第56話 逃げろ時奈!!

 ドアについてる覗き穴…ドアスコープから枝利香さんが覗き、


「外に銃持った白服共がいんよ…。高志!そっちはどうだ?」

 と反対側の部屋の窓を覗いた高志くんは


「いるよ…白服さん…どうすんの?」」


「どうするって…逃げるしかねぇだろ?」

 その時ドンドンとドアを叩かれる音がする。


「ちょっと…何なの?」

 詩織ちゃんが怯える。


「仕方ない…押入れ開けろ!」


「ええ?いいの?隣怒られない?」

 高志くんが青ざめた。


「るっせ!こっちは命かかってんだ!隣んちの壁開けて隣の家のバルコニーに出たら向かいの家の屋根伝って逃げんぞ!」


「えええ?枝利香さん!大丈夫なの?」


「むしろ雪姉が逃げれるかだよね?どうせ雪姉狙いなんでしょ?」

 そうだ、私しかいない。


「なら私一人で逃げたら…」


「「「無理だろ」」」

 姉弟揃ってそう言われた。ううう…すみません!運動音痴で!!


「んなわけで!やるぜ!」

 と枝利香さんは竹刀で押入れの壁をぶっ壊した!


「ぎゃっ!な、何だっ?」

 テレビを見ていた隣のおじさんがびっくりして押入れを開けて私たちを見る。


「ごめんなおっさん、後で直すからよ!」

 とどかどか人の部屋をまたがりバルコニーに続くカーテンを薄く開ける。


「いいか、すぐに行動だ!まず身体の小さい詩織と誠也!お前らならギリギリ死角で見えねえ!行けっ!」


「あたしも巻き込まれるんですかあ??」

 と詩織ちゃんが弱気になる。


「仕方ねぇだろ?ほら!行くぞ!」

 と手を引いて誠也くんが慎重に屋根に飛び移って伏せた。続いて詩織ちゃんも運動神経抜群でパッと華麗に飛び移った。

 えええ!凄い!さすが美少女!!


「よし!時奈!手伝うから上がれよ!」


「う、うん!」

 おじさんは何が起こったのかポカーンとしている。


 ええとここに足を引っ掛けて…ええ?


「雪姉何してんの!早く!」

 わかってるよぉ!

 なんとか屋根を掴み上半身乗り上げに成功し、お尻を枝利香さんが押す。

 その時隣の枝利香さん宅のドアが押し開けられた音がした!


「まずい!姉ちゃん!雪姉!行って!ほらおっさん!押入れ押さえて!タンス動かすよ!!」


「え?あ、ああ…」

 とおじさんは巻き込まれてタンスを押入れに動かした。


「高志!すまん!!」

 枝利香さんはひょいと飛び移った。だから何で君たちそんな動きが凄いの!!

 するとそこで外にいた白服に見つかる!


「いたぞ!何であんな所に!」


「とにかく捕まえろ!」

 と私達は必死で人んちの家の屋根移動を始めた。ひいいい!真夜中で暗くて落ちたら絶対骨折れる!

 しかし枝利香さんは私の手を引きぐんぐん進む。

 とうとう飛び移れないところまできて側の電柱を伝って下りる時にスカートを少し引っ掛けてしまった。

 ぎゃあ!!貴重な服が!!

 ってそんな場合じゃない!


「いたか?いや!いない!そっちを探すぞ!!」

 とバダバタ白服が駆けていく。

 私達はゴミ箱に隠れて様子を伺っていた。


「おい、これからどうすんだ?とりあえず詩織と誠也は詩織んちに帰れ!今ならもう白服はいねえ…」


「わかった…姉ちゃんたちは?」


「神社だ!」


「え?」


「人の多いとこに行くんだよ!初詣客に紛れて逃げんぞ!」

 枝利香さん凄い!その手がありましたか!


 そして私達は神社へと慎重に向かった。

 並ぶ屋台に人混みを掻き分けて進む。

 しかし白服も紛れ込んで私達を追跡している。

 しかしそこで肩を掴まれてしまった。


「きゃっ!」


「ちょっと、私よ何してるの?あなたたち?」

 と巫女装束の女の子が立っていた。


「委員長!?」


「田淵さん!!」


「な、何なんのよ?巫女衣装が変だっての?」


「んなこと言ってねえ!ちょっと神社の抜け道教えろ!追われてんだよ!」


「ええ?なんなのよ!?」

 ブツブツ言いながらも神主や関係者専用の通路に通され裏から何とか抜け出せた。


 するとそこに一台の青い車が止まった。ぎくりとして見ると車窓を開けて知らない清楚可憐な女の人が顔を出した。なんかどっかで見たことあるような…?


