第57話 癖の強い使用人の方々

父上達との話しが終わり自室に戻るとドアのノックがあり来たのはダイジンだった。「失礼します」と返事をして入室してきて束の書類を持って来ておりセバスチャンは「今日の用件は私の屋敷の使用人の人選についてだねダイジン」


「はい、旦那様、奥様、ターシャ様からセバスチャン様の屋敷の管理を行う様にと来週から来られるジャスミン殿との共同作業になります」


実は今回の人事に関して不満があり自分の実力なら全ての使用人を回す事が出来る自負があり王妃宮から来る筆頭侍女のジャスミンは邪魔だとあからさまに態度に出ているので父上の所で何を学んでいるのか少し心配だ。でも領地には先代の家令であるモトコ殿が後進の教育の為に教鞭に立たれているので個性の強い使用人が多いがルクレールの為に忠実に働く使用人に育っている


「ダイジン、ジャスミン殿以外の使用人が決まっているのだと思うが詳しく聞かせて貰えるかな?」


「はい、セバスチャン様。今回のセバスチャン様が男爵にならた事と新しく能力のある使用人の囲い込みは必須でしたので、本邸、領地、ケビン様、セバスチャン様に新規の使用人を振り分けました。他の屋敷には十分教育が行き届いた使用人が居ますがセバスチャン様の屋敷には色々考え新規採用の使用人はジャスミン殿を入れて三名で残りは本邸、領地からの移動になります」


セバスチャンは移動のメンバーの名前を聞く「ハウスメイドのラーユー、パーラーメイドのシューリ、コックのジョエル、キッチンメイドのソフィーの四名です」


移動でセバスチャン邸に来る使用人を聞いて一番驚いたのがコックのジョエルである。ジョエルは母上がルクレール家に嫁いで来た時に王城からわざわざ連れて来た

お気に入りのコックであり家令のターシャとは別な意味でルクレール家を支える人物である。確かに後進は育っているがジョエルをセバスチャンの屋敷に移動とは少し考えにくい事であった



他の三名は全員領地でモトコ殿に鍛えられた者達なので心配は要らない。セバスチャンはダイジンに「貴方が考えるのは新しいルクレール家の中でスタッフ間のいざこざが無い様にジャスミンにルクレール家の仕来たり等の最低限の決め事を落とし込んで後は如何にしてスタッフを上手く回すのかを考えるのが大切だと思うよ。この

使用人の人事を見て勘の悪い私でも気付いた位だから父上、母上、ターシャの性格を改めて考えてみて」


「畏まりましたセバスチャン様」


ダイジンは一礼した後、退室する「セバスチャン様は人が変わられた。今回の人事の前、領地から戻って来た時にセバスチャン様を見た時に風格がある大人の人間に

なったと。以前は良くも悪くも貴族のボンボンの雰囲気を醸し出していたが今は、旦那様、奥様にも対等に話せてターシャ様が心配していないのが不思議なんだよな。俺も頑張らないと後から来た人間に追い越されるなんて嫌だからな!」


ブツブツ独り言を言いながらダイジンは持ち場に戻る



部屋に一人になったセバスチャンは今回の人事はただ男爵になり屋敷を持ったのでは無く、近い将来のリン様との結婚を考えての人事だと思う。ジャスミンは王妃宮の筆頭侍女で余程の事がない限り王妃様の傍に仕えている重要な人間である。そんな重要人物を新興の一男爵家のハウスキーパーになど考えられない。いくら結婚するので暇をお願いしているとは言え普通なら有り得ない事なのだ。実際、この程度の活躍で男爵になれるとは考えてもいなかった(コレーロス一派の件があっても)セバスチャンの気持ちは以前、話しをしたがここまで話が進む物なのかと考えてしまう。


「決まった事に対してどうこう言っても無駄だ。如何に成長していくかが今後の課題だから期待を裏切らない様にしていかないとね。まずはダイジンからか・・・・・」


書類を見ながら今後の計画を改めて考えるのであった




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