最終話 心を尽くして

それからは皐月も私も大変でした。

もちろん皐月の方が何百倍も苦しいのですが、私の方も寝るたびに皐月が怨霊に殺される様子を見るので全く体が休まらず、睡眠による疲労の回復などができないまま日々が過ぎていきました。


皐月がシズ婆さんのお役目を夢で見ているときは数日に一度という頻度でしたが、私と皐月のお役目コンビは毎日必ず怨霊に向き合っていました。

皐月の体は眠り続けたまま病院のサポートにより栄養が保たれているので大した変化はありませんでしたが、私の方はみるみる痩せていき、半年たった頃には自分でもオバケかと思うほど酷い顔になっていました。

目の周りにクマができ、頬は痩せこけ、体重は20キロ以上落ちてガリガリになり、友人と街で会った時にはドン引きされた後に心配されました。


それでも希望は見えていました。


猛烈な暴力に晒される皐月を見て狼狽するばかりだった初期と違い、ある程度冷静に皐月が殺される様子を見られるようになったお陰で、怨霊の様子を観察することができるようになりました。

皐月が殺されるのに慣れたとは、自分はなんて冷たいのだと思いましたが、それでも目の前で起きる事態は止まることなく続くので、嫌が応にも順応していくしかなかったのです。


それは皐月も同じでした。


怯えて震えながら怨霊に苛まれていた皐月は、いつからか正座して怨霊を待つようになりました。

そして怨霊が現れると手をつき頭を下げて言うのです。


「お怒りはごもっともです。どうか…どうかお許しください」


怨霊は皐月の謝罪など意にも介さず皐月を嬲るのですが、それでも皐月は怨霊に詫び続けました。

痛みに叫びながら、恐怖に震えながら、それでも怨霊の怒りを鎮めるために許しを請い、皐月は怨霊の暴力に耐えていました。

私もそんな皐月を見ながら必死に怨霊に許しを請うていました。

皐月が殺された後も、その怨霊に対して謝罪を繰り返しました。

怨霊の中の一部には私を一瞥してから消える怨霊もいました。

中にはあの老人のようにニタニタ笑いながら去っていく怨霊もいました。


そうして半年が過ぎた頃、皐月のことを殺しにくる怨霊の数が減っているのに気づいたのです。

顔も覚えられないほど多くの怨霊が毎日皐月を殺しにくるのですが、次第にあれ?またこの人?という風に見覚えのある顔が増えてきたのです。

そういった顔が増えれば増えるほど、その他の怨霊が減っているのだと気づいた私は、そのことを神主さんと早紀江さんに話しました。


「皐月……」


早紀江さんは皐月の手を取りさすりながら、


「頑張ってるね。えらいね。ありがとう。ありがとう」


と泣きました。


神主さんも涙を流して皐月の頭を撫で、それから私の肩に手を置きました。


「ケイタ。君も辛いお役目ありがとうね」


そう言って私の肩をさすって労いの言葉をかけてくれました。

もう少し、もう少しで終わりが見える。

そんな希望が徐々に見えてきていました。


その頃我が家で兄と会うと、兄は気まずそうに私を避けるようになりました。

本来なら兄が皐月の傍にいて支える立場だったはずなのに、その役目から逃げたと兄は思っているようでした。

朝に兄におはようと言っても、兄は「おう、おはよ」と私の顔を見ずに応えるだけです。

私としては皐月を想う気持ちは兄も私と同じだったはずですし、大法要の時に私が女の霊に捕まったのがそもそもの原因なので、兄が役目を放棄したとは考えていなかったのですが、兄の心中は複雑なようでした。

