桜の記憶

 意気揚々とした足取りで部屋のドアを開ける。


 すぐ横にある電気のスイッチを押し、持ってきたコーラを一旦机の上に置いた。


「あっちぃ……。部屋にクーラーくらい付けて欲し――」


 まずは部屋の窓を開けようと顔を上げた俺は、驚きで身を強張らせた。


 俺の部屋には小窓が二つあり、その内の一つが机の正面に設置されている。


 当然だが、今は窓は開いていない。


 外は暗く、部屋の電気によって中の様子が反射されているだけだ。


 自分の姿が映り、その真後ろには見慣れた本棚がいつも通りに鎮座しているのが確認できる。


 できるのだが。


 問題は、その本棚の横にピタリと張り付いているものにあった。


 長い髪をダラリと垂らし、白いワンピースのような服を着た女。


 よくホラー映画なんかで見かける容姿と瓜二つのものが、自分の背後に立っているのがハッキリと確認できた。


「…………」


 姉貴ではない。それは見た目ですぐわかる。


 となれば、これはいったい何者なのか。

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