284,戦場へ赴く者ども

 12月30日、きょう、私は初めてのアレに参加する。東京の臨海副都心にある展示場で開催される、オタクの一大イベント。そう、アレだ。これ以上は言うまい。


 引率はイベント参加の大先輩、つぐみちゃん。朝の茅ケ崎駅で待ち合わせ。北口でバスを降りた私はペデストリアンデッキへ続くエスカレーターに乗り、先輩との待ち合わせ場所である改札口前へ向かっている。


 遠足は行く前がいちばん楽しいというが、そうかもしれん。


「おはよう巡ちゃん。きょうはよろしくね」


「よろしくお願いします先輩! ビシッ!」


 敬礼!


「遅くなり申し訳ございません!」


 私が改札口前に着くと、つぐみちゃんは既にコンビニ脇の壁を背に、スマホを見ながら立っていた。戦略を練っているのだろう。


「電車の時間までまだ少しあるから大丈夫だよ。カードのチャージは済ませてある?」


「オートチャージであります!」


「うむっ、よろしい」


 いつになく乗り気なつぐみちゃん。表情も仕草もいきいきとしている。


 乗車直前に切符を買う、チャージをする。乗り遅れのリスク! 故に私は交通系ICカードとクレジットカードを連携させてオートチャージ設定! 都会人らしさが身に付いてきた! つぐみちゃんもそうしているらしい……! ついでにいつものみんなも。


「電車はどれに乗るでありますか!」


「9時15分発の特別快速だよ」


 そう、始発組も多い中、意外とのんびりな出発である。


「特別、快速!」


 すごい速そう!


「なんか、電車待ってるだけでバクバクする」


 晴れ渡る澄んだ空、カーブの向こうから現れた15両編成の電車。


「ふふ、楽しみだよね」


 やがて特別快速、到着! 乗車!


「わっ、広告が学〇ス!」


「ほんとだ。高まるね」


 2号車のいちばん藤沢寄りのドアから乗車、車端の3人席エリアとドアを隔て、ボックス席の手前にある2人席のエリアが某アイドルゲームの広告でテンション爆上がり! 3パターン掲出で、それぞれ2人組のキャラクターがどアップで写っていて可愛い!


 空いていた2人席に座る。電車が出発。隣の辻堂駅は通過して、次は藤沢駅。大船おおふな、戸塚、横浜、武蔵小杉の順に、いくつかの駅を通過して順調に進んで行った。


「めっちゃ速っ!」


 足元で唸るモーター、同一方向へ同時にゆっさゆっさ揺れる吊り手。磐越西ばんえつさい線の快速とは比べものにならない速さ。ここまでの区間もけっこう速かったけど、一段と速い。


「新幹線と並ぶ区間はすごく速いんだよね」


 なんて話をしていると


「新幹線に追い抜かれた!」


 こっちは唸ってるのに! 自転車で全速力で走ってもクルマにあっさり抜かれるあの感覚!


 そんなこんなで大崎駅に到着。都内の駅の割には静か。付近に高層ビルが少なく、白を基調とした開放的な駅。


「次は東京臨海高速鉄道りんかい線ですね! 先輩」


「うん、東京臨海高速鉄道りんかい線だよ」


「東京臨海高速鉄道りんかい線、名前からして速そう。新幹線みたいな電車なのかな」


 と思ったら普通の電車だった。


 まもなく次の大井町駅に到着。物凄い数の人が見える。ドアが開くと彼奴らが一気になだれ込んできた。始まった。戦いは電車の中から始まっているんだ……!


 異様な客層の満員電車な地下を颯爽と走り抜けた。いつしか乗った地下鉄と比べると段違いのスピードだった。


 そしていよいよ到着。国際展示場駅!

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