異世界転移 151話目




「ハァハァハァ……失礼しまた。」


「お、おいおい、いったい何があったんだよ?」


怒りに震えるキャロにケンがオズオズと声をかける。


「ケンさんとエルフリーデさんの言う通りに5枚の扉があり、全ての扉が閉まって鍵がかかってました。

扉がまた閉まっているのは想定の範囲内だったんですが、最後の部屋でセイネちゃんがこの部屋を一通り調べようと言って、丁寧にくまなく調べて最後に天井を見たら……本当にご苦労様でした。っと書いてあったんです。」


「おおぅ……」


あまりの事に言葉を失うケン。


「このダンジョン、無生物系の魔物が徘徊するダンジョンだと思ってたけど、実際はトラップ系みたいだね。」


「しかも精神攻撃ばかりしてきやがって、ダンマスの顔をが見てみたいわ!」


セイネの言葉にまだ暴れているアレナムがそう言って壁を殴る。


「何にしろ新しい道が出来たんだ、どちらに行くか決めて進もうぜ。」


ケンがそう言って新たに出来たと言うか、龍の踊り手達が壊して開けたマリルルナ達が進んだ道を指差す。


「じゃあ、選択肢が2つになったわけね、キャロ、うちらはどっちに行く?」


「ドライト様を追わない選択肢はありません、下に降ります。」


「まぁそう言うと思ったわ、と言うわけで私達は下に降りるわ。

そっちはどうするの?」


「そうだな……ケン、どうする?」


「右は罠だらけで嫌だし、下には銀色の悪魔が居るからな。」


フェリクスにケンがそう答えると、キャロ達の視線が険しくなる。


「じゃあ、左だな! 左に行こう!」


なのでアルヴァーが慌ててそう叫ぶと、ケンは顔をしかめて言う。


「左は左で厄災の女神がいるからなぁ……1度撤退して体制を立て直すってのはどうだ?」


「まだ入ったばかりだろうが!

何にしろ左に行こう、ある程度はマッピングもしてあるしな。」


「仕方ねぇ……行くか。」


こうして、ケン達はマリルルナ達を追い、龍の踊り手はドライト達を追うことになったのだった。




「そうでしたわ、聞きたいことがあったのです。」


キャロを先頭に、龍の踊り手が下に降りようとしたが、そのうちの1人で魔法使い風の少女、リティアが振り返りケンに向かう。


「私達は今日、急に召集されたのですが、なぜドライト様やサルファ様にマリルルナ様まで参加されているんですか?」


「へ? 聞いてないのか?」


ケンはそう言って周りを見回すと龍の踊り手だけでなく、フェリクスとアルヴァーまで知らないと言ってくる。


「あの日、ドライトにこのダンジョンは危険だから討伐しろって命令された時な、ドライトは幼児退行してしまったアンナを背負ってたんだよ。

それで討伐に行く行かないで俺とドライトが揉めてたら、急にアンナが覚醒してな。

『ならシルバークレセントムーンの出番なのよ! 悪いダンジョンにお仕置きするわ!』

って叫んでな……後は芋づる式にドライトにその嫁達も参加することに決まったんだよ。」


「ああ……そう言うことですのね、ギリギリまで私達に言わなかったのは、逃げられないためですわね。」


リティアはそう言って、剣士のレイナにアレナムとセイネを見る。

3人はそれを聞いても興味ないようでシリカ達が進んでいった右手の通路を見ている。


「そういや、マリルルナ様達はいつ誘ったんだ?」


「誘ったと言いますか、私達が今日来ようとしたらいつの間にかいましたの。 たぶん野生の感ですわね。」


「感って……」


「おぉーい、そろそろ行こうぜ。」


「リティアちゃん、私達も進みましょう。」


ケンが呆れていると、アルヴァーとキャロがそれぞれに声をかけてくる。

ケンはリティアと顔を見合わせると、1つうなづきそれぞれの仲間の元に走りより龍の踊り手はドライトを追って下に降り、ケン達は左手の通路に入っていくのだった。




「結構来たな、マリルルナ様達はもっと先行しているみたいだが。」


「ああ、それでミルカ、この先を進んでたら下に降りてたんだな?」


「ええそうっす。」


ケンは自分達の後ろに着いてきているカウノとミルカ達に声をかける、そして返事を聞くとケンはひざまずき腰の小さな魔法袋から小さな鉄の玉を幾つか取り出す。


「何ですかこれ?」


「コイツはただの鉄の玉ーーーペトラ嬢なんてここに!?」


そんなケンに質問をしてきたのは王都のセンターギルドを仕切る、ペトラだった。


「愚問ですね、ここはフェルデンロットやハロネンの領都に近いんですよ? なら冒険者が多くやってきて大きな利益を産み出す可能性が有ります。

冒険者ギルドが職員を派遣するのは当たり前じゃないですか。」


「いや、そりゃ派遣するが下っぱの仕事だろ!」


「まぁそうなんですが、暇だったもので……何にしろその鉄の玉は何に使うんですか? 指弾ですか?」


「ぶっちゃけたな、それに指弾じゃないぜ、使えんことはないがな。 見てろよ?」


ケンはそう言うと、手にした鉄の玉を床に落とす。

落とされた数個の玉はそのままーーー全てが同じ方向に転がっていく。


「やっぱりな、微妙に傾斜してやがる。

カウノとミルカはそれに気がつかないで歩き回されて、5階まで降りてた……そういやお前らは、どうして5階にまで降りてたって気がついたんだ?」


「途中途中に、何階か看板があったんすよ。」


「このマヌケ野郎! すぐに撤退だ、このルートもヤバいぞ!」


「……待てケン、ミルカの大マヌケは今はほっとくとしてありゃなんだ?」


ケンは重大な情報を言っていなかったミルカを怒鳴ると、撤退しようと言う。

たがそんなケンに同調しつつも制したのはアルヴァーだった、そしてケンはそんなアルヴァーが指差す方、通路の奥を見ると、ヨロヨロと5人の人影がこちらにやって来るのを見る。


「ありゃなんだって、敵だろうが、ったくよう!」


そうケンは叫ぶと、槍を5体の敵に繰り出すのだった。



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