桜の記憶
ふぅ、という吐息をつきながら、緩慢な動作で身体を離す桜。
「ありがと、これでもう普通に動けるよ」
疲れの混じる声で告げると同時に、残っていた右の翼が収縮するように背中の表面へ消えていく。
「……」
軽く触れると、左側に不自然な生傷が残る以外はごく普通の素肌になっており、破れた服だけがそこに翼があった名残を残していた。
「これからどうするの……?」
不安そうなトーンで言いながら、桜はじっと俺を見つめてくる。
「……正直わからねぇ。桜、お前本当に片桐を攻撃できそうにないのか?」
「うん、無理。自分でもよくわからないけど、さっきあの人を攻撃しようとした瞬間、急に身体が動かなくなって真っ白になったの」
「真っ白?」
意味がわからず、俺は訝しげな声音で問い返す。
「うん。どう言えば良いのかな……。あの人に触れようとした瞬間に、その先が無くなったって言うか…」
困ったように言葉を連ねる桜へ、俺も困ったように首を傾げる。
「いや、意味がわからん……」
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