「乗って?あなたがかの運命の聖女さまなんでしょ?」


「「は?」」

 私と枝利香さんは固まりかけたが


「何者だてめえ!?」

 と枝利香さんは威嚇した。


「ふ…今夜は星が騒いでるわね?彼から言付かっているの…聖女を連れてこいってね」


「あ!思い出した!あなたっ!週刊誌で撮られてたブルーさんの彼女!!」


「そうなんか?どうりで痛いこと言ってる女だと思ったよ」


「いたぞーー!!」

 白服がこちらにやってくる。


「早く乗って!」

 私達は委員長と別れて車に乗り込んだ。


「しっかり捕まらないと次元の穴に吸い込まれるわよ!!」


「おい、やべえな、ブルーの女になるとまじ頭おかしくなるんだな」

 見た目清楚可憐な人なのに言ってることが痛い!!


「ふふ…疼くわ、右手が!いや、両手?目覚めが近いのかしら?私の中の青龍が!!」


「…………」

 ハンドルをギュルギュル切りながら走る彼女は痛い台詞を言いながらも白服の追いかけてくる車ともはやカーチェイスを始めた。白服はバンバンと銃で撃ってくる。


「伏せろ!時奈!」


「面白い!このあたしのブルースター号に傷をつけたこと後悔させてやるわ!!」

 と彼女は助手席の紙袋からなんと手榴弾を取り出した。


「嘘だろ?」


「あ、あれ?これどうやるんだっけ?ちょっと待って?」

 と彼女は電話をかけた。違反してるー!!電話しながら運転しちゃダメー!


「もしもし?コードネームは?」

 とスピーカーホンからブルーこと神野さんの声が聞こえてくる。


「こちらコードネームチェリーブロッサム!!蒼くーん!手榴弾の使い方どうするんだっけ?」


「はぁ…安全レバーを握りピンを抜いて投げろ、そしたら爆発する。それだけだ。隆の家でも練習しただろ?」

 との声に若竹さんの声が乱入した。


「おい!練習ってなんだよ!お前らっ!何やってんだ!おおい!」

 そこで電話を切り


「それじゃ、いっきまーす!と手榴弾をポイッと後ろの車に投げた。


 ボカーンと爆発して車を振り切る。


「やったぜ!!」

 な、なんてハードな新年なの?もはや膝がガクガクだよ…絶対逮捕されるよ…。


「はー!爽快!!あたしは桜庭真白よ!【ケルベロス】の参謀蒼い稲妻こと蒼くんの彼女でーす!よろしくね!運命の聖女!」

 これがなければ普通に可愛らしい人なんだろうけど…毒されとる!痛い何かに毒されとる!!


 車は橋に進んだがその時バラバラと上からヘリの音がして前方の道路は封鎖され、後ろからも警官隊が追いついて車は完全に止められた。


「くっ…ごめんなさい…ここまでだわ……

 と思ったら大間違いよ!あなたたち!しっかり捕まって!!」

 とギュルんと回転し車は橋を壊して海へと突っ込んだ!


「「ぎゃあああああ!!!」」

 私と枝利香さんは抱き合い叫んだが

 車は海に沈まず飛んでいる。


「へ??」


「ごめんなさあい、これ…ブルースター号は飛ぶの!そう、夜空を駆けるペガサスのようにっ!!」


 見るといつの間にか両翼が付き、エンジンが火を吹いていた。


「ま、正義の組織の科学力?を蒼ちゃんがちょっと盗んで自分の車にコツコツ改造してたらしいんだけどね?うふふっ、私が使うことになるとはね?」


「ちなみにあんた操縦とかできんのかよ?」

 青ざめながら枝利香さんが聞くと


「ゲーセンで…パイロットの勉強したから意外と?大丈夫かな?」

 と首を傾げた。


 ぐらりと車体が傾いて


「あれ?」


「おい!そりゃ勉強じゃなくて遊びだっ!!」


「はーい!皆!息吸ってーーー!!」

 と叫び車はドボーーンと海に落ちてしまう。

 空いている窓から何とか抜けたけど私は泳ぎが下手である!しかもダサメガネは水中に沈んで行ったのかよく見えない。


 必死で枝利香さんに抱えられ浮かび上がった私達の周りを今度は白い船が周りを囲んでいた。


「逃げろ…時奈…」


「無理だよね…」

 そして私達は捕まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る