今度兄ともしっかり話をしようと思いました。


そんなこんなでさらに数ヶ月が過ぎ、季節は秋から冬に変わりつつありました。

その頃には皐月を殺しにくる怨霊は10人ほどに減っていました。

残りの100人以上は現れなくなっていました。

怨霊の中には照れ笑いを浮かべながら一度だけ皐月を蹴った後、恥ずかしそうに消えていった子供もいました。

町を襲う恐るべき怨霊の内面に様々な人格が寄り集まっている。

その人格によって怨念の強さが違うというのが救いの手がかりになりそうだと思いました。


その考えは間違っておらず、冬の入り口に差し掛かっ頃に、皐月の周囲に変化が起こりました。

以前現れて恥ずかしそうに消えていった子供の霊が、離れた場所にしゃがみ込んで皐月のことを見ているのです。

その霊は女の子で、ボロの着物を着た5才くらいの少女でした。

やがていつも皐月を殺しにくるあの老人の霊が現れて皐月を鎌で刺しました。


皐月は何も言わずに手をついて頭を下げています。

老人が鎌を突き立てるたびに苦悶の声を漏らす皐月を、その少女は黙って見ていました。

それからずっと少女は皐月のことを観察するようになりました。

私が夢の中で皐月のお役目に立ち会うたびにその少女もそこにいました。

そしてその少女のいる場所が徐々に皐月に近づいているのがわかりました。

残り数メートルというところまで来てそれ以上は近寄らなくなりました。


ある日、私は少女に訴えました。

どうか許してほしい。

お姉ちゃんが痛めつけられるのは辛いんだ。

僕が代わりに謝るから皆さんに伝えてほしい。

どんなことでもするから皐月を許してほしいと伝えてほしい。

少女は私の言葉が聞こえないようで皐月を見ていました。


その時私の後ろから手が回されました。

首に巻きついて来たのは忘れもしないあの手でした。

真っ白な肌にいくつもの傷がついた血まみれの腕。

頭のすぐ後ろに現れた気配に身が凍りました。

ゆっくりと首だけ振り返るとそこにあの女の顔がありました。


「おぉルゥォぉォォオぇエあァァアア……!」


耳元で大きく響くその声に全身の毛が逆立ちました。

身体中の血管から血がなくなったかのような感覚。

女の霊が私を捉えて唸っていました。

余計なことはするな。

そう言われている気がしました。

その女は皐月の元にヨタヨタと歩いていき、手をついて頭を下げる皐月の頭を踏み砕きました。

ひと思いに皐月を殺した女は私に振り返り、何事かを唸って消えました。


「許してください!……許してください!……お願いします!……」


私は恐怖で震えながら叫び続けました。

ガチガチと歯が鳴ってうまく喋れませんでしたが、それでも必死に許しを請いました。

気がつくと私は足首に走る激痛で目を覚ましたところでした。

寝間着をめくって足首を見ると痣が濃くなっていました。

警告、かもしれないと思いました。


その夜、皐月を見つめる少女の傍に男の子が増えていました。

そしてさらに1人の大人が離れたところに立っているのが見えました。

大人の男性だと思いますが顔が見えません。

遠くで腕組みをして皐月のことを見ていました。

少女は相変わらずしゃがみ込んで皐月を見ています。


その日、皐月を殺しに来たのはまたあの女でした。

女は土下座する皐月の頭を掴んで顔を上げさせ、そのまま首を捩り折りました。

それからしばらくの間、あの女が現れる確率が高くなっていきました。

頻繁に現れるのはあの女と老人の2人。

皐月が殺されるのを見物する人影も日増しに増えていき、顔がよく見えない霞のような人影は数十になっていました。


ある時、霞のような人影の群れから念仏が聴こえてきました。

南無阿弥陀南無阿弥陀………という念仏を誰かが唱えています。

一体何のための念仏なのかわかりませんでしたが、私はそれもまた救いの兆しであるように感じました。

