【34】宮殿と求婚とシャンプーと?(終)
変わって涼しい建物の中から、宮殿の庭園へと移動。さて、私の大切なお嬢様は…中央の噴水に向かったようだ。
まだ午前中ではあるが容赦なく夏の日差しがジリジリと照りつけるヨーロッパ式の古代庭園の中心部は太陽を遮るものが無い為、数十分でこんがりと日焼けできそうである。もしかしたら石畳の上で目玉焼きができるのではないか?
それにしてもこの場所…目隠しされてここまで連れてこられていたとしたら、目を開けた瞬間に、本気で外国に来た?と勘違いしてしまう程、西洋の雰囲気を醸し出している。
我が麗しの姫君はどこだ?
早歩きをし庭園をぐるぐると歩いてみるとようやく大好きなシルエットが見えてきた。
彼女は噴水の縁に腰を掛けて何やら中を覗き込んでいるようだ。
「はーるさ~ん!やっと見つけた~!
ここで座って何をしてるの?」
『あまりにも暑すぎて、溶けてしまいそうだったから少しでも涼しそうなところを目掛けて歩いてきたらここだっただけですよ~。やはり水しぶきが少しあるだけでも全然違うね~』
キラキラと舞う水しぶきをバックに可愛いハンカチで汗を拭うはるさん。
これは、絵画の中の光景なのか?
と思ってしまうほどに完璧な構図…
はぁ、可愛い…可愛すぎる!!
ダメだ、言いたくなってきた!!
俺は彼女の前に膝をつき手を取った。
表情は逆光になっており確認しにくいが
まぁ、よしとしようではないか。
「我が、麗しの姫。話を聞いて頂けますか?
長崎では少しばかりアクシデントもありましたが、ここは佐賀県!気を取り直して参ります。私は今、この西洋の庭と灼熱の太陽に貴女への永遠の愛を誓います!受け入れてくれるなら、私の頬にどうか口づけを…。ジュレーム。」
決まった!!
姫が私を多分見つめている。
さぁ、熱い口ずけを!!
『稜さん?今ジュレームって言いました?ジュレームってシャンプーのことだよね?それが欲しいんですか?…あ、もしかしてまだお酒残ってます?今日の夜は福岡県の中洲で、暑いけどもつ鍋でも食べようと思ってたけど…今宵はビール無しですな。』
「え?シャンプー?しかも中洲でビール無し?え?え?何で~!!?」
『さーて、登り窯をサクッと見学して呼子に向かいますよ~。あ、まだ酔ってるなら運転するから申告してよね。ペーパーだけど。』
「……、はるさん、ジュレームって何?」
『え、シャンプーの名前じゃん。』
「俺は何て言おうとしてたの?」
『知らんがな!!』
こうして、俺の求婚は返事どころか彼女に突っ込まれまくって終わりという散々な結果をもって幕を降ろしたのだった…。
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