異世界転移 88話目
「いきなり殴るなんて酷いですよ!」
「お前はなんで像のフリなんかしてるんだよ!」
「いや、ちょっとですね?」
「お前……なんか隠してるだろ?
これから俺達は、フェルデンロットの復興に力を入れなきゃいけないんだから、吐け。」
「……実はこの間のお肉なんですが、ちょろまかしてたのがマリルルナさん達にバレたんですよ?」
「ふむふむ……ん?」
「意地汚いあの人達は、ちょろまかした分を寄越せ返せって、うるさくって……」
「お、お前まさか、女神様と揉めてるのか!?」
「そうですが何か?」
「それで、女神様の目を誤魔化すためにフェルデンロットで像のフリをしていると!?」
「その通りです!」
「神々のくだらない争いに俺達を巻き込むな―――!」
ケンは至極全うな文句を言うのだった。
「いや別に公園を解放しても良いですよ?」
「ありがとうございます。
ドライト様の像の周りだけ残してあとは民のために使わせてもらいます。」
文句を言ったら揉めて掴み合いのケンカになりかけたケンとドライトだが、クリスが間に入ってケンをなだめている間にミラーナがドライトに公園の使用許可をもらうことに成功していた。
そしてよくよく話を聞くと、ドライトがケンの周りをウロウロしてるのはマリルルナ達から逃げるために力を落として、ケンの近くに居ればバレないからだった。
「クッソ迷惑だな、追い出そう。」
「ちょっと、止めなさいよ!」
「なんだよミラーナ、ドライトが居ると何が起こるか分からないんだから、さっさと追い出した方が良いだろ?」
「バカね、街道の整備にこんなに広い土地を整地してくれる。
しかもクリスの手料理を食べさせるだけでよ?
こんなにローリスクでハイリターンを返してくれる人は普通は居ないのよ? こんなの骨の髄まで利用しなくちゃ!」
ミラーナそう言ってケンを納得させようとする。
クリスに抱かれたドライトの目の前で!
結局ミラーナはクリスの命令でカリーナとシリヤに遠くに連れていかれた。
「なんにしろドライト、あんまり変なことをしているとミラーナの手料理をフルコースで味わってもらうことになるからな?」
「ケンさん、あなた私が黙っているからと言っていい気にならないでくださいね? これでも私は高位の龍です、マリルルナさんよりも格が高いんですよ?
そんな私を敬い、ひざまずいて毎日に祈りを捧げろとは言いません、週10回で良い「ドラしゃんいた~」ですから五体投地して………………」
「……ほっとくか。」
寝言を言ってきたドライトはクリスの妹のアンナに抱っこされて連れていかれる。
クリスの手料理という賄賂を堪能していた時にドライトはアンナに餌付けされたようで、よくクッキーなんかを貰っていたのを見た。
そして衝撃的だったのが、アンナがクッキーを餌にお手やお座り、チンチンなんかの芸を仕込まれていたのだ!
アンナはドライトの事をちょっと変わったペット程度の認識だったらしく、そしてドライトもドライトでアンナに「お手!」っと命令されて素直にしたがっていた。
まぁ、チンチンと言われたドライトが立ち上がり、股間を両手で隠した時は本気で蹴ってやったが。
「とりあえず、あれはアンナに任せよう。
触らぬ神に祟りなしって言うからな?」
「ねぇケン、ドライト様にフェルデンロットの復興を手伝ってもらうわけにはいかないの?」
「……ある人物に神々に頼るのは問題ないが、頼りすぎるのは絶対にやめた方が良いと言われていてな?
人間っていうのは成長するものだが簡単に堕落もするものだから、神々に頼りきればなにもしないしちょっとしたことでも神を頼るようになってしまうってな?」
「……誰に言われたの?」
「ドライトだ。」
「「「……はぁ?」」」
ケンやその仲間に現在進行形で介入していて色々しまくってる本龍がそんなことを言っていたと聞いて、呆れてアンナとドライトがいる方を見る。
そこでは精一杯遠くに棒を投げるアンナと、それを素早く拾ってアンナに届けるドライトが居た。
「「「あまり深入りしない方が良いですね。」」」
その光景を見て、全員の心は1つになったのだった。
「とりあえず公園は一部を残してあとは閣下の邸宅や幹部の宿舎に、各庁舎を建設します。
残りは兵士達の駐留場とその家族のための住宅ですね?」
「ま、それで良いだろ。」
ロボネン男爵の問いにケンは答えると、ロボネン男爵を残して別の場所に向かう。
そして向かった先では兵士達が残骸の撤去などをしていて、ドワーフ達や職人達が建物の一部を造っていた。
それを見物していると、1人のドワーフがケン達の元に歩いてくる。
「子爵様、建築準備は進んでますぜ。」
「おう、それでどうだ? 結構難しいだろ?」
「そうだな、子爵様の言う通りで、同じように造るってのは簡単だと思っていたが、やってみると面倒だし技術が要るな。」
「こいつは俺がいた世界で木造枠組壁構法、通称ツーバイフォー工法って言うんだ。
同じ規格で材料を揃えて、出来うる限り壁なんかを造ってしまって現地では組み立てのみをする。
これでやれば木材の加工ができる者や大工のスキルが有る者を1ヶ所に集中させて、建築が出来るからスピードも上がるってもんだ。」
「最初は皆、自分達で最後まで面倒をみれないこんなやり方は反対だ! って言ってたが、ミリ単位で規格を合わせないといけないし、実際に建てる時にズレないようにしなきゃならんから技術が要るって今は皆が言ってるぜ。」
「本来は本格的な工場でやる作業だからな? こんなところでやる作業じゃないんだ、それが出来るのはドワーフのお前達やしっかりとした技術がある者達ぐらいだろ。」
そう言いながらケンは忙しく建築作業を進める者達が多くいるところを見る。
そこは石などが取り除かれていて整地はされていて、建材に近くの森から切り出された丸太が置かれた作業場だが、大きな工作機械等は無く皆がノコギリなど手に取り作業をしていた。
幾つか屋根は作られていたが、壁など無く吹きっさらしで作業が行われていた。
「何にしろドンドン造れよ?
秋までに俺達や民達が入れる分を確保して、その後は冬支度をするからな、ジャンジャン造ってジャンジャン建てちまえ!」
「言われた通り、建築現場には親方クラスを送ってますからそっちも問題ありませんぜ。」
ケンはドワーフの族長の言葉にうなづくと、作業場のすぐ近くに建てられた夜営のためのテントが有る場所や作業場を見回してからその向こうを見てから言う。
「あとは城壁をなんとかしなければ……な。」
ケンの視線の先には鬱蒼と生え広がる森林が見えるのだった。
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