それを住職さんに伝えるために、神主さんに了解を得て住職さんに連絡を取ってもらい、皐月の病室に来てもらいました。

それまでも住職さんは何度か皐月の見舞いに来てくれていましたが、私と顔を合わせることはなかったので、この半年で見違えてしまった私を見て驚いていました。


「ケイタ君大丈夫か?お役目のことは篠宮さんから聞いとるが、このままでは君の方が持たんのと違うか」


私は大丈夫ですと答えて、最近の怨霊の変化を住職さんに説明しました。

念仏のことまで話し終えると住職さんはウーンと唸り綺麗に剃りあげた頭を撫でました。


「なんちゅう……なんちゅうことだ……皐月ちゃん」


そう言って皐月を見つめ深くため息をつきました。


「そしてケイタ君、君も大変なお勤めご苦労様。辛いだろうに、尊いお勤めを果たす君達に私は頭が下がります」


私の目を真っ直ぐに見てそう言ってくれました。

私は照れくさくて頭を軽く下げました。


「それにしてもなあ……とんでもない化け物かと思うとったが、その魂の中に憐れを催す者がおるとは。怨霊と化してなお皐月ちゃんのために御仏の救済を祈るか」


住職さんは神主さんに向き直って言いました。


「篠宮さん、そのぅ……差し支えなければ経を上げさせてもらえんだろうか」


住職さんは私服で来ていましたが懐から数珠を取り出しました。


「皐月ちゃんのために念仏を唱えてくれとるその魂のために私も経をあげてやりたいんだ」


神主さんが快く応じると住職さんは手を合わせて静かにお経を唱え始めました。

それは大法要の時のような激しい印象ではなく、静かに胸に響いてくるような、優しさを感じるお経でした。


その夜、あの女が皐月を殺しに来た時にも念仏が聴こえていました。

その声が昼間の住職さんと同じ温かさを感じさせるものであることに気がついて、私は胸が熱くなりました。

女の霊は少し戸惑うように人影の群れを見やり、そして苛立ちをあらわに荒々しく皐月の首を捩りました。

老人の霊と入れ替わり立ち替わり現れるその女の霊は、やがて皐月を殺すのをどこか淡々と行うようになっていきました。

逃げもせず抵抗もしないでただ耐える皐月をいたぶるのに飽きてきたように見えました。

猛烈に皐月をいたぶる老人と違い、現れては大して興味もないように皐月の首を捩り折って消えるのです。


ある時、しばらく皐月のことを見下ろしていたかと思うと、手をつきひれ伏す皐月の頭を掴んであげさせ、皐月と目を合わせました。

そして皐月の頭をひと撫でしたかと思うとそのまま皐月の首を捩りました。

それきり、女の霊は現れなくなりました。


あと1人。


最後まで皐月をいたぶるのを止めようとしない老人の霊は、自分1人になったことを認めないとでも言うように、これまで以上に皐月をいたぶりました。

それでも皐月は耐えて謝り続けていました。

私も同じように謝り続けました。

それでも皐月を殺して笑う老人から悪意が消えることはありませんでした。

皐月に加えられる暴力はいよいよ苛烈になっていき、皐月が絶命した後も亡骸を執拗に痛めつけ嬲るようになりました。


それが何日か続いたある時、いつものように老人が鎌を持って現れました。

皐月はひれ伏して謝罪の姿勢をとっています。

すると皐月と老人の間に割り込むように、いつも皐月を観察していた少女の霊が立ちました。

黙ったまま老人を見つめています。

老人は困惑しながらその場で鎌を振り上げました。


「ぬしゃ……っとぞ!………ごりょうなんも……ぶちくらして……!!」


老人が何事か喚いていますが言葉は聞き取れませんでした。

少女の隣で皐月を見ていた男の子の霊も少女の傍に立ちました。

そして周りで見ていた靄のような人影の群れの中から1人、また1人と大人の霊が歩み出て来て少女達の側に立ちました。

歩み出てきた霊の顔ははっきりと見えました。

その中にお婆さんの霊がいて、手を合わせて念仏を唱えていました。

あの人が……!

