害者支援を始め、災害時の物資支援なんかも。でも裏では延命したい人をこっそり集めて怪人にしたりしてるんだろうね。家族には死んだと催眠や暗示をかければ済む。お葬式も何かの人形でも詰めて焼けばお終いだろう」

と機械音声の雷鳥さんがパソコンを打つ。

続けて


「自殺志願者とか借金苦で苦しんでる奴もそうだ。裏サイトで集めればいくらでも吊れる」


「下衆が!」

蒼龍が顔を歪ませる。


「牡丹達が今までの怪人にされた人を戻してる一方でまた新しい被害者出そうとしてるなんて許せない!!」


「E様、紅様それと悪い知らせですが、辰巳真理亜の母親が殺されました。そして服役中の西園寺綺羅里と辰巳真理亜が逃亡したとの情報です。まだ世間には知られていないことです」

と紫水が難しい顔をした。


「「何だとっ!?」」

僕と紅さんが同時に反応した。


「二人の行方は?」


「不明でございます…逃亡中か、鈴金に捕まったか…」


「Eくん…君の彼女にもそれは伝えておいた方が良くないか?報復に来られでもしたら厄介だろう」

紅が言う。当たり前だ。

そして全力で守る!


「後ね、あたしの学校でちょっと変なこと起きたよ…ね八咫烏」


「うん…喜多川くんって言う地味というか失礼だけどあまり顔の良くないまぁ典型的ないじめられっ子がいるんだけどその子がある日引きこもって登校しなくなった。でも10日後…綺麗な顔して登校してきた」


「整形したんだって!喜多川くんの家はそんな裕福じゃないのに…おかしいよね?それにね?いじめっ子に問い詰められてその子達をやっつけちゃったの!」


「漫画のヒーローみたいに」

八咫烏がそう言った。


雷鳥さんがパソコンで


「それについてはこちらも調べた。その喜多川ってやつだけじゃなく、他にもそういうブサ男がある日イケメンに変貌し強くなり自信をつけるというケースが多発している」


「何か関係ありそうだね…牡丹に八咫烏はその喜多川くんを監視してほしい」


「御意ーー!!」

「ぎょいぎょい!!」

と楽しそうに二人は言う。


「遊びじゃないんだぞ!お前ら!イチャイチャして見逃すなよ!」


「うるさいなぁ用務員のくせに」


「俺は翡翠だ!用務員じゃねぇっつの!」


「そうだ、用務員さん、後で俺の部屋のトイレ掃除してね」


「こんのダメ総帥!また壊したのか!?だから俺は用務員でもお母さんでもないっ!!」

と翡翠が叫ぶ。


「それにこの少女達も少なからず俺たちケルベロスに接触してくるかもしれない。皆…まだこの新正義の組織とやらは明らかにはなってないが身の周りには注意しておけよ!特に愛する人とかは弱点だ」

紅がそう言う。

紅の指摘は的確だな。すっごいだらしないスウェット着て真面目な顔をしているけど!


会議が終わり各自自室へと戻る。


「お疲れ様!」

と可愛い彼女の時奈さんが迎えてくれた。

僕は早速抱きついた。

あったかい!


「ひぐっ!」

とまた変な声で恥じらう彼女が可愛い。


僕は会議でのことを報告した。


「辰巳さんと西園寺さんが…逃げた…」

彼女は少し不安な顔になった。


「大丈夫だよ…僕がいるから…」

しかし時奈さんは以外なことを言った。


「違うよ…辰巳さんお母さん殺されたんでしょ?なら自分達も殺されると思って逃げたんじゃない?なら…見つけて先に保護した方がいいよ」

僕はその着眼点に目を丸くした。自分を殺しかけた女たちが怖がって逃げていて保護しろだなんて!!


「時奈さんは…聖母なの?」


「えっ?違うよ…でも…彼女達は何か事情を知ってる一番近い人物かもしれない」

その通りだ。やはり彼女は勘がいいのだ。


「解った…君の言う通りだね…でも時奈さんを恨んでないとは言い切れないし充分注意してね?」


「うん…吉城くんもあまり一人にならないでね?」

くっ!何という可愛さ!

思わず理性が吹っ飛びそうになるのを我慢して彼女の額におやすみのキスをする。

こんな可愛い彼女を守る為なら僕はいくらでも血を流したっていい!


それから辰巳と西園寺が逃げたことはケルベロスの総力で何とか隠して二人の捜索にもあたった。

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