63,ジャスティスワールドの神!

「結局あれって、なんだったの?」


「ジャスティスワールドの神への誘いじゃない?」


 と言いつつ、自分でも何を言っているのかわからない。


「いまそれ持ってる?」


 カメが言った。カメは顔が広いから、筆跡で誰が書いたかわかるかも。私はポケットから手紙を取り出して、カメに手渡した。


「ああ、この字はまみ子だな」


「まみちゃん?」


 なんとなくそんな気がしていたから、驚かなかった。


 カメとまみちゃんは小中学校の同級生。ふたりとも教室の机に手を置いて指の間にナイフを突き刺す遊びをしていたらしい。危険人物。


「あぁ、間違いねぇ」


「言われてみれば、そうかも……?」


 私もまみちゃんの字はよく目にするけど、クラスメイトのほとんどはクッソ汚ない字を書く軸ブレブレのしょうもないヤツだから、見分けがつかなかった。


 まみちゃんは肝が据わってるけど、字はマジでクソ。なんで現国教諭になれたんだか。字は読ませるためにあるのに読めないし『シ』と『ツ』とか『ソ』と『ン』とか、ちゃんと書き分けできていない。


 翌々日、月曜日の昼休み、私はまみちゃんを屋上に呼び出した。浜昼顔が咲く季節の空気は少し霞んで、正午の海は明るくも、どこかおぼろげにきらめいている。


「なんだバレちまったか」


 言ってまみちゃんは、タマゴサンドをかじった。私はベーコンレタストマトサンドを頬張っている。


「匿名の手紙なんて回りくどいことやらないで、直接言えばいいのに」


「それじゃ面白味がない。差出人が誰だか気になって、夜も眠れなくなっただろ?」


「ううん、なんとなく気にしてはいたけど特に暮らしに支障はなかった」


「チェッ、バカのくせしてつまんねぇな」


「典型的なバカのヘソの曲げかただね。侮辱罪で訴えちゃうよ」


「お前もな」

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