こみ上げる思いに全身が熱くなりました。


「もうよか」


誰かがそう言いました。

明瞭な声ではありませんでしたがはっきりと理解できました。


「もうよか」


「もうよか」


「もうよか」


「充分ったい」


「もうよか」


「許しちゃろ」


「儂らも悪うて」


「可哀想にのお」


次々にそんな声が上がりました。

声も靄の向こうから聞こえてくるような、不思議な感覚でした。

老人は気圧されたように後ずさり、鎌を振りながらわめき立てました。


「……しょっとんか!……ああ!?……」


老人は激しくがなりたてました。


「もうよか」


「もうよか」


「もうよか」


霞のような声も止まりません。


「じゃっだら……!……ぬしゃら……!!……ばいよんぞ!!」


老人は絶叫を残して消えました。

そして私は目を覚ましました。


お役目について初めて、皐月が殺される様を見ることなく目覚めた。

そのことが信じられない思いでした。

しかし徐々に実感とともに喜びがこみ上げてきました。

怨霊達は口々に「もういい」と言ってくれました。

皐月はついに許しを得たのです。

それが夢でないのは確信が持てました。


あと1人。


あの老人の霊は皐月を許してくれるだろうか。

遠からずそうなりそうな予感はありました。

なんせもうあの老人しか残っていないのだから。

もしかしたら今お役目をやめても、これ以上怪異は起きないのではないか。

そうも考えました。

あとは皐月がいつ目覚めるかに任せようと思いました。


そしてその夜、老人の霊が現れました。

老人の後ろに何人もの霊が付き従っています。

黒い霞のようなその集団に目を凝らすと、昔の服ではなく現代の洋服を着ている人達でした。

知った顔もあります。

あれは猟友会の人だ。

亡くなった氏子さんもいる。

校庭で動く死体となった◯◯先生も。

老人が連れてきたのは、一連の怪異で亡くなった数十人の住人達の霊でした。


老人の霊は皐月の前に住人の霊を並べてニタニタ笑っています。

その日は皐月を挟むようにして両隣に少女と男の子の霊が立っていました。

大人達の霊はまた少し離れたところから見守っていました。

現代の住人達の霊は恨めしそうな顔で皐月を睨んでいます。

怨霊に殺された彼らもまた怨霊となったかのようでした。


住人達の霊は何事かボソボソと呟きながら皐月の方へ歩いてきます。

皐月は正座したまま手をついて言いました。


「亡くなった皆さん、どうか安らかに……安らかにお眠りください……どうか……」


皐月の懇願に応えるように、住人の集団から小柄な人影が進み出ました。


「お婆ちゃん……」


皐月がその人影を見て声を漏らしました。

集団から抜け出してきたのはシズ婆さんの霊でした。

住人達の霊は立ち止まりました。

変わらぬ恨めしそうな顔で皐月を見ています。


皐月と住人達の間に立ったシズ婆さんの霊が、住人達に向かって静かにゆっくりと頭を下げました。

手を前に組んで腰を90度近くまで折る深々としたお辞儀でした。

住人達はたじろいだように身悶えました。


「お婆ちゃん……!」


皐月は口に手を当てて嗚咽を漏らしました

私の目からも涙が溢れてきました。

シズ婆さんは死んでも皐月を守ってくれている。

その愛に感謝の念が溢れました。


シズ婆さんは頭を下げたまま動きません。

住人達の霊は1人また1人と揺らめき消えていきました。

やがて全員が消えると、シズ婆さんの霊は頭を上げて皐月を振り返り、ニッコリと笑いながらウンウンと頷いて消えました。


「お婆ちゃん!お婆ちゃん!行かないで……!……お婆ちゃん……」


皐月が泣きじゃくる中で、ただ1人残された老人の霊が項垂れていました。

過去の被害者である怨霊達も、その怨霊に殺された現代の住人達も、みんな皐月を許しました。

老人1人が何をしても、もはや集合体としての怨念は維持できないと悟ったようでした。


老人は項垂れたまま鎌を握りしめ震えていました。

皐月を殺すだろうかと思い、私は老人をじっと見ていました。

やがて老人は力なく鎌を取り落としました。

