第54話

 正直驚きました!

 ルークが人間の女性と一緒に会いに来てくれました。

 先にルークの使いという女性が現れて、付き合っている人間の女性を紹介したいと言い出したのです。


 あまりのうれしさと驚きに、ルークへの険悪感と恐怖感が吹き飛びました。

 あんなにもルークに嫌悪感を抱いていたのに。

 あんなにもルークが怖かったのに。

 今直ぐ会いたいと思いました。

 会って祝ってあげたいと、心の底から思えたのです。


 でも、正直に言えば、ルークに会ってしまったら、険悪感と恐怖感が蘇ってしまうかもしれないと、恐れてもました。

 でも、うれし事に、険悪感も恐怖感も蘇る事はありませんでした。

 ただただうれしくて、ルークと女の子に幸せになってもらいたくて、身体中がよろこびに打ち震えました。


「ルーク。

 その子の名前は何と言うの?」


「ミモザて言うんだよ。

 かわいいでしょ。

 でもあんまり言葉が話せないんだ」


「そう。

 そうなの。

 でもそんな事はどうでもいいわ。

 ルークが側にいてもらいたいと思える子ができるなんて、お姉ちゃんすごくうれしいわ」


 ルークの人間への嫌悪感と恐怖感は根深いものがありました。

 幼い頃から私以外の家族から虐待され続けたのですから、当然と言えば当然です。

 特に母上は本気でルークを殺す気でした。

 しかも自分の手を汚すことなく、すべて父上と兄上にやらせて見ているという、陰険な極まりない人でした。


 だからこそ、ルークの人間女性嫌いは強烈でした。

 それがこうして女性をエスコートするなんて。

 あ、今頃気がつきましたが、ルークが女性をエスコートしています。

 あまりの事に全然気がつきませんでしたが、ルークがマナーを守っています。

 私に会う為に、ここまで努力してくれたのですね。

 私も努力しなければいけません。

 あ、その前に褒めてあげなければいけません。


「ルーク。

 よく女性をエスコートできていますよ。

 それだけできれば、どこに行っても恥ずかしくありませんよ。

 私も頑張って病気を治しますから、治ったらミモザも一緒に晩餐会や舞踏会に行きましょう」


「うん、分かったよ。

 お姉ちゃんが治ってくれるのなら、僕もダンスを覚えるよ。

 ミモザともダンスするよ。

 でもね、ダンスを覚えるのなら、やっぱりお姉ちゃんとダンスを踊りたいな」


「ごめんね、ルーク。

 まだルークと手を繋ぐ自信はないの。

 今はよろこび一杯で大丈夫だけど、あとでまた病気が出てしまうかもしれないわ。

 約束していて出来なかったら、それこそルークを哀しませてしまうでしょう。 

 だから、少しずつ練習してみよう。

 明日から毎日少しずつ会うようにして、最後に手を繋いでダンスが踊れるようにしよう」


「うん!

 約束だよ!」

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