049, 3-03 戦う行商人
前回のあらすじ
貧乳はバッドステータスだ
依頼票を持って盾ファットの元に戻る。
俺は異世界転生者、この世界の人間とは価値観が違う。
冒険者ギルドのよくわからないやり取りに、ちょっとテンションが下がる。
だから俺は走り、冒険者ギルドを出る時に、拳を掲げて叫ぶ。
「ゴブリンだ!ゴブリン退治だ!!」
初の冒険だ。テンションを上げていこう。
勢いよく冒険者ギルドを飛び出す俺!
冒険者ギルドの前で盾ファット達を待つ俺・・・。
少しして出てきた盾ファット達と一緒に、街を出るため歩く。
冒険者ギルドの近くは宿や露店、武器屋など冒険者が利用しそうな店が集まっている。
結構活気があるので特に話はせず、黙々と歩く。
カナリッジの街は、南と北に街門があり、西から東に川が流れている。川には当然、橋が架かっている。
孤児院は南側、開拓村も南方面で、俺は南門から街に入った。
冒険者ギルドは北側、ダンジョン方面だ。北西にダンジョン、北東に領都ヘブリッジがある。
街門の近くには辻馬車が待機しており、移動は基本これに乗る。
ダンジョンへ行く馬車や、他の街へ行く馬車などがある。
モンスターがいる危険な世界だが、人の行き来はあり、常に誰かしら出入りしている。
行商人なんかも、基本は馬車に乗る。
馬車の客として各地を移動し、商売を続けて信頼を積み重ねると、馬車を貸し出してもらえる。辻馬車の御者は、ほとんどが行商人だ。
馬車の操縦や客の選び方など、講習を受ける。講習後、御者証をもらえる。運転免許みたいなもんだろう。
馬車はあくまで貸し出しであり、個人所有の行商人など滅多にいない。
馬を所有するのは、土地や餌代など必要で維持費が大変だ。かなりの税金を収めると、個人所有も認められる。
客選びは、戦える客を必ず乗せて出発する。誰も戦えないと、モンスターに遭遇したら皆殺しにされる。
人の行き来が少ない場所だと護衛を雇ったりする。
行商人の中には、戦い方を覚えて冒険者登録をしている者もいる。
食糧支援のハゲオヤジは、護衛を引き連れ、馬に乗って、頭をキラリと光らせ、
開拓村の物資を全て一つの袋に入れていたし、相当な金持ちだったんだろう。
多くの行商人は開店資金が貯まると行商を辞めるのだが、店を開かず行商を続ける者もいる。
壁に囲まれた街・・・、多くの人々は壁に安心感を覚えるそうだが、閉塞感を覚える者もいる。
デカイ壁がいつも見えるから、俺もなんか、息苦しく感じる。
そういう人間が、冒険者や行商人になる。
冒険者よりも金を稼げるし、いろんな街や村へ行けるしで、街の外に出るなら行商人のほうが人気だが、文字の読み書きが出来る者は少ない。
俺の独自調査では、この街の人間は10人に3人ぐらいしか文字の読み書きが出来なかった。自分の名前は書ける、単語はわかるが、文章は読めない、という人も含めると8人ぐらいになる。
貨幣経済は浸透しているので、簡単な計算は皆出来る。商人になるなら、値の大きな四則演算ぐらい出来ないと駄目だ。
前世、江戸時代の識字率は世界一だった!とか、幕末当時は7割~9割だった!なんて話を聞いたことがあるので、それと比べると識字率は低い。学校がないから仕方ない。
教育は基本的に家族が担う。託児所など無いのでご近所同士で子供を預け合い、読み書き出来る人が教える、という場合もある。人妻信徒たちはそうしていた。
商会とかだと、従業員が商会の子供を集めて、という事もやっているらしい。
ビブリチッタ様の教会へ行けば誰でも教えてもらえるんだがな。残念ながら、ビブリチッタ様は人気がないのだ・・・。
そして、学校がないという事は学生服を着た女学生はいないという事であり、非常に残念である!!
金を稼げて旅も出来るし「行商人パターンもありか?」と思って本を読んでみたが、大変そうだったのでやめた。
『戦う行商人の俺がハーレムを築くまで』という本に書かれていた。
軽い感じの本かと思って読んだのだが、勉強から準備金の用意、街々の情報収集に、日々のやり繰り、立ちふさがる利権、女の子たちへの貢物、一人一人への丁寧な気配り、喧嘩の仲裁、夜のお相手と、かなりの苦労話だった。
簿記みたいなものも覚える必要がある。面倒くさい。
最後のほうは女の子たちに貢がせて、売れっ子ホストの業務日誌、みたいになっていた。
匿名の自叙伝だったのだが、商会立ち上げの段階で中途半端に終った。まさか、刺されたのか・・・?
ハーレムは、無理だな。
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