幽霊喫茶探偵事務所

月🌙

-序-

 人口が今も尚増え続ける街――東京


 その中でも若者の街と評される場所がある。それが渋谷だ。

 色々な学生や社会人、若い主婦などがスクランブル交差点を歩いている。周りには自然が無く見えるのは建物ばかり。

 それはまるで建物で出来た山のようだった。

 そして、数々と建っている建物の中の一つに、地下に続く小汚いビルがある。ビルと言っても四階までしかない本当に小さな鉄筋ビルだ。

 きっと多くの人がこのビルには近づかないし、もとより気づかないだろう。それぐらい存在感が薄い建物だった。


 その小さなビルの入り口には『幽霊喫茶探偵事務所』という文字と共に、木でできた昭和レトロ風な看板がポツンと立っていた。

 たまたまこの看板に気づいた者は、妙な名前で訳がわからないお店だと疑問に思うだろう。


 喫茶店なのか?

 探偵事務所なのか?

 何故『幽霊』という文字が付くんだ?


 今は面白い喫茶店も居酒屋も存在する。ドラキュラ風だったり監獄をイメージされた居酒屋だったり、シンデレラをイメージされたカフェや不思議の国のアリスのカフェだったり。

「恐らく、このお店もその類だろう」と、看板に気づいた者は思い、大抵はお店に入ること無くスルーされる。


 行き交う人々は知らない。気づかない。

 このお店が幽霊も飲食可能な摩訶不思議な喫茶店でもあり、探偵事務所でもあるということを。


 このお店に入る〝お客様〟は二種類存在する。それは、普通の〝人間〟と、死んでもなお何らかの理由でこの世をさ迷う〝幽霊〟である。


 このお店の副店主オーナーは、そんな人達に心のゆとりを与え少しでも後悔なく過ごして頂くために、今日も訪れる〝お客様〟に煎りたての珈琲をおもてなしするのだった。

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