第23話 これはボディチェックですよね

 ヘリの中で鳴島さんは舞川さんのボディチェックをしていた。


「あん!鳴キュン♡」

 と変な声で言うが完全無視して


「こちらは大丈夫ですよ坊っちゃま」


「そう…時奈さん…おいで」


「え?おいでってそんな怪我してんのに!何言ってるの?」


「トッキー?ボディチェックだよぉ!さっきレッドが私達に判らないように追跡器とか仕掛けてるかもしれないし?」


「ええええっ?でもっ近づかなかったよ?」


「レッドだよ?あいつ瞬間高速移動できっから」

 と舞川さんが言う。まじかっ!


 チラリと栗生院くんは鳴島さんに目を向けると


「……とりあえず舞川様、こちらで紅茶や救急箱の用意を手伝っていただけますか?あ、最新の音楽をダウンロードしておきました。ヘッドホンで聞いてみましょうか」


「わあい!鳴キュンとお揃いのヘッドホンだね!」


「量産型でございます」

 と私達と距離をとって後ろの衝立らしきものの奥に引っ込んだ。

 何故ヘリに衝立があるんだ?ということはさておきこれからボディチェックされなければならないのか?

 ええ?ちょっと待って!いつも抱きつかれているけども!変なとこまで触られるの?

 いやその前にそんな所にレッドが追跡器をつけんの?


 …いやあいつならやるかも…。


 心なしか栗生院くんも少しだけ怒ってる気もするけど緊張してるようにも見えるし。


「あのっ!自分で探せる所は自分でやるよ!」

 と赤くなり、とりあえずベタベタない胸やらを触ってみるが何もない。

 良かった!セーフだわ!


「実はあのバック転した時にね、何か投げてきたの見えてね、咄嗟に避けちゃったんだ。たぶんあれが追跡器。踏んで壊しといたけど、帰り際にあいつ投げキッスしてたよね?あの時かなって」


「え…」

 あの投げキッスで高速で移動して追跡器まで付けとったんかい!

 レッド…恐ろしいわ!そしてそれが見えてた栗生院くんも動体視力どんだけ凄いの?


「とりあえずちょっと触るからじっとして」

 と引き寄せられて心臓がばくばく言う。

 何度も抱きしめられてるというのに一向に慣れないのは何故だろう。


 抱きしめられて制服を調べられたりしている。


「背中は大丈夫かな…」

 と耳元でイケボイスが流れて鼓膜が破裂するかもという危険状態だが我慢して踏ん張る。


「はあ…時奈さんの匂いで酔いそう…」


「ふぐっ!!」

 おい何匂い嗅いでんの!やめて!変な匂いしたらどうすんの!!

 ていうかボディチェックでしょうが!麻薬犬じゃないからね!匂い関係ないからね!!


 そういう栗生院くんも少し病院の匂いがするからよっぽど急いで駆けつけたんだな。

 ヘリだし。流石にヘリから降りて来られると王子様かよっ!!ってくらい輝いてたけど!


 でも私のせいでまた傷が…。

 するりと髪留めが外されて髪の中を調べられる。

 ひっひいいい!イケメンの指が髪の毛の中にああああ、自我が持たん!

 私も舞川さんみたいになったらどうしよ!嫌だ!あれにはなりたくない!


 で髪にキスしてこないで!普通にイチャイチャしてるんですけど!恥ずかしいんですけど!

 あんた、腹から血出てるんだからキスしてる場合じゃないからね!!

 もうどんな状況なの?


 ぐるぐると混乱しているとカツーンとなんか落ちた。


 え?


 すごく小さい虫みたいな金属の塊が落ちている。ちょっとだけ緑に点滅している。


「これだ…」

 と栗生院くんは拳でグシャリと潰した。

 点滅が消えぶっ壊れた。


「って!手が!破片でまた血が!!」


「大丈夫、他にもないかもう少し調べよう」

 とまた触りだした。ひっ…ひいいいい!!

 助けて!誰か!レッドのセクハラより恐ろしい!

 いや栗生院くんのはセクハラじゃないけどおおおお!


 結局病院に着くまでみっちり触られ続けて何も出てこんかったわ!

 私が恥ずか死んだだけであった。セクハラはされてないけど。

 恥ずかしい部分だけは避けて腕とか足もめっちゃ触られた。

 いや断じてセクハラじゃない!好きな人に触られるのはセクハラじゃない!


「しかしこんな小さな機械を高速で取り付けるなんてやっぱりレッドは危険だなぁ」

 と傷口は何とか無事だった栗生院くんが唸った。

 舞川さんも


「あいつは油断ならねぇよ、勘良すぎだ。栗生院の弱点もバレバレだし…なぁトッキー」


「え?何で私が弱点?栗生院くんの正体がバレても戦闘員Eの彼女なんか正義の組織から見たら物凄い下っ端なのに!!捨て置かれる存在でしかないのに?しかもこんなクソダサな…私なんか」


「舞川さん?あまり彼女を、不安にさせないで?」

 とちょっと怒る栗生院くん。


「すいまっせん」

 と謝る舞川さん。


「レッドが僕の正体に気付いたらか…これ以上時奈さんにちょっかい出すならやっぱり彼との決着は避けられない」


「正義の組織の科学力はすげえよな…開発部とか狙って叩ければいいんじゃね?」


「それができれば悪の組織も苦労してないんじゃないの?やっぱり僕がゴールドとして潜入して開発部を爆破してくるしかないのか?」


「そりゃ犬死だろ?正体バレる上に拘束されて時奈にはもう会えないぞ?愚策だわ」


「ぐうっ…」


「とりあえず怪我を治そうよ!レッドさんも怪我を治せって言ってたよね?もうほんとに安静にしてよ?」

 と涙ぐむと


「んじゃあたしは先帰るわ!夕飯作らねぇと!」

 と病室を出て行く舞川さん。気を効かせてくれたんだな。


「ごめんね…ちゃんと怪我治すけど…やっぱり君が危険な目に遭いそうならすぐに駆けつけるよ」


「ううっ…栗生院くんのばかぁ…」

 そんなイケメンなことは言わないでいいから怪我早く治してくれえええ!

 と私は泣き止むまで彼の胸で泣いてしまった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る