幕間? その3
20?話 記者会見(前編)
記者会見が行われる10分前、会場は各社の記者が続々と集まってくる。
月影新聞のソフィーとアフラは、指定された最前列の記者席に座った。
もちろん会見で質問をして、真相を究明するためである。
決してツッコミをするためではない、断じてそうではない。
ソフィーが、会見に備えて気合を入れると丁度開始の時間となり、記者会見台近くの入口から紫音を先頭にリズ、そしてその後にマオが神妙な面持ちで会場に入ってくる。
すると、激しいフラッシュが3人に向けられた。
3人がそのフラッシュを浴びながら、マイクがいくつも置かれた記者会見台の前に立つと、紫音は緊張した面持ちで話し始める。
「今回は当方の突然の記者会見に、お越しいただきありがとうございます。今回の件『章タイトル偽装詐欺疑惑』ついて、本作を代表して一応主役の私、天河紫音が記者の皆様の質問にお答えいたします」
紫音がそこまで述べると3人は深々と頭を下げ、その瞬間フラッシュが激しく点滅して紫音達を襲う。
3人は暫く頭を下げた後、席について質疑応答を始める。
「質問よろしいですか?」
質問の口火を切ったのはソフィーであった。
「はい、どうぞ」
紫音がソフィーに質問を許可すると、彼女はいきなり今回の事件の核心を突く質問をする。
「<第5章タイトル 逆襲の魔王軍(仮)>となっているのに、全然逆襲していなじゃないか! それらしいタイトルで煽っておいて、詐欺じゃないか! という意見が出ていますが、それについてどう思われているのでしょうか?」
「あー、えーと…ですね…」
ソフィーの鋭い質問に、紫音が答えに詰まっていると、隣に座るリズが
『それは、もちろん』と囁く。
すると、それを聞いた紫音は「それは、もちろん…」と、リズの囁きをそのまま質問の答えとして話し始める。
『欺くつもりは』
「あざむくつもりは…」
『無かったッス』
「なかったっす」
どこかで、見たことある女将の会見みたいになってしまう。
「横の人の言ったことを喋っているだけじゃない! しかも、ご丁寧に”ッス”まで言ってるんじゃないわよ!」
すかさず紫音の釈明にツッコミを入れるソフィー。
彼女は気を取り直して記者らしい追求をおこなう。
「真面目に謝罪する気が、あるんですか!?」
彼女の追求に、隣のマオが反論を始める。
「そもそも謝罪など必要ない。何故なら、その為に章タイトルに(仮)を、つけていたのだからな! (仮)ということはあくまで“仮“ということであろうが!」
マオの暴論に、ソフィーも負けずに反論する。
「そんな事が言い訳になると思っているんですか! (仮)ならタイトルにも付いていますよ、タイトルも詐欺なんじゃないんですか?!」
痛いところを突かれたという顔をしたマオは、逆ギレしてソフィーに手元にあったペットボトルの水をかける。
「ひゃあ!?」
ソフィーはその優れた反射神経で、何とか浴びせかけられた水を回避する。
「何するのよ!?」
彼女が、この暴挙に文句をつけると、紫音が次のように謝罪する。
「幼女のしたことですから、許してあげてください」
すると、会場の雰囲気が<幼女なら、仕方がないな>と、なってマオを許す空気になる。
そうすると、マオは役割を終えたとばかりに、席から立つと会場の出口から出ていった。
紫音が何事もなかったかのように、次の質問がないか尋ねると、近くに座っていた魔王新聞のリーベが質問する。
「主人公の紫音さんに質問です。この作品のお勧めカプを教えて下さい。もちろんBLですよ?」
紫音は<お勧めカプ?>と、困りながら、何とか質問に答えようとする。
「えっ!? あー、私は…BLというのは、あまり詳しくはないですが…、スギハラさんとユーウェインさんじゃないでしょうか…? 仲のいいお二人ですし……」
リーベは重ねて紫音に質問をおこなう。それは質問というより、尋問に近いかもしれない。
「それはつまり、紫音さんの中ではスギハラ×ユーウェインということでしょうか?」
「え? あっ、はい。そうだと思います……」
紫音は質問の意味がわからずにそう答える。
すると、彼女の答えを聞いたリーベは、突然怒り出す。
「何を言っているのよ! どう考えたって、ユーウェイン×スギハラでしょうが!! 少し俺様属性で兄貴分のユーウェインが攻めに決まっているでしょうが!!」
腐女子にとってカプの”×”の順番はとても大事なのである。
「ひっー! なんかごめんなさい!!」
紫音はすごい勢いで怒られたので、謝ることにした。
すると、近くに座っていたオータム新聞の記者アキが次の質問をする。
「紫音ちゃんに質問です。自分がTS化したら、攻め受けどちらだと思いますか?」
紫音は、またしても関係ない意味のよくわからない質問に、戸惑いながらこう答える。
「攻め? 受け? えーと……攻め―」
「詩音ちゃんは、受けに決まっているでしょうが! しかも、総受けだよ! 異論は認めん!」
アキは言わせねえよ! と、ばかりに紫音の言葉を遮ると勢いよく捲し立てた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
異論を認めないのだったら、(どうして質問をしたのだろう?)と思いながら、紫音はアキの勢いに負けてまたもや謝罪する。
「何を関係のない質問をしているのよ、この腐女子共!!」
ソフィーがツッコミを入れ終わると、腐女子達は警備員に会場から連れ出されてしまう。
記者会見(後半)に続く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます