318話 新たな問題
<激闘! うさ追い祭り₍ᐢ。 ˬ 。ᐢ₎ その2>
㋞「うさぎなんて追って、何が楽しいのよ?」
㋛「でも、激闘だから。白熱した勝負になるはずだから、きっと盛り上がるよ」
㋐「最後には、不思議と”私がうさ追いクィーンだ!”となっちゃうから、不思議だね」
㋞「ならないわよ… 」
ソフィーは年上二人を冷めた目で見ながら、いつもと違って低いテンションで突っ込む。
㋞「それで、どこでするのよ? その辺で野うさぎでも追うの? うさぎを追う前に、私達が魔物に追われるわよ?」
㋐「場所はですね、イリノモテ村にある”ふれあいの森どうぶつ王国”です。なんでも、そこにはうさぎ以外にも動物が大量に飼われていて、ふれあうことができるらしいです」
㋞「イリノモテ村って言ったら、かなり遠いわよ?」
㋐「到着は明日の夜ですね」
行程はアルトンの街から、オッキーナの町に行って、そこからイシガッキン村(一泊)、イリノモテ村である。
㋞「ゆるい企画ね… 読者さん達ががっかりしているわよ」
<夜10時 イシガッキン村 宿屋>
㋐「ようやくイシガッキン村に着きましたね。人間こうも変わるものですかね」
布団の敷かれた布団の上に、酔ってご陽気になったソフィーがごろ寝しており、アフラがめくれ上がりそうになっているスカートの裾を治している。
イシガッキン村の宿は小さいため、食堂もそれに併せて狭く、他の客が飲酒するアルコールが充満していたのか、ソフィーはそれで酔ったようになってしまう。
㋛「食堂の酒気あてられたみたいで…」
ソフィーが酒に酔ったかのような真っ赤な顔で、アキに抗議してくる。
㋞「ちょっと、眼鏡先輩。この部屋はどういうことよ。企画が始まる前から、文句を言いたくないけど私達3人をこの狭い部屋に泊まらせる気なの?」
㋐「でも、ソフィーちゃん。ここはまだ3人相部屋だけど、イリノモテ村に行ったら、みんな同じ部屋だよ?」
酔っているソフィーは、ジト目気味で文句を言い続ける。
㋞「どうして、私がアナタ達と一緒の部屋で、数日も過ごさないといけないのよ」
㋐「文句ばっかりだね、ソフィーちゃん。朝自分でなんて言っていたか覚えているかい?」
朝の㋞「”うさ追い”なんて、緩いわよ。読者さん達が求めているのは、私達が憔悴する姿なのよ! 私達の魂の叫びが聞きたいのよ!」
㋞「また、勝手な編集してるんじゃないわよ!」
またもやアキの編集(捏造映像)テクニックが冴え渡る。
㋐「でも、どうだいソフィーちゃん。牛追いじゃなくて、この企画で良かったでしょう?」
㋞「そうね、この企画以外あり得ないわね」
㋐「ソフィーちゃんったら,今朝までスペイ村で牛を追うつもりだったらしいよ」
㋞「冗談じゃないわ! どうして、私が<うし>に追われなければならないのよ。そうでしょう、エレナさん? 私は<うさぎ>を追うのよ」
こうして、イリノモテ村でうさ追いが始まることになるが、そこである人物の登場によって企画は一気に過酷になってしまう…
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昼までに10体のゴブリンと激闘した一同(主にアリシア)は、エレナの昼食を食べていた。
「これなら、受けてきた<近くの山まで行って、そこにいるオーガを10体退治する>を昼からできるんじゃない?」
「そうだね。アリシアも慣れてきたみたいだし、行ってみようか」
「はい、わたくしがんばります!」
その後にアリシアはモジモジした態度でこのような提案をしてくる。
「その代わりに、わたくしに何かご褒美を…」
「何を言っているの、アリシア! アナタよりも、年下のミリアちゃんやリズちゃんがそんな事も言わずに頑張っているのに、恥ずかしくないの!? ミリアちゃん、リズちゃん! あの駄目なお姉さんを哀れんだ目で見て、その甘さを思い知らせてあげて!」
「いやー! やめてください! そんな哀れんだ目でわたくしを見ないでください!」
二人はそんなつもりで王妹様を見たわけではないが、この機会に紫音に甘えようという後ろめたさのあるアリシアには、年下の視線に耐えきれず思わず悲鳴をあげてしまう。
「何をやっているんだか…」
その緊張感のない様子をソフィーは、食後の紅茶を飲みながら呆れた感じでそう呟く。
その頃――
フラム要塞には、オーガ拠点を監視していた偵察兵から、とんでもない報告が齎させていた。
「何!? オーガ軍が本拠点から動き出した?!」
その報告を受けたユーウェインと場に居合わせた四騎将に衝撃が走る。
報告の内容は、今朝になり急に本拠点のオーガ軍が移動を開始したというものであった。
その移動するオーガ軍の中には、王と思われる一回り大きいオーガもいるらしく、まさしく全軍による移動だと思われる。
「それで、向かっている場所は?! やはり、ここか!?」
「それが… 最終的な場所はまだわかりませんが、魔王城の方に向かっているとのことです!」
ユーウェインの予測は外れ、魔王城に向っているらしい。
「魔王城に戦力を集めるつもりでしょうか?」
エスリンの言う通り、戦力を分散させずに一箇所に集めるのは、用兵として間違っておらず、戦力が激減している魔王軍では特にありえる話である。
「奴らの目的地が、どこかわからないと対応のしようがないな」
「この情報を今すぐアルトンに伝えて、敵の侵攻がまだ先と考えているクランに、暫く街で待機するように要請するべきです。目的地次第では、こちらから先手を打たなければならないかもしれません」
タイロンの後にエドガーがクランへ待機の要請をするべきと意見する。
「そうだな。今すぐアルトン行政府に通信を送ってくれ」
「本拠点を放棄してまでの移動… 何か嫌な予感がしますね」
何度も死線を潜り抜けて得たリディアの危険を感じ取る能力が、彼女にそう告げてきており、それは同じく死線を越えてきたこの場にいる者達の共通の意見であった。
その頃、お気楽紫音一行は――
「この余ったチョコスフレは、私のッス!」
「はぁ!? 何を言っているのよ! ジャンケンでしょうが!」
一つ残ったチョコスフレを誰が食べるかで揉めていた。
それは、紫音が昼食のデザートに作ったモノであったが、レイチェルが食べるのを断って余ったものである。
「私は甘いモノが苦手でね。せっかく作ってくれたシオン君には悪いが、遠慮させてもらうよ。甘い百合百合シーンは大好物だけどね!!」
百合という言葉の意味の知らないミリアは「???」といった表情で、エレナは苦笑いしており紫音は無表情で無視して、リズ、ソフィー、アリシアは残ったチョコスレ争奪を続けていた。
「部下であるレイチェルのモノは、主であるわたくしに権利があると思います!」
リズとソフィーはそう発言した王妹様を無言で一瞥すると、無視してまた言い合いを始める。
「無視しないでください!」
すっかり、王妹様とは思えない態度を取られてしまっているアリシアであった。
「朝から10体敵を釣るという忙しい仕事をこなした私が、一番権利があるはずッス!」
「そんな事言ったら、その10体のうちアナタ達が『どうぞ、どうぞ』って、遊んでいる間に私が7体撃破しているんだけど!?」
「その10体全ての攻撃を受け続けたのは、わたくしですよ!? なので、わたくしにシオン様手作りのお菓子を食べる権利があると思います!」
「アリシア様は、どうせ王宮で甘いもの食べ放題の人生だったんだから、ここは譲るべきよ!」
「そうッス! どうせ、『ケーキが無ければ、プリンを! プリンが無ければミルクプリンを食べればいいのですわ!』とか言って、沢山プリンを食べていたに違いないッス! 羨ましいッス!」
「お二人共、わたくしの事を酷く誤解していますよ!?」
呑気に過ごしていた。
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