第32話

「だったら、この子達を砦に行かせて税を集めてもらいましょう。

 そうしたら、ルークの嫌いな人間を召し抱えなくても大丈夫ですよ。

 あら、でも、この子達に計算ができるのかしら?

 どうなのルーク?」


「えぇぇぇぇ!?

 そんなの僕に聞かれても分からないよ」


「そうね。

 ルークは可哀想なこの子達を助けただけだものね。

 役に立つからとか、利用出来るから助けたわけではないのよね」


「そうだよ、お姉ちゃん。

 僕偉い?

 僕優しい?

 だったらナデナデして!」


「はい、はい。

 ルークは偉いね。

 ルークは優しいね。

 これからも虐められている子は助けてあげてね」


「うん、任せてよ、お姉ちゃん!

 これからも可哀想な子を助けるよ!」


 ルークに難し事を頼んではいけません。

 どうしても難しい事を頼む時には、時間をかけて、何段階にも分けて頼まなければなりません。

 そうすれば、ルークは必ずやってくれます。

 ルークに覚えてもらう必要がなくて、私がやった方が早い事は、私がやります。

 ルークにしかできない事は、時間をかけてやってもらいますが、そうでなければ私がやればいいのです。


 半人間達が計算ができるか確かめるのも、私がやればいい事です。

 実際確かめてみましたが、できませんでした。

 半分獣なので仕方がないのか?

 それとも教えてもらう事もなく、必要もなかったからできないだけで、時間をかけて教えればできるようになるのか?

 そんなことは分かりませんが、今は確かめている時間がありません。


「困りましたね。

 税を計算できる者が必要なのですが……

 ルークの子分の中にはいませんか?」


「いないと思う」


「城や砦の外でも、人間を召し抱えるのは嫌なのですよね?」


「嫌だけど……

 どうしても必要なの?

 お姉ちゃん」


 ルークが嫌がる事はしたくありません。

 何なら村長に委託すると言う形もありますが、それも召し抱える事との違いを、ルークが納得してくれるとは限りません。

 とにかく私とルークに人間が係わるのが嫌なのでしょう。

 時間をかけて説明したり、私が強くお願いすれば許してくれるでしょうが……


「ルークが使ってもいいと思う、計算ができるモノはいないかな?

 人間でも半人間でも魔物でもいいよ。

 誰でもいいのよ。

 ルークが嫌じゃなくて計算できるモノ」


「う~んとね、でんでん虫なら計算できると思う」


「でんでん虫?

 ルークが人間から変化させた謀叛人たちの事?」


「うん!

 あいつらなら計算できるし、僕の言う通りにするよ」


 ああ、可愛そうですが、仕方ありません。

 まあ、徴税係をしている間は、身体を食べられる苦痛からは解放されるでしょうから、彼らにもメリットがあると思いましょう。

 しかし、彼らが徴税係をするとなると、猟師や冒険者が恐れるでしょうね。

 今まで以上にルークの悪名が広まってしまいますね。

 でも仕方ありません。

 彼らに徴税を担当してもらいましょう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る