いつか出逢ったあなた 47th
ヒカリ
第1話 「…月並みですが…世界一の幸せ者にします。」
「…月並みですが…世界一の幸せ者にします。」
ノン君が…わっちゃんにそう言ってくれて、あたしは泣きそうになった。
あたしがノン君と付き合ってる事、桐生院家にはバレバレみたいで。
母さんにもバレてる気がするけど…
なぜか、父さんは気付いてるのに気付いてないフリをしてる。
気がする。
…認めたくないのかも。
12月に、
色々あって、まだ会えてないんだけど。
だけど、身近でそんなおめでたい話があるとさ…そりゃ、ずっとくすぶりまくってる色んな願望に、火が着いちゃうよ。
あたしは、もう…我慢出来なくなって、父さんに言った。
「あたしー…結婚しようかなー…」
すると父さんは。
「…身長が高くて顔も良くて運動神経も良くて、頭も良くて車の運転も上手くて、好き嫌いもなく年収が俺よりいい男か?」
何だか聞いた事のある条件を、真顔でツラツラと言った。
「…身長は高い。」
あたしの『相手がいる』と言わんばかりの返事に、父さんは少しだけピクリて眉を動かして。
「………それだけじゃダメだな。」
不機嫌そうな声で言った。
「顔もいい。運動神経も…たぶんいい。頭もいいし運転も上手いし、好き嫌い…好き嫌い、ないし…」
「……」
「…年収は…これからでしょ…」
「じゃあダメだ。」
「ちょっと待ってよ!!父さんより年収のいい男って、それじゃあたし、父さんより年上とかとしか結婚できないじゃん!!」
「俺より年上だと、既婚者ばかりだから無理だ。」
ピシャリ。
まるで、あたしの見る目は信用しないと言わんばかりに自分の理想を押し付けて、父さんはシャッターを下ろした。って感じだ。
「……」
両手を握りしめて、わなわなとしてしまった。
…父さん!!
あたしの事、お嫁に出す気ないんでしょー!!
それをノン君に話すと…
「…
って。
なるほど。
名案。
それで…今日、本家に来たわけなんだけど…
残念ながら、織姉は不在で、わっちゃんと空ちゃんと、二人の娘の
「陸兄、そんな条件出してるの?」
空ちゃんが目を丸くして言った。
「そうなの。絶対あたしを結婚させないつもりとしか思えない。」
「でも、年収以外はクリアしてそうだよな。
「ずば抜けていいわけじゃないけど、悪くないです。」
「好き嫌いは?」
「ないっすね。」
ノン君の答えに、わっちゃんと空ちゃんは『じゃあ』って笑顔になった。
ほんと…
年収の事なんて言われたら…
ちさ兄とか高原さんの事しか思い浮かばないよ。
「陸兄、紅美の事が可愛くて仕方ないんだろうけど…ちょっと酷いね。でも、みんなでサポートするから、頑張って。」
空ちゃんがそう言うと、ノン君は少しだけ背筋を伸ばして…
「ありがとうございます。それと…あの時の無礼、お許しください。」
って、ペコリと頭を下げた。
「あの時の無礼?」
あたしとわっちゃんが同時に問いかけると。
空ちゃんは…
「あー…いや…あれはあたしが悪かったから…いやいや…何でもない…気にしないで。」
苦笑いしながら、首を振った。
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紅美ちゃんとノン君。
また波が押し寄せるのでしょうか。
絆は出来上がってるのでしょうか。
ノン君の言う『あの時の無礼』は、あの時のアレですね。
分かるかな?
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