異世界転生俺TUEEE~女難の冒険者~
頭のおかしな神
プロローグ 女難の始まり
001, 0-01 小さな幸せ
今日はいい日だ。
いつもと同じ道、同じ景色なのに世界が輝いて見える。
これが幸せというものか。
冒険者ギルドに着くと、若い女が強面の冒険者に絡まれていた。
若い女は金髪のポニーテール、革鎧を着て剣を腰に
身なりからすれば依頼人ではないだろう。となると冒険者だ。
あれ程の美人なら一度見れば印象に残っているはず、だが記憶にない。
革鎧も新しいことから流れの冒険者ではなく新人だ。
どうすべきか。今日はいい日だ。神様が俺を祝福してくれている。
しかし、こういう出会いイベントは求めていない。
なぜなら俺は、人付き合いが上手くない。
俺が悪いのではない。ただちょっと、この世界の人間と価値観がずれているだけだ。前世では普通に友達もいた。
しかし見て見ぬ振りは寝覚めが悪い。
そもそも冒険者というのは荒事を生業にしてる連中だ。
そんな連中がたむろする冒険者ギルドには酒場もある。酒を飲めばタガが外れ喧嘩も起こるし、美人の新人冒険者など絡んでください、といっているようなものである。
じゃあなぜギルドに酒場などあるのかと言うと、冒険を終えたあとは命をかけた高揚感で酒を飲みたくなるからだ。
仮に冒険者ギルドに酒場がなくとも、近くの酒場へ行くことだろう。それならギルドに酒場を作れば、その売上はギルドに入ってくる。
冒険者が命をかけ、稼いだ金をその場で巻き上げる。前世のブラック企業も真っ青である。
どうしようかと悩んでいると、俺が手を貸すまでもなくポニテ女が強面の男達を殴り倒した。
なかなかの力量だ。とても新人とは思えない身のこなし。革鎧を新調した、流れの冒険者だったのかもしれない。
俺が感心していると後ろから「よくもアニキをー」と叫びながらチンピラ風の若い男がポニテ女に向かっていった。
当然アニキとやらより強いわけもなく、見事なカウンターパンチをくらいあっさりやられた。
どうやらイベントは終わったらしい。助けに入らなくてよかった。
俺は自分自身の危機回避スキルに感心する。さすが異世界転生者、俺スゲェ!である。
俺が気分よく冒険者ギルドに入ると「む、まだいたのかチンピラめ」とポニテ女がつぶやき、いきなり殴りかかってきた。
ちゃんと回避したはずのイベントに巻き込まれた。
俺は悪くない。ポニテ女がイカれているだけだ。
冒険者ギルドに冒険者である俺が立ち入っただけである。アニキーと叫んでポニテ女に向かって行ったわけではないのだ。
完全に誤解だが、ポニテ女のフットワークは軽く、次々と拳を打ち出してくる。誤解を解く暇はない。
俺はその拳を避ける、避ける、避ける、避ける。さすが異世界転生者、俺強えぇ!である。しかし俺の足元に酒瓶が。
俺は転びそうになるもなんとか堪える。そこへポニテ女の拳が迫ってくる。これは避けられないと体重を後ろに逃がすもぶん殴られる俺。
「これに懲りたら女だからと侮らないことだ」とポニテ女はドヤ顔でほざいている。
俺は沸々と煮えたぎる怒りの感情を抑えながらシュバッと立ち上がる。
「まさか、今の拳を受けて立ち上がるとは・・・」
ポニテ女は驚いている。だがポニテ女の評価など、どうでもいい。俺は言わねばならない。
「朝起きて、小鳥が鳴いたよ、チュンチュンチュン」
静まり返る冒険者ギルド。ポニテ女はキョトンとしている。驚いているのだろう。だがまだだ、まだ終わらない。
「朝食の、卵を割ったら黄身2つ、うれしいな」
そこからはまるで吟遊詩人の調べのように朗々と語って聞かせる。
朝目覚めてから冒険者ギルドに来るまでの様々な幸せを。
そして徐々に勢いをつけて、ポニテ女が登場してからは力強く、声を大きくしていく。
殴りかかってくるポニテ女!しかし、フェミニストである俺は女を殴れない。仕方なく回避に徹するが、卑怯にも酒瓶を使って俺を転ばせようとするポニテ女!!
今日はいい日だと思ったのに、なぜこんな仕打ちを受けるのか。
俺は小節を利かせて吠える!!!
「今日は俺の誕生日いぃいぃぃ。16歳の誕生日いぃいぃぃぃ」
ただの誕生日ではない。16歳というのはこの国の成人年齢、酒も飲めれば娼館にも行けるようになる特別な誕生日だ。
俺はどこぞの逆転検事ばりに、指をびしっと突き指し宣言する。
「謝罪と賠償を要求する!!」
冒険者たちの拍手喝采が聞こえる。
「いいぞーもっとやれーー」
この酔っぱらい共め・・・。
受付嬢の黄色い声が聞こえる。
「まじウケるし。超ウケるし」
コネ採用のギャルめ・・・。
ポニテ女は悲しそうな顔をしている。あれは、反省している顔ではない。
おそらく俺を哀れんでいるのだろう。
どいつもこいつもふざけやがって・・・。
今日は16歳の誕生日。朝起きてからいいことが続いたので、てっきりダンジョンにでも行けば宝箱でも見つけて小金を稼ぎ、娼館で童貞卒業できると思ったのに。
一体どうしてこうなった!
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