Enemycircular(エネミーサーキュラー)
Coボレッタ
chapter1 黒き萌芽と執行者
第1話 挨拶(前編)
―なあ、聞いたか?
―ああ、聞いたよ。
―壱原の奴、プレーンなのに社長室に出入りしてるんだってよ。
―ああ、私も聞いた。まだ1年目でしょう?
―そうなんだよ。なんでも、アイツの入社には裏があるって話がな・・・・?
―知ってるー。社長の手招きって話でしょー?
―ああ、それもかなり際どいラインのな・・・・
―えぇー、なにそれー。
―これがバレたら、この会社もお終いだな。
―おい、縁起でもねぇこと言うなって。
―おい、噂をすれば・・・・・
―壱原だ。感づかれる前に逃げようぜ。
「・・・・・・・」
正直なところ、こういう影口は馴れっこだ。気味悪がられるのなんて日常茶飯事。
ぶっちゃけ、覚悟はしていたさ。『こんな形で』入るということはな。
だが、アイツらの話も『間違い』ではない。
社長の手招きなのは事実だ。それは否定しない。
だが、これはオレの『計算内』のことだ。
―オレの名前は
将来は警官を目指している。
そんなオレがいるところが、雛沢総合警備インダクション(通称雛沢総警)。
設立6年になる割と新しめの会社だ。
なんでも、表向きは警備会社で、本当は警官育成施設との噂がそこいらの奴らの間で広まっている。
オレはここで、
当然のこと、世界人口が8割以上が異能力者の世界ではプレーンは稀少な存在。
異能が当たり前の世界で、警備員や警官として働くには、何の役にも立たないプレーンなんてただの荷物でしかない。
さっきのように、煙たがられるなんてのはよくあること。
自衛隊や軍隊じゃあ、プレーンってだけで入隊出来ないのはもはや常識のようなもの。
そんな世界で、プレーンとして所属しているオレが、ここの社長に呼び出しが掛かった。
『壱原琉輝君。大至急社長室に来るように。繰り返す…』
放送が終わった後、そこいら中から、酷い注目を浴びた。
―アイツ、なんかやらかしたんじゃねぇの?
―クビになるんじゃねぇのか?
クスクス…
まあ酷かった。改めて、プレーンがどういう目で見られているのかが分かった気がした。
・・・・・そうこうしてると、もう社長室だ。
一見すると、それこそ威厳たっぷりのおこがましい雰囲気。
尊大な扉を、オレは恐れもせず叩いた。
「・・・・来ましたよ。」
それこそ、そうしているのが恐れ知らずって言われるほど。
しばらくもせずに社長の声が掛かる。
「はいはーい。ささ、入って入ってー?」
そこから聞こえたのは、そんな厳格で尊大な扉とは似合わないほどだらしない声。
オレからすれば、聞きなれたものだが、他の人が聞けば失神するぞ?
「 ・・・緊張感もクソもない腑抜けた声で、よくもまあ堂々と言えるな。」
まあ、そこが
「失礼します。」
そのまま扉を開け、意外と質素・・・てこともない社長室に入る。
派手なインテリアに、最新鋭のテレビモニターに、そこいらに備えられた最新ゲーム機体の数々。
机には見るからに高性能って分かるPC(どうせゲーミングセットだろう)が置いてある。
「・・・・悪かったわねー。緊張感も派手さもクソもなくて。」
―そうだ。この人は心が読めるんだった。
―
実は本職の警官であり、階級は警部補。簡単に言えば、実務の現場責任者。
言ってしまえばパトロールが主な仕事で、こんなことしてる場合じゃない。つか働け。
「ヴァかめ!わたしが出れば、情報収集なぞ一瞬で終わるわ!所謂パトロールの最終兵器なのだ!それに許可なら取ってる!」
―とまあこんな感じで、能力の
「ふっふっふーん。そうだ。お前が何を考えようとも、わたしにはお見通しなのだよ。」
「・・・じゃあ、今、オレが考えてる事も分かりますよね。」
何を誇らしげなんだかとツッコむように、オレはあられもない事を考えた。
「ふっふっふー。当たり前だとも。この
* * * * *
【あっ…】
いつもはうるさい覚吏だが、こういう時だと静かになるな。
【し、仕方ないだろ…まさか、そっちから押し倒してくるなんて…】
【嫌か?】
【い・・・いやじゃないけど…もう少し、優しくしてくれたら…】
【・・・意外と
【う・・・うるせぇ。ばーか。】
お互い一糸まとわぬ姿のまま、オレ達は、お互いの唇を―――
* * * * *
「って、ちょいちょいちょーい!!!待った!タンマ!」
誇らしげな顔から一気に赤面した社長を目に、ああ、勝った!と嬉しくなった。そして―
「どうしたんです?読めぬ心はないんですよね?」
ドヤしく、そしてウザったく、社長に再確認した。煽るように。・・・・というか煽りだ。^^
「えぇーい!そんな
・・・オレは乙女の敵になった覚えはない。
「例えだよ例え!そこんところのユーモアなんていらないからな!」
なんてバカバカしい・・・・社長室でする会話か?これ。
「そうだよ、こんなバカバカしい話するためにお前を呼んだ訳じゃないからな!
あと、お前だって乙女みたいな妄想しやがって!」
・・・・まぁ、それもそうか。
乙女呼ばわりは納得いかないが。
「んで?わざわざオレを
「分かっているだろう。もう
―そうだ。オレがこんなに
「変なルビ振りしたよな。絶対したよな。」
―うるせぇ。少しは自重しろ。
「(´・ω・`)」
何を隠そう。
―オレも
それが、
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