桜の記憶
駅前で発生した猟奇殺人。
あの犯人は、間違いなく狼男だ。
自分の妄想を具現化させ無関係の人を殺しておきながら、わくわくするなどと喜んでいられる神経は理解できない。
「あれは仕方ないよ。理想を実現させるための、必要な犠牲だ」
「なっ……?」
「大体、僕は法律に違反することは何もしていない。僕に罪はないんだ」
その言い方は、あまりにも軽いものだった。
興味のない話に仕方なく答えるかのように、涼しい表情で恐ろしいことを言う。
「お前のせいで人が死んでんだぞ……」
嫌悪を覚えながら、呻く。
「そうなるのかな? でもおかげで、僕のキャラクターが現実の人間に命を奪うほどの影響を与えられることも確かめられた。感謝はするよ。これで、僕の創り出す物語はよりリアルになるんだから」
グラリと視界が揺らめくような心地を味わう。
正面に立つ男は、こちらが覚悟していた以上に普通ではない。
本能的に、そう悟った。
自分の考えたストーリーを現実へ干渉させ、空想をこのリアルで再現する。
簡潔に言えば、片桐が企んでいるのはこういうことになるのだろう。
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