128, 0-73 幕間・双子エルフの観察
・イフリンとディーヌの観察
前回のあらすじ
人さらいみてぇ
前に出るジョニーをスケルトンが囲みます。
心配する双子エルフ――けれどパーティーメンバーである二人は動きません。
ジョニーはスケルトンの攻撃を巧みに
動き回るスケルトンの関節部分に氷の粒を生み出すジョニー。
一つも外れることなく――スケルトンの動きは次第に鈍くなっていきます。
エルフであれば水球や氷弾を放つところですが――普人の魔力量を考え、工夫しているのでしょう。
丁寧なその魔力コントロールに感心しながらディーヌは思います。
(やはり水の精霊・ウンディーヌン様こそ偉大な精霊です)
苦戦していたように見えた戦いも――終わればジョニーは無傷。
「よし、私もやるぞ!」
セリーナが身体強化を使い前に出ます。
ジョニーの魔法を真似るセリーナ――しかし、魔力コントロールは苦手なのか関節部分からずれています。
けれど持っている剣はミスリル製のようでスケルトンを斬り倒しました。
ヘルガは武器すら持たず歩いていきます。
(これは・・・)
ヘルガはスケルトンを素手で殴り倒しました。
魔石を回収する最中――双子エルフがヘルガに尋ねます。
「貴女は銀狼族ですか?」
「ああ、そうだぜ」
「では、貴女がパーティーリーダーなのですか?」
「パーティーリーダー?いや、特に決めてねぇけど・・・、リーダーはジョニーだな」
「貴女のほうが強いのでは?」
「ジョニーは凄いやつだからな~。ま、見てりゃ分かるぜ」
銀狼族のヘルガが一目置くジョニー。
スケルトンを相手に苦戦しているように見えます。
しかし―――。
(すべての攻撃を回避していますね)
双子エルフは攻撃魔法を使いモンスターを倒すので近接戦闘についてはよく判りません。
けれどジョニーの動きは戦いを重ねるごとに洗練されていき――遂には氷粒の魔法を使わずにスケルトンを倒します。
「ジョニー、ダンス」
楽しげな様子でジョニーの動きを目で追うソーニャ。
ダンジョンについて尋ねてきたことやモンスターへの対応能力を見ればパーティーリーダーに相応しいのかもしれません。
そんなジョニーは通路で不思議な魔法を使いました。
「ジョニーさん、今の魔法はなんですか?」
見た事のない魔法言語です。
「魔力波魔法だ」
「魔力波魔法・・・?それはどういう魔法なのですか?」
「隠し通路を見つける魔法だ。・・・音というのは反射するだろう。壁の近くで大声を出せば音は跳ね返ってくる、するとそこに壁があると分かる、イメージはこんな感じだ。この魔法は魔力の波を飛ばして壁の中に空洞があるかどうか判断している」
「普人の国にはそのような魔法が・・・」
「いや、一般的に使われている魔法ではない。俺は斥候の技能が無いからな。宝箱を見つける方法として考えただけだ。なれてくれば人の体の中を見ることも出来、病気の診断にも使える。俺は獣医の真似事をしてイメージを鍛えたが・・・エルフならすぐに使えるだろう」
魔力の波を飛ばすだけというシンプルな魔法――けれどエルフであっても簡単にできるとは思えません。
しっかりとしたイメージを持ち――返ってきた魔力が何にぶつかったのかを感覚で理解しなければならないでしょう。
独自に編み出し――修練を積み――能力を高めたジョニーは素晴らしい魔法の使い手です。
村へ戻り――戦利品をお金に変え――夕食のために食堂へ。
ソーニャはやはりジョニーに食べさせてもらいたいのか――食前の祈りをしていたジョニーの膝に乗ります。
魔法を使い料理の温度を下げソーニャに食べさせるジョニーに双子エルフは尋ねます。
「ジョニーさんはどんな神様を信仰しているのですか?」
「俺はビブリチッタ様を信仰している」
「どのような神様なのですか?」
「知識の神様だ。祈っても何もしてくれない神様だが・・・俺は信仰している」
「お二人は信仰をお持ちですか?」
「アタシは一応、銀狼の神・ウォルバー様を信仰してるかな~。一年に一度ぐらいしか祈らねぇけど」
「私は法と秩序の神・レオルセ様だな。正義の裁きを下した後に心のなかで祈る」
「ソーニャはえのもにょも・・・」
「ソーニャ、口の中に物を入れたまま話してはいけませんよ」
注意を受けたソーニャはコップを両手で取り水を飲みます。
「ソーニャはエニュモルマルファルス様!すごい神様!!」
どうやら皆信仰を持っているようです。
宿で入浴し――寝間着の白いキャミソールに着替え眠ろうとすれば――セリーナが言います。
「ソーニャ、私と一緒に寝よう。明日はもうお別れだからな」
「やーー」
ソーニャはヘルガの後ろに隠れます。
「もう諦めろよ。なんでか知んねぇけど嫌われてんじゃん」
「しかし嫌われる理由はないぞ・・・」
「ジョニー、ポコンってした」
「ポコン?」
「ジョニーの頭、ポコンってした」
どうやらセリーナはジョニーに暴力を振るったようです。
「あ、あれは違うぞ!あれはジョニーが変なことを言ったからだな・・・」
「やーー」
「うう・・・一緒は無理か」
とうとう諦めたセリーナはベッドに一人で入ります。
ビクビクと様子をうかがっていたソーニャも――セリーナが寝息を立て始め安心したのか双子エルフの元へ。
「ジョニーといっしょに寝る」
「けれどジョニーさんはもう寝ているかもしれませんよ」
「ジョニーといっしょ・・・」
床を見つめ悲しげな様子のソーニャ。
明日お別れだというセリーナの言葉で寂しくなってしまったのかもしれません。
「仕方がありませんね、お隣をノックしてみましょう。もう寝ていれば出てこないでしょう。その時は諦めなさい」
「うん・・・」
双子エルフがドアの影から見守る中――隣の部屋をノックするソーニャ。
ジョニーはまだ起きていたようで――ドアが開きます。
「ジョニー、いっしょに寝よ?」
そう言うソーニャを暖かく部屋に迎え入れたジョニー。
(よかったですね)
双子エルフは安心し――眠ることにした。
翌朝―――身だしなみを整えていると、昨日一番早く眠ったセリーナが最後に起きて騒ぎ出します。
「ソ、ソーニャがいないぞ・・・、大変だ!」
部屋を飛び出していくセリーナ。
「ずいぶんと騒がしい人ですね」
「大丈夫でしょうか」
「どうせジョニーの部屋に行って騒いでるだけだろうから・・・大丈夫だろ」
(パーティーリーダーとは大変なのですね)
朝食を食べ――森に入ると――野生のオークに遭遇しました。
「ブヒヒブヒ」
雑魚モンスターです。
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