第75話 白シャツとハートマーク

 一つ前のストーリーが暗かったので明るい話をしよう。


 私はシャツが好きだ。チェック、ストライプ、フランネル、コーデュロイ、ブロード、ツイル、リネン、コットンリネン、クレイジー、デニム、うーん、次々と出てきて書ききれない。


 で、掛かったシャツの中からその日の気分で一枚を選ぶのだが年に何回かホワイトシャツブームが来る。勿論、ここで語っているのはビジネス用のワイシャツではなくカジュアルのことなのでホワイトシャツとは無地の白いシャツを指す。


 ブームが来ると対象のシャツを全部、引き出し酸素系漂白剤と共に洗濯する。収納していても黄色くなるからだ。毎回、洗濯時には「こんなにも白いシャツを持っていたのか」と呆れる。


 洗濯して元の白さを取り戻したシャツ達は美しい。そして袖を通すと少しごわごわした感じが非常に心地良い。カジュアルとはいえ白さに身が引き締まるようだ。


 中でも飛び切りお気に入りのシャツが一枚ある。コットンシャツで左にのみある胸ポケットがインディゴのパッチワークになっている。そしてポケットの中を覗き込むと赤いハートの刺繍がある。フラップがある上、内側の端の方にあるのでハートマークは着ている本人以外には絶対に見えない。その本人である私自身もブーム到来で引き出した一回目以外は意識して眺めることもないのだが、なんとなく身に付けていると気分が上昇するように思うのだ。どこかの歌にあったように空を飛べるような気持ちになる。これをデザインした人はどんな人だろうと想いが巡る。大きめのボタンも凝っていて「Standard Of The Earth」と刻印がある。ボタン一つにも願いが込められているようだ。


 さて、解説が長くなった。私は今、当然、ハートマークのシャツを着用してこれをタイピングしている。起床して一番、目が行ったシャツに書かされているのだ。負の文章を投稿した当日にウキウキとしているのか、と、不思議に思われるかも知れないが、実は前話は綴ってからかなりの時間が経過していた。そこでマイナス成分は打ち消しておこうと気分も一新、これを投げる。


 白いシャツには飲み物をこぼすと染みになるなどデリケートな面もあるのだが、それを補って余りある心理的プラス効果がある。皆さんも心洗われる白さを身に纏ってみては如何だろうか。心に漂白剤、必要なきよう。

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