そして皐月に対して、先ほどのシズ婆さんと同じように深々と頭を下げました。

その姿勢のまま老人の霊は消えました。


気がつくと皐月を見守っていた霊達も消えていました。

隣に立っていた少女の霊が皐月の頭を撫でてから消えました。

男の子も少女を追うように消えました。


「…………………」


静寂が辺りを包む中、皐月は呆然と座っていました。


そして、


「わあああああああ!!!!!」


声を上げて泣きました。


ものすごい泣きっぷりで、目から滝のように涙が溢れ落ちるのが見えるほどでした。

誰に憚ることもない大きな声で子供のように泣きじゃくる皐月を見ながら私も大声で泣きました。

ずっとずっと続いてきたお役目が終わった。

許されたのだと。

深い喜びと安堵、そして感謝の思いが爆発しました。

私達はただただ大声で泣きました。

どれほど泣いたか覚えていませんが、泣き疲れて皐月が眠りに落ちたところで私は目を覚ましました。


目を覚ました私は病院に走りました。

皐月が目を覚ましているかもしれませんでした。

病院に着いたのは早朝でしたが、病院の玄関が開いていたのでそのまま病棟に入って行きました。

病室の皐月はまだ眠ったままでした。

閉じられた瞳から涙が一筋流れて線を引いていました。

私はその寝顔を見てふうと息を吐き、椅子を引き寄せて皐月の傍らに座りました。

その時、病室に甘い香りが漂っているのに気がつきました。

私は目を閉じて神様に感謝を捧げ、皐月が眼を覚ますのを待ちました。


結局皐月が眼を覚ましたのは午後になってからのことでした。

朝に見舞いに来た早紀江さんに昨夜のことを伝えると早紀江さんも泣いて喜びました。

神主さんに連絡をして皆が病室で皐月を見守っていました。

昨夜のことをつぶさに説明すると神主さんも静かに涙を流していました。


「母さん……」


何よりもシズ婆さんが皐月を守ってくれていたことが嬉しかったようでした。

そして冬の日差しが傾き始める昼下がり、皐月が眼を覚ましました。


「お母さん……」


眠っている皐月が呟きました。

皆で皐月のそばに駆け寄り皐月の顔を覗き込みました。

閉じられている皐月の瞼がかすかに震え、そしてゆっくりと開かれました。


「皐月!」


早紀江さんが皐月に覆い被さるようにして名前を呼びました。


「お母さん……終わった……」


皐月はかすれた声でそう言いました。


「皐月……ああ……皐月……お帰り……皐月……」


早紀江さんは涙でしゃくりあげながら皐月のおでこや頬を撫でていました。


「皐月」


神主さんが皐月の傍に腰をかがめて顔を覗き込んで言いました。


「ありがとう。皐月。よく頑張ってくれたね」


「叔父さん……お婆ちゃんが……」


「ああ、わかってる。ケイタから聞いたよ。お婆ちゃんが守ってくれたんだね」


「ケイちゃん……」


皐月に名を呼ばれて私も皐月から見えるように近寄りました。

ふふ、と皐月はかすかに笑いました。


「ボロボロ……だねえ……」


変わり果てた私の様子に皐月は驚いたようでした。


「ずっと……見てくれてたね……」


「うん……」


不意に涙が溢れ、私は泣いてしまいました。


「ふふ……」


皐月はまた少し笑いました。


「ケイちゃん……ありがとう」


それから、皐月は数日のリハビリを経て退院しました。

身体中の筋肉が衰えていたので車椅子で退院した皐月は、それからじっくり一年かけて健康な体を取り戻していきました。

私も同様にオバケ状態から人間らしい容姿へと戻っていきました。


ここからは蛇足になるのでざっくりと書きますが、怨霊が消えた町は以前にも増して活気付いていき、兄は金森先輩と一緒に東京へ行きバンドで成功する夢を追い、私と皐月は結婚して5人の子供を授かりました。


昭和の終わりの頃この町を襲った怪異は、今ではお伽話のように語られるのみです。

大人達は子供を怖がらせるために言うのです。


「いい子にしないと首くくりのオバケがくるよ」と。

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