退屈な人生に彩りを

Soeri

楽しく暮らすために初めて努力してみる

プロローグ

「そんな事が可能なのかっ!」


そんな男の驚く声が部屋に響き渡る。この部屋には年を重ねた男たち8人がまだ10代後半であろうアイリスと向かい合って座っているという異質な光景が広がっていた。そんな親と子という年の差のアイリスの言葉に目の前に座るこの国のトップたちはみな一様に動揺を隠せずにいた。


「ええ貴方達も彼の凄さは理解しているはず」

「他の能無しとは違ってあやつは天才だったからのう」

「しかし本当にそんな事が可能なのでしょうかいくら天才と言えども不可能では」

「いやこんな小娘が私等達に嘘をつく度胸もないだろうNo.2とはいえ知れたもの奴でなければ我らの脅威になどなり得ない」


アイリスは相手の言葉一つで首が飛ぶこの状況に息を飲む。しかしここからが本当の勝負だったここで要求を相手に飲ませなければ全てが水の泡へと消える。それは反対意見があれば殺されてしまうようなそんな危ない賭けだった。


「これには彼の力が必要です。」

「嬢ちゃん、それは出来ない相談だ。彼の処遇は決まったんだ今更変える事は出来ねぇ...それともなんだまたやろうてのか」


尋常ならざる圧を放つ彼の言葉に心が揺さぶられるがそんな様子はおくびにも出さずアイリスは話の続きを話す。


「それは分かった上での提案をしたいのです。私を彼と一緒に行かせて下さい。それなら問題ないでしょう。」

「お嬢ちゃんそんなに現実は甘くないぜ。そんな事許すわけがない。」

「まぁ待てゲセド我々の益を考えれば小娘1人増えようが問題なかろ。」

「しかしメリア様何か企んでいるかもしれません。」

「お前は相変わらず頭が硬いな。そんなもの何もできないように監視と彼に外の話をしないという条件をつければ問題あるまい」

「しかし...」


そんな是か非か言い争っている中、この中で1人黙っている男がいた。その男がついに口を開く。


「いいだろうお前のその提案をのもうじゃないか」

「よろしいのですか」

「ああ。しかし条件があるメリアが言ったように監視はもちろんのこと外のことを話す事は禁ずる。あと行く前にお前の代わりになる者は選定しておけ。話は終わりださっさと消えろ。」


彼の決定に誰も口を挟まない。この世界では彼に異を唱えることのできる人など1人もいなかった。アイリスは彼の言った通り急いで部屋を出て行くのだった。


——やったよクロウこれでようやく私達は


アイリスは大きなことをなした達成感に浸っていた。しかし、大変なのはここからだ今ようやく始まったのだ。やらなければならないことはまだまだ山のようにある。そんなことを忘れ今は一時の喜びを感じているのだった。


*******


5020年2月3日


「起きてー、朝だよ」


もし天使の声が聞けたならまさにこのような声なんだろうと思うような可愛らしい声で起こされて俺の1日は始まる。今日も気持ちのいい朝がきた。


「おはようアイリス」

「おはようクロウ」


目をこすりながら意識が覚醒していくのを感じる。まだ焦点が定まっていない中彼女が視界に入り視界がはっきりする。彼女は神の最高傑作と言われても疑うことのないような超絶美少女だった。品があり抜群のプロポーション髪は金髪のツインテールで、顔はまるでフランス人形のように整っている。


「クロウご飯できてるよ、早く食べないと冷めちゃうよ」


早く早くとまるで子供のように手を引っ張られ急かされる。こんな美少女に手を引っ張られて嬉しくない男などいないだろう。つい頬が緩んでしまう。


僕はベットから降りるとどこからともなくメイドが集まり着替えが終わり準備万端の状態で朝ごはんを食べに行く。すると机にはすでに朝食が用意されていた。

部屋には小さな音量でクラシックがながれていて、僕は一番大好きなパンを一つ手に取った。


「まさに天国のような暮らし、しかし、ここまで毎日至れり尽くせりだと慣れてしまって退屈になってしまうものだな」


慣れとは困ったものでどんなに楽しく面白いものでも人は慣れてしまうと飽き退屈になる。今の時代魔法と科学両方の発展により大変便利な時代になった。しんどい仕事は全部やる必要ないし欲しいものは大体手に入る食べたいご飯理想の家...衣食住を心配する必要はない。さらには人工知能とロボット工学の発展により自分が一番好きな性格顔の異性のアンドロイドが作れてしまう時代だ。

そうアイリスはアンドロイドなのである。アンドロイドが出来て約1000年もう人間じゃない点がほとんどない。なんでも思いのままに行ってしまい最近はひどく退屈なのだ。


「やりがいのあることがしてみたい」


やりがいがあることといっても中々難しい全てが満ち足りている世の中でなにを成し遂げるというのか。


芸術や音楽などは機械ではなく人だからこその良さがあるという時代はとうの昔に過ぎた。僕が今一番観たい絵を計算で出すことが可能になり、音楽についても機械が作曲できるようになった。そんな100パーのものが返ってくると人はなにかをやろうとする気がなくなる。だが退屈なのだ。


「やりがいのある仕事が出来るシチュエーションでつくる?」


いつものことのように返事がくる。なにもしなくて良くなると退屈になった人間は遂には自由に世界が作れるようにしてしまった。正確には仮想空間を作っての自分だけの世界なのだが、この世界に出てくるアンドロイドがもう人間と変わらないのだから世界征服したようなものだ

例えば自分が学校に行きたいと思えば理想の学校、友達、先生全てが上手くいく環境が作れてしまうのだ

だが僕は自分を中心に回る世界に飽きてしまったのだ。その昔科学がない時代があったらしい、そこにいけば退屈しないのではないのだろうか


「アイリス僕は過去に行ってみたい」

「分かったわ過去が設定の世界を作るね」


いつも通り僕のために仮想空間を作ってくれようとしてくれるアイリス。準備しようとしてくれるが仮想空間に用はない。


「そうじゃないんだ僕は自分の思い通りにいかない本物の世界の過去に行きたいんだ」

「どうしてそんなことがしたいの?」


可愛く首を傾げながら不思議そうにこちらを見つめる


「もうこの自分を中心に回る世界には飽きたんだ」

「....わかったすぐに過去にいけるように準備する」


まだ完全には僕が過去に行きたいことを理解してないようだけど渋々頷いてくれた。

こうして僕は過去の世界に行くことになった。

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