第46話 王妃様主催競馬③

リン様の一声でセバスチャンは自分が無くしていた自信を取り戻す事が出来たのである。そしてプリンセスリンに跨り厩舎からパドックに向かう。

一緒にサーバインのライアンとグラムのミシェルで一列になって向かうと第一、第二厩舎の馬が周回しており第三厩舎は最後の入場になった。しかし入場と共にどよめきが起きて第三厩舎の馬が他の厩舎の馬と見た目の違いが明らかで引き締まった馬体を見た観客の貴族は「あれが噂の訓練を行った成果なのか筋肉の塊ではないか!」

「美しいですわ。まるで彫刻の石像の様な流れるライン、他の馬が馬なのか疑う位ですわ」「大した事ないさ。あんな物見せかけで走れば直ぐにメッキが剥がれるさ」


賛否両論だが好意的な意見が多くパドックを見た貴族が慌ててブロックメーカーに賭けに行く者もチラホラ見える。しかし見た目では判断出来ない貴族が多数を占めている。

そして周回が終わると同時に賭けの受付が終了する。オッズは三対四対四百九十とパドック前より賭け率が下がったがそれでも第三厩舎が勝つとは思っている貴族は少数なのである


パドックから馬場に向かう途中、第一厩舎のスーパァから「見た目は立派だが走る前に棄権した方がいいのではないか?どうせこれが最後のレースになるのだからなセバスチャン殿」と皮肉を言われるがセバスチャンは「スーパァ殿、私と私の部下達は自信を持って乗っていますのでご心配なく。忠告ありがとうございます」と皮肉

で言葉を返す。その言葉にスーパァは顔が真っ赤になり「フン」とこの場を去る


馬場に出ると歓声が聞こえてきて馬のテンションが少し上がるので同時に入場した二人に「観客から離れて少し走らせる様に。落ち着いたらゆっくりとスタート前に集まってくれ」と伝えると二人は頷き馬を観客から離してゆっくりな速度で走らせていく。半分ほどの距離で馬は落ち着きそこからは歩きながらスタート地点までゆっくり戻る。

「二頭とも落ち着いたな。後はスタートの時に歓声が上がるだろうだからそれでイレ込まなければ勝つ可能性が高くなるな」


キングダム競馬場は一周約二千百メートルでコースの形状は楕円型でスタート地点を過ぎて第一コーナーから上り坂になっており第二コーナーを周り終わると下る様になっている第三コーナーまで直線でコーナーに入ると下り坂になり第四コーナー出口に向かいながら上り坂になり最後の直線は平坦になっている。このコースを三周して

一番先にゴールした馬が勝ち馬になり、着順合計で厩舎順位を決める。


そして石組み造りの王室観戦用の建物に国王陛下一家が揃われるとレース開始のラッパが鳴らされスタート地点にロープを引いて馬を止める。両端を持つ係のどちらがロープを離すのか分からない為、両端に第一、第二厩舎の馬が固まる。逃げるのが見え見えの行動なので敢てセバスチャン達は真ん中に集まりスタートする事を決める。自分たちの馬に自信があるからである


王妃様より「これより王室開催の競馬をスタートします!」とスタートの合図と共に空砲が鳴り観客側のロープが離されるが空砲の音で馬達が驚き第一、第二厩舎の馬達は立ち上がったりしてスタートで後手を踏むが第三厩舎の馬は他の馬より驚く事は無くスタートを切り先頭を走る。馬達はハミを取り掛かるかと思ったが掛からず長手綱で乗れているので心配ない。逆に出遅れた第一、第二厩舎の馬はハミを取り掛かっていく馬が多くそれに遅れないようにと遅れた馬に鞭を入れて手綱をしごいて走らせている騎手の姿を股の間から見てセバスチャンは「勝負はライアン達になるな」と思いながら第一コーナーに入っていく



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