異世界転移 45話目




「聞いてたより大したことなかったな、オークロードが居る可能性が有るって聞いてたが、実際にはジェネラルだったし……いかんな、最近は依頼が終わった後に独り言を言うことが増えた気がする。」


そう言ってケンは辺りを見回す、そこは簡素な家、いや掘っ立て小屋や柵の様なものが有る小さな集落だった。

ただの集落なら問題ないが、そこに住んでいたのはオークだったのだ。




新人の冒険者の御用達、ゴブリンパラダイスのすぐ近くで最近オークをよく見かける。


その情報が冒険者ギルドに複数入り、冒険者ギルドは新人達の事を考えてBランクかCランクの冒険者達に偵察を頼んだのだが、BランクやCランクの冒険者にはゴブリンパラダイスの周辺には旨味がなく、良い返事を貰えなかった。


そんな時にソロでCランクに上がったケンが冒険者ギルドの酒場で、




「奴隷高すぎるだろ、奴隷!」




っと酒を飲んでクダを巻いていたので、暇なら見てこいとこの依頼を押しつけたのだ。


そしてケンは暇潰しがてら見に行くと、情報通りにオークを見つけたので後をつけてオーク集落を発見し、オークの集落を叩き潰したのだ。


冒険者ギルドからは偵察だけでも良いと言われていたが、可能なら討伐もと言われていたのでケンは集落をしっかりと偵察して、1人でも討伐できると考えて討伐したのだ。


「しかしまぁよく見かけるようになったはずだよな……。」


ケンはまた独り言を言うと、ゴブリンパラダイスが有る方を見る。




このオークの集落はゴブリンパラダイスから歩いて1時間ほどの場所に有った。




冒険者ギルドは新人冒険者達が頻繁にオークを見かけていたことから、ゴブリンパラダイスから歩いて1日から3日の範囲にオークロードが支配するそれなりの規模の集落が有ると考えていたが、実際には歩いて1時間ほどの場所にオークジェネラルが支配する100も居ない小さな集落が有っただけだった。


しかしゴブリンパラダイスから近くに有ったので、よくオークを見かけるようになったのが真相だった。


「まぁ、新人達に被害が出なかっただけめっけもんか……。」


そうつぶやいてケンは報告のためにもロットリッヒに向かうが、ふと向きを変えゴブリンパラダイスに向かうのだった。




「おー、ここがゴブリンパラダイスか……やっぱり新人は居ないな。」




ケンはそう言いながら辺りを見回して、ゴブリンパラダイスに入り込む。


ゴブリンパラダイスは現在、付近でオークの目撃が有るので新人やランクの低い者は近づかないように警報が出ていた。


何にしろケンが入ると直ぐにゴブリンが5体居たが、ケンは槍の一振で殲滅してしまう。


「こりゃ新人御用達って言われる訳だな、外のよか大分弱いんじゃないか?」


ケンはそう言うと、首を落とされたゴブリン達を見る。

そして興味が無くなったのか、そのまま外に出ようとして立ち止まる。


「……ここって何層まで有るんだっけか。」


ケンはこの依頼を受けるまでゴブリンパラダイスと言うダンジョンが有るのを知らなかった。


これは冒険者ギルドがこのダンジョンの事は身元がしっかりしていて、パーティーを組んでる新人にしか伝えないようにしていたからだ。


これは得体のしれない者や、性根の良くない者に知られて新人の冒険者が狙われないようにとの配慮だった。




何にしろケンも少しは信頼を得たようで、今回の依頼で初めてゴブリンパラダイスの事を教えられた。


なので一応このダンジョンの情報も集めてから来たのだが、その情報の中に何層まで有るかや最下層のボスの情報は無かった。


新人を鍛えるのにちょうど良いからと討伐が禁止されているのと、17層まで確認されているとは聞いていたが、最下層が何層なのかとダンジョンマスターが居るのか、最下層のボスが何なのかの等の本来はダンジョンに必須の情報を聞いていなかったのだ。


ケンはその事に首を傾げながらゴブリンパラダイスを出て、空に浮かび上がると空中を疾走してロットリッヒに向かうのだった。




「うーっす、討伐し終わったぜ。」


「あ、ご苦労様です、それでオークの集落の討伐が出来たのですか?」


ケンは今回の依頼を押しつけてきた冒険者ギルドの職員を見つけると集落を討伐したと報告する、すると職員は少し驚きながら聞き返してきた。


「ああ、100も居ない小さな集落だったし、上位個体はオークジュネラル1体が居ただけだったよ。」


「本当ですか? それにしては目撃例が多かったんですが。」


「それなんだけどな、ゴブリンパラダイスから歩いて1時間ほどに集落が有ったんだ、だから目撃も多かったんだろうな。」


「ああ、なるほど……他の場所の確認はしましたか?」


「ああ、一応他も見て回ったし、見つけたオークの後を片っ端から追ったが全部がその集落に行ってたな、追った回数は12回だ。」


「それなら大丈夫そうですね、一応、1週間ほど置いてからゴブリンパラダイス付近の警報を解除しますよ。」


職員はそう言って報酬は受付から貰ってくれと言って、依頼書にサインをして立ち去ろうとしたが、ケンが呼び止めた。


「まだ何か有りましたか?」


「いやな? ついでにゴブリンパラダイスを見てきたんだが、あそこの階層って何層までだったっけ?

