奈良県
【56】国宝の山と鹿せんべいと求婚と①
幸村様とお別れをして駅へと向かう途中、
俺はあることを思いついた。
「はるさん、今から奈良行くんですよね?」
『そうだけど、どうしたの?』
「実は少し、考えがありましてね?
奈良ってさ、前行った時に思ったのですが、場所が極端なのよ!観光地の場所が離れすぎてて、交通手段を待っていたら結構な時間ロスになっちゃうの。だから、できれば車の
ほうが回りやすいのかなー?と思いまして。さっきレンタカー屋の前通ったし、車空いてたら車でドライブしながら行くというのは
いかがでしょうか?」
『なるほどね、私も大仏と奈良公園以外
行ったことないからよくわからないけど、
稜さんがそう思うなら、空いてるなら借りて行きましょう!』
はるさんは基本、俺の言うことを
受け入れてくれる優しい彼女だ。
プロポーズもそろそろ受け入れてくれると
言うことないんだけどな…。
先ほど通りすぎたレンタカー屋へと戻り
車が空いていないか確認してみる。
運よく、軽自動車が一台空いていたので
余裕を見て半日コースで借りることに成功した。
「よーし、はるさん?久しぶりのあれ!
行きますよ?準備はいいかな?」
助手席に座り、無表情で俺の顔を
じっと見つめている彼女。
でも、俺には関係のないことだ!
「それでは…奈良県へ向けて…
レッツラゴー♪あれ?…起きてます?」
『はーい、さっさと出発しよ?』
もう、本当に冷たいんだから。
高速道路を使って大阪天王寺から
奈良公園付近までは渋滞に捕まらなければ
約四十分程で到着する予定。
さて、はるさんは奈良県のことを
どれだけ知っているのか。
恒例の質問タイムの始まりだ。
「はるさん?奈良県と言えば何でしょう?」
『…奈良県ねぇ、奈良漬け?鹿?大仏?
せんと君?急に聞かれてもそれくらいしか
思いつきません。無知でごめんね?』
「はるさん…。そのチョイスに"せんと君"
入れてくるとか…可愛いすぎます!まぁ奈良漬けが奈良の名産なのかはよくわからないけど、やっぱり鹿と大仏ですよねー。でも?
はるさん、これも忘れてはなりませぬぞ!
世界最古の木造建築でもあり、世界遺産にも登録されている…あれですよ、あれ!さて
何でしょうかー!!」
『あ、それは知ってるよ!あれでしょ?
俳句?短歌?のやつね!なんだっけ…』
「はるさん?それは俺へのフリだと受け取ってよろしいですか?しょうがないわね…
では、…僭越ながら詠ませて頂きます!」
『法隆寺!!』「…柿食へば~」
『ねぇ、法隆寺でしょ?あーやっと思い出した!すっきりしたー。で、あれでしょ?
"柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺"!!正岡子規だったよね?』
「……んもぉぉぉ!!絶対わざとだー!!
本当に意地悪なんだから…。ということで
そろそろ奈良公園周辺ですぞ!俺は最初に
法隆寺へ行きたいなと思っていますけど、
はるさんいいかな?」
『勿論!』
そして法隆寺へと到着。
「はるさん?ここはねー、本当に国宝だらけのまさに、宝箱のような場所なんですよ!
ほら、あそこに大きな門があるでしょ?
あれ南大門っていうんだけど、あれも国宝なの。入口から国宝って凄くないですか?」
『あ、後ろに五重塔の見えてるね!なるほど。稜さんと寺院見物するのはやっぱり勉強になるから、とても楽しいです!』
珍しくお褒めの言葉を彼女から頂き、有頂天の俺はニヤニヤとしながら参道を進み南大門をくぐる。はぁ、久しぶりの五重塔。
やはり素晴らしい。
「ここの五重の塔はさ、決して派手ではないんだけど、積み重ねた歴史の重みみたいなものを感じる迫力があると思いませんか?
まぁここにある建物全部に重厚感みたいなものを感じますね。さすが世界最古の木造建築物!」
『まぁ、言ってることはわかる気がします。この敷地の中に入ったらさ、空気が変わったような感じするよね、うまく言えないけど』
「はるさん?ここの見所はね、ここだけじゃないの!国宝でもある、金堂の壁面にね
作者不明の壁画があるんだよね!仏像もさ、京都で見たやつほどじゃないけど、めっちゃスリムなスマート王子がいるわけよ!」
中々、若者には観光名所の少ない奈良県と
言われてしまったりもするが、昔は都があったくらいに、由緒ある場所ばかり。
百点を越える国宝や、重要文化財を余すことなく堪能し法隆寺を後にする。
「そういえば、はるさん?法隆寺って誰が
建てたか知ってますか?」
『え?知らない!誰なの?』
「正解は、何と…聖徳太子と推古天皇によって建てられたと言われてるんだよ!」
『え、そうなの?というか聖徳太子って
本当にいたのかな?もう、空想上の人物って感じしますよねー。』
「確かに、肖像画とかも残されているけどさ
実際に居たかどうかなんて、その当時にタイムスリップでもしないとわからないよねー。
しかも聖徳太子って一度に何人かの話を同時に聞く事ができたって話もあるよね?
俺は一人の話を聞くこともままならないのに事実なら本当凄いと思うわ。」
『…稜さん?そもそも人の話を聞くつもり、あまりないですよね?稜さんはその代わり、一人で何人分も喋ってるから、それでいいんじゃないの?』
何たる鋭い突っ込み!
さすがは俺の彼女…あなどれぬ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます