捨てられぬ遺書、消えぬ傷跡

山居 藍

遺書

遺書を、捨てました。


十数年間保存していた遺書でした。


大嫌いな世界への決別でした。


けれど読み返してみたところ、

しにたくない、と書かれていました。


しにたくないのに、しにたいのです。

しにたくないから、しにたいのです。


本当は、生きる希望がほしかっただけなのです。


きっとこの先も、私は何度も

世界に向かって大嫌いと叫んで

唾を吐いて

地団駄踏んで

ボロボロになって泣くのでしょう。


遺書を捨てたことを後悔するのでしょう。


それでも、もう少し、歩いてみます。

もう少し、もう少し。

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