最下層のボスの情報も無かった気がするんだけど。」


「ああ……新人もだいたい10層を突破すると、旨味が無くなりますし、ランクも上がるんで行かなくなるんですよ。


17層まで行ったCランクのパーティーも暇潰しで行ったらしくて、17層のボスを倒したところで、その……。」


「その?」


「飽きて戻ったそうです。」


「なんだそりゃ? ……って、10層からはゴブリンリーダーがボスで出て、他は変わらないんだっけ。」


「そうなんですよ……。」


つまり、6層に出るのはゴブリンチーフ2体に取り巻きのゴブリンが5体で、16層に出るのがゴブリンリーダー2体にゴブリンが5体が出るだけなのだそうだ。


そうなってくると、いくら新人とは言え旨味が無いのと訓練にもならなくなってくるので、それ以上深くにはゴブリンパラダイスに潜らなくなるということだった。


「はぁ……なるほどねぇ……。」


「それでケンさんはこれからどうしますか?」


「まぁ、依頼も終わったし、宿に帰るわ。


あ、あと少し私用で資材探しをするから、ちょっと町から離れるからよ。」


「私用の資材探しですか?」


「ああ、ちと良い場所に土地が手に入る事になったんだよ、そこに自分で家を建てようと思ってな。」


そう言うと職員は驚いて聞き返す。


「自分でですか!? ……ああ、もともとケンさんは大工志望でしたっけ?」


「まあな、何にしろそう言うことで宿にも少しの間は居ないからな。」


「分かりました、帰ってきたら報告をお願いします。」


「あいよ。」


そう言って手を職員にヒラヒラと振りながら、ケンは冒険者ギルドを出るのだった。




そして次の日の朝、ケンはゴブリンパラダイスの出入口に立っていた。


「おっし! 暇潰しに最下層を見てやるか!」


ケンは1人でそう言うと、ゴブリンパラダイスに突入するのだった。




「まてまてまて! なんで突入してるんだお前は!?」


ケンの話を聞いていたアルヴァーが、突っ込みを入れて話をさえぎる。


「いや、誰も最下層を見たことがないと聞いて、知的好奇心を刺激されてな?」


「何が知的好奇心だ! 痴的好奇心の間違いだろうが!


お前な、ゴブリンパラダイスが無くなって、新人を鍛えるのにどれだけ苦労するようになったと思ってるんだよ!」


アルヴァーがそう言って文句を言うが、ケンは真面目な顔で続きを聞け! と言う。


「続きだと? よし、言ってみろこのアホ[ゴン!]いてぇ!?」


「あなた、うるさいわよ。 それでケンは何を見たの?」


アルヴァーを殴って大人しくさせたのはフェリシーだった、そしてフェリシーはケンに続きをうながす。


「ああ、俺も軽い気持ちで行ったんだがな……。 20層まで行ってさすがに飽きてな? 次の階層を見て帰るかと思って、21層に入ったらな。」


「ウンウン、入ったら?」


「ゴブリンエンペラーがゴブリンの大軍勢と一緒に居たんだよ。」


「「「………………は、はぁ!?」」」


ケンの衝撃的な一言に、フェリシー以外も驚きの声を上げる。


それは何故かと言うと、ゴブリンエンペラーと言えば並の魔人よりも余程厄介な敵で、魔王級の魔物だからだった。




「そ、それで討伐したの!?」


「ああ、その時はたまたま持ってた奥の手を使ってなんとか討伐したんだよ。


3日もかかったけどな?」


そう聞いて皆が唖然とする、ケンはソロで魔王を討伐したといってるも同然だったからだ、しかも3日で。


「おいおい、そんなに驚くなよ。 魔王級とは言えゴブリンだし、天井が結構高かったからな。」


「い、いや、どうやって討伐したんだ!?」


ケンの言葉に納得がいかずにフェリクスが叫ぶように聞くと、ケンが奥の手について説明を始める。


「ほれ、俺はもともとオークの大規模な集落を討伐しようと準備していただろ?」


「あ、ああ。」


「そのために俺はな……大量のボム系とファイヤー系のポーションを持っていたんだよ。」


「「「……はぁ?」」」


「つまりだ、集落を見つける、弓や簡単な魔法は届かない位置まで空に飛び上がる、ポーションをバラ撒く、ポーションが無くなったら低空に降り、爆発と火災から逃げ延びた奴等を空中から気弾で始末する。


な? 簡単なお仕事だろ? ってこった。」


「「「恐ろしい事を考えるな!」」」


ケンは全員に怒鳴られて怒られた。




「ね、ねぇ、ケンはなんで今になってその話をするのよ?」


正座させられて怒られているケンに、ミラーナは疑問に思ったことを質問する。


ミラーナの言葉を聞いて、全員が黙りケンを見る、するとケンは嫌な顔をしながら答える。


「ゴブリンパラダイスは1層から20層まで雑魚しかでなかった、だが本命の21層にはゴブリンエンペラーが待ち構えていた。


似てねえか? 今居るここと。」




「「「……あ!?」」」



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