109, 0-67 幕間・生意気男子の告白
・デュークの告白
前回のあらすじ
魔王ジョニー
「アデラ、お風呂入りなよ」
「・・・・・・」
無言でお風呂に向かうアデラ。
俺たちは今、喧嘩中だ。
昔から変わっていたジョニーはやっぱり普通の奴じゃなくて、凄い奴で、貴族様と決闘して、貴族令嬢と駆け落ちして旅に出たと聞いた。
俺はホッとした。
アデラはジョニーに恋をしていて、俺はジョニーに絶対勝てないって思っていたから、だからジョニーがいなくなったのはいい事だと思った。
でも違った。
アデラは落ち込んで、すぐに元気になると思ったのにずっと落ち込んでいて、俺はなんだかイライラして、4ヶ月たった頃に「もうジョニーは帰ってこないんだ」と言ったら「そんな事ないもん」とアデラが言って、それで気づいたら喧嘩になっていた。
子供の頃は喧嘩をしても次の日には仲直りできたのに、俺とアデラの喧嘩は1ヶ月も続いている。
「・・・デューク、もう別々の部屋に泊まろう」
「えっ?!」
「もう身体強化を使って戦えるようになったし、ダンジョンに入ればお金の心配はしなくていいでしょ。だから別々・・・」
「ま、まだ早いよ。その・・・もう少し様子を見て決めよう!」
「・・・わかった」
不機嫌なアデラはベッドに入って眠ってしまった。
(ど、どうしよう・・・)
俺は、冒険者の相談に乗ってくれるジャイルズさんに話を聞いてもらいたくて酒場に行く。
ジャイルズさんはローブを着てフードを被った人と話していた。
ああいう格好をした人を昔見たことがある。
フードを被った人が帰っていったので、ジャイルズさんに声をかける。
「こ、こんにちはジャイルズさん。今の人はエルフですか?」
「ん?いや、普人だぞ。たまに来るんだ。噂話を集めてるとかいってな。たぶん商人だ。デュークはなにか用か?」
「は、はい。ちょっと相談が」
俺はどうやって仲直りすればいいのかを相談した。
「お前達はもう16になったか?」
「は、はい・・・」
「じゃあ酒だな」
「酒?」
「冒険者が喧嘩して仲直りするなら酒だ。酒を飲んで騒げば仲直りできる」
「でもお酒を飲む理由なんて・・・」
「酒を飲むのに理由なんていらねぇが・・・、仕方ねぇ・・・。お~い、ちょっと来てくれ!」
手を上げたジャイルズさんが大きな声で呼ぶと、大きな盾を持った男の人がやって来た。
「何か用ですか?」
「ああ。こいつともう一人の冒険者をオーガ退治に連れてってくれ」
次の日の朝、俺はアデラを二人の冒険者に紹介する。
「この人がラリーさんで、こっちの人はサンディーさん」
「私はアデラです。よろしくおねがいします」
「ああ、よろしく。じゃあ行くか」
アデラと一緒にオーガを倒してお祝いにお酒を飲む。
それで仲直りをする。
オーガはとても怖いモンスターで、ジョニーも俺たちだけで挑むなと言っていた。
でもしっかりと訓練をして、仲間を見つけてから挑めとも言っていた。
ラリーさんとサンディーさんは二人だけのパーティで、とても強くて、オーガを倒した経験もたくさんあるって話だ。
俺たちは、頼りになる二人とオーガに挑む!!
「お、いたな。じゃあ計画通りにな」
「「はい!」」
背中から剣を抜いて3匹のオーガに一人で向かっていくサンディーさん。
盾を構えたラリーさんの後ろに隠れ、俺たちは2人で買った魔法の袋から石を取り出す。
そしてオーガに向かって投げる。
「グガァ」と怖い顔でこっちを見たオーガが一匹だけ向かってきた。
そのオーガの拳をラリーさんが盾で防ぐ。
オーガの力は魔法を使った普人よる強いらしいけど、ラリーさんはオーガの拳を盾で弾く。
(す、すごい・・・)
「よし、二人ともいい感じだ!もう一匹挑発してくれ」
「は、はい!」
サンディーさんの近くにいるオーガに向かって石を投げると、そのオーガがこっちに向かって来た。
(大丈夫かな・・・?)
二匹もオーガの相手をできるのか心配になったけど、ラリーさんは素早く盾を動かして防いでくれた。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
急に大きな声を出したサンディーさんを見ると、剣を大きく横に振ってオーガの首を斬り飛ばした。
その大声でラリーさんの近くにいたオーガの一匹がサンディーさんの元へ戻る。
サンディーさんはそのオーガに向かって剣を突き出し、オーガのお腹に深く剣が刺さった。
剣を抜き、オーガの首を斬るサンディーさん。
攻撃を防いでいたラリーさんは、残ったオーガに体当りした。
オーガは倒れて、そこにはサンディーさんが剣を構えて待っていた。
「終わりだ―――」
サンディーさんはオーガの首に剣を突き立てた。
ジョニーとは全く違う戦い方だけど、この二人もすごい冒険者だ!
魔石を回収しているとラリーさんが言った。
「いやー助かったよ」
「あの・・・わたし達、役に立ちましたか?」
「ああ。普段は俺一人で石を投げたり盾で床を叩いたりしてオーガの注意を引くからな。ずいぶん楽だったよ」
「それなら良かったです」
(よ、よし・・・言うぞ!)
「お、お祝いしましょう。みんなでお酒を飲もう!!」
「そうだな。初めてオーガを倒したなら、お祝いするのもいいかもな」
ギルドの酒場でお酒を注文する。
(お酒を飲めば仲直りだ・・・)
「よし、じゃあデュークとアデラのオーガ初討伐を祝って、かんぱ~い!」
ラリーさんの言葉で俺は一気にお酒を飲む。
なんだか変な味だけど、がんばろう。
「お、おかわりください!」
俺はアデラと仲直りしたくて・・・。
何度もお酒を注文して・・・。
何度も飲んで・・・。
でもなんだか頭がクラクラして・・・。
気づいたらアデラに腕を掴まれていた・・・。
「デューク歩いて・・・」
「お、俺は・・・俺はアデラと仲直りしたいんだ」
「・・・・・・」
「デューク部屋についたよ」
「俺のほうがずっと、ずっとアデラを好きなんだ・・・。ずっとずっと好きだったんだ・・・。ジョニーよりずっと・・・俺のほうがずっと―――」
「チュンチュンチュン」
鳥の鳴き声が聞こえる。
なんだか頭がすごく痛い。
(俺は確か・・・。昨日はオーガを倒して・・・。それでお酒を飲んで・・・)
そこからはよく覚えていないけど、目を開けるといつもの見慣れた天井があった。
(どうやって宿に帰ってきたんだろう・・・)
昨日何があったのか思い出そうとすると、シーツがもぞもぞと動いた。
(な、なんだ?!)
俺はシーツをめくる。
そこには服を着ていない裸のアデラが寝ていた。
「ア、アデラ!?」
俺の声で目を覚ましたアデラは、シーツを使って体を隠す。
「デューク、おはよう・・・」
そう言って笑うアデラはとても綺麗で・・・。
昨日までは喧嘩していたはずなのに・・・。
(そうか・・・、きっとこれが・・・)
俺は、大人の仲直りの本当の意味を知った―――。
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