第22話 由紀のネグリジェ姿



 由紀の部屋を探し、とりあえず隣の部屋から当たってみることにした

ご丁寧に扉には木製のプレートがあり、可愛い文字で『由紀』と書かれている。

さて、何をどう話せばいい事やら……。行き当たりばったりでいいか!



――コンコン


「由紀、いるか?」


『も、もう少し待ってください。直ぐに準備します!』


「ああ、わかった。ここで待ってる」


 準備? 何の? 別に散らかっていてもいいんだけどな……。

数分待ち、中から由紀の声がかすかに聞こえる。



『大丈夫……。きっと、私ならできる! 頑張れ自分!』


 ナニを頑張るのだろうか?

俺と話をするのに、気合が必要か? 兄妹なんだし、気楽に行こうぜ!



『お、お待たせしました。入っても大丈夫です』


「入るぞー」


 扉を開いた瞬間、いい匂いが。まるで石鹸のようないい匂いだ。

部屋は薄い水色で統一されており、白のローテーブルはハート形で可愛い。


 棚には大きな熊のぬいぐるみがあり、ひときわ目立っている。

そして、なぜがネグリジェの由紀。白のフリル付きで、とってもかわいい。


 え? 由紀さん、何しているの? まだ寝るには早くてよ?


 俺はゆっくりと扉を閉める。見間違いか?

由紀が白のネグリジェを着ていたように見えてしまった。


 今日病院で目が覚めてから、いろいろあり過ぎたのか。

ついに、俺は幻覚を見るようになってしまったのか……。


『に、兄さん! なぜ扉を?』


「すまん。由紀の姿が……。きっと見間違いだと思うが、ネグリジェに見えてしまって……」


『大丈夫です。由紀は普通の格好ですよ』


「そうか、じゃあ入るぞ」


 再び俺は扉を開ける。

うん、見間違いじゃないな。白のネグリジェだ。

キャミソールの形をしたネグリジェ。

膝上数十センチのネグリジェを身に着けているので、太もももばっちり見える。

こ、この格好は……。


「由紀。普通の格好では?」


「え? 由紀は自室でいつもこの格好ですよ?」


 ホワイ。 自宅だと下着一枚で過ごす人がいると聞いたことがある。

まさか、由紀は自室でいつもこんな色っぽい服装なのか!

妹なのに、妹なのに! 可愛いぞ! こんちくしょー!


「由紀、すまない。服を着てもらえないか? 落ち着いて話ができない」


「そ、そうですか……。以前だったら『そんな格好するんだったらいっそう全部脱いでしまえ』と言っていたのに」


 大変申し訳ありません! スッポンポンも見たくないといったら嘘になりますが、服着てください!

どこを見ながら話をすればいいかわかりません! 本当に申し訳ない!



「そんな事を……、ごめんなそんなこと言って。これからはそんなこと言わないから安心してくれ」


「兄さん……」


 由紀は頬を赤くしながら、少し涙目になっている。

クローゼットにかかっていたワンピースを手に取り、スポッと着る。


「これで、大丈夫でしょうか?」


「ああ、大丈夫だ。これで由紀とゆっくり話ができるよ」


「まるで人が変わったみたいですね。本当に兄さんなの?」


 どきーん! 多分兄さんだよ? まるっきり証拠はないけどさ……。



「母さんが僕を病院に迎えに来てくれたから、多分間違いなく由紀の兄さんだと思うよ」


「そう、ですか……。記憶、戻るといいですね」


 由紀に言われ、正直なところ、元の記憶が戻らなければいいと思った。

もし、記憶が戻ってしまったらまたみんなにひどい事を言うに決まっている

俺は女性に優しく、自分にもっと優しい。


 そして、彼女を作って、いちゃいちゃしたい! まだキスも経験してないんだ!

それまでは絶対にこの記憶を持ったまま生き抜いてやる!


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