桜の記憶

「うん、それはそうだけどね。でも、だからってここで背中を向けても何にも得られるものがないでしょ? あの人がいったいどんな事を考えてるのかはわからないけど、もう一度会って話を聞いてみないと」


「そんな簡単な話か? あいつはお前に情報を与える代わりに命を奪おうとしてくるかもしんねぇんだぞ?」


 これが一番肝心な部分だ。


 相手が無償で桜に関わる情報を提供してくれるのなら、何ら問題なんてない。


 むしろ、喜ばしいことだと思う。


 しかし、現実はそうはならなかった。


「もし、奴がお前を本気で消すつもりだったら、どうするつもりなんだ? 理由はわからねぇけど、あっちにはお前の能力は通用しないんだぜ?」


「その時は、戦うしかない……のかな。記憶を操作できなくても、まともに勝負したらあたしの方が強いし」


 強張った表情をちょっとだけ緩ませ、桜は胸を張ってみせた。


「いやいや、そりゃお前が強いのは認めるけど、普通に勝てる相手か? 精霊呼び出したり変な能力使ってくるような化け物だぞ」

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