桜の記憶
心当たりがないため、俺は首を横に振る。
「何だよ、変質者でもでたか?」
「そんなショボいもんじゃないよ。殺人事件があったんだよ。仕事帰りのOLがさ、駅の近くで殺されてるのが見つかったって」
「……え?」
殺人事件。
予想に反して飛び出した物騒な単語に、つい表情が固まる。
「それ、地元のニュースでも流れてたぜ。身体中、獣にでも喰い千切られたような状態だったんだろ?」
笹木の言葉を継ぐように、加藤が鼻の頭に皺を寄せながら口を開く。
「らしいね。さっき学校来る時に駅前通ったけど、警察結構集まってたよ」
「マジか。何か恐ぇな」
駅前と言えば、昨日立ち寄った本屋がある辺りだ。
「なぁ、それって犯人とかどうなってるんだ?」
「知るかよ。テレビじゃまだほとんど情報出てなかったからな。少なくとも、犯人がもう捕まってるみたいな話はしてなかったぜ」
「……そうか。自分の住んでる町で殺人起きるなんて、あんまピンとこないな……」
似合わないほど真面目な顔で答えてきた加藤へ小刻みな頷きを返し、俺はクラスを見回す。
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