ユニコーンの角

れなれな(水木レナ)

序・アンタが嫌いだ

「自分、アンタが嫌いだ」



 初めて会った時、エッジはそう言った。


 ハシシのにおいをさせて――それに気づいているのは自分だけだろう――白い肌と青い目で、オリエンタル系の髪をしている。


 オリエンタル系――お兄サマと同じね。香りと目の色は違うけれど。



「アンタ、自分がお嬢様だって、知ってんの!? ――リオ・S・Kお嬢様のニセモノは苦手だ――あー、なんだかどうでもいい」



 エッジは一方的に話を切ると、教室を出、屋上へ向かったようだった。


 なぜ、彼の向かった先が屋上かなんて――わからないの――どうして自分にわかったのか。



「自分は同期の子とは合わないみたいだわ」



 ぽつり、こぼすと双子の兄――お兄サマが優しいほほ笑みでこちらを見返してくれる。


 自分はそれだけで心が浮き立つ。


 オリエンタル系の肌に、バニラの匂いをさせて、茶水晶の瞳で自分をのぞきこんでくる。



「エッジは、リオのことが好きだったから、気がついてしまったんでしょう。大丈夫ですよ」



 そんなことを言っても、面と向かって嫌いだと言われてしまったら、オシマイだとおもうんですけれど……。



「リオはマブいだろォ……。真っ白な肌も髪も、透明感のある声も、かぐわしい香りも」


「オヤオヤ。ネオンは面食いなんですね」



 アング・S・Kお兄サマは人形のように整った顔立ちですから、ある種のコンプレックスをもった人には、良く思われないのです。


 それに、じつは、物騒な人物であることも、自分だけは知っています。






「お嬢様のニセモノなんて、いらないぜ」


「必要なんです。オレには、リオが。いい加減学習してもらいたいですが、エッジはよく働いてくれていますから、大目に見ましょうか」



 自分は屋上の扉向こうに聞き耳を立てます。周波数があまりあってないようです。


 どんな話をしているのでしょう。


 詳しく知りたいですが、今は無理のようです。






「自分だって好きでふりまわされてたわけじゃないのです。ようやくマイペースを取り戻せたのですから、のんびりやらせてもらいます」


「アンタ、なんだって心乱されてるんだよ」


「知らないのですわ、エッジ。もう一人の自分が、さまたげになっていたの」



 まちがっても、お兄サマや他の人のせいじゃない。誰が悪いって……自分です。






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る