第2話「なんだけどその時は気がつかない」
「おはよー。って、まだ誰もいないか。」
7:30。株式会社vivid、マテリシステム行使部。彼は部長である呉崎。いつも誰よりも早く出社し、部屋の掃除、換気、コーヒーマシンのセッティング、等を行う。
「おはようございまーす」
8:38。次第に他の社員たちも出社してくる。
「あ、部長!すいません!雑用やってもらって!」
「ああ、良いんだよ。部長はやりたくてやってるんだから」
「はぁ。」
彼らは坂間和義と野木勇紀。坂間は勤続10年目、野木は5年目だが先月この部署に異動になったばかりだ。
「でも、部長ってなんで雑用やりたがるんですか?」
「年寄りだから早起きなだけだよ」
「年寄りって言っても、まだ50手前じゃないですか!」
「年寄りだよ。だから、アイツらを選んだんだ。」
呉崎がまだ来ていない社員の机を見つめる。
8:40。連絡が入る。
「風切地区にスレート出現通報!マテリ出動!」
「了解。坂間、周辺の警察、消防に連絡と避難ルートの計算。野木は木沢と白井のサポート」
「了解。」
同時刻。路地裏。
「まだ朝だけどやるんですか?」
「スレートは待ってくれないからね。はい、これ」
彼らの手にはベルトがあった。
8:50。比呂哉達の戦闘が終わった頃。マテリシステム行使部のドアが叩き壊され、男二人が侵入してきた。男達は行使部の社員たちに拳銃を突きつけながら言った。
「なんだかよく分からないかもしれないけど、こっちの仕事なんだよね。」
呉崎は一方の男の拳銃を蹴り上げ、奪い、男に突きつけた。しかし男は動じることなく、そのまま呉崎のコンピュータを操作し始めた。呉崎が男に銃を突きつけながら言う。
「何が目的だ?」
「まあまあ。えーっと、あ、これか。」
「それは!」
呉崎が慌てたように男の右足を撃とうとすると、もう一人の男が飛んできて呉崎の腹を殴った。呉崎は腹をおさえながらも、もう一人の男に立ち向かうが、全く歯が立たない。
その間に、男は行使部のコンピュータにUSBを差し込み、データを盗み取った。
「じゃあ、ということで。」
そう言うと男達は立ち去っていった。
「こちら呉崎。男二人が侵入。プロセスゲートシステムのデータを奪われました。」
9:12。路地裏。
「データは?」
男がUSBを誰かに渡す。
「もう、勘弁してください。これでもう、」
「ダメダメ。君はこれからダークヒーローになってもらうんだから。はい、これがアイテムね。」
誰かが男にベルトを渡す。
「いいよねー、ダークヒーロー。そのうち改心して本当のヒーローになっちゃったりして。」
もう一方の男が誰かに言う。
「あの、僕は?」
「君?んー、そうだなー。まぁ、これからってところかなー。群像劇はどうなるのか分からないのが魅力だから。で、どう?そのスーツ?」
「、、、、、、、」
「無視?まあいいや。じゃあ君ね、彼と会ったら後の会話は僕の指示通りにね?」
「、、、分かりました。」
男がベルトを握りしめ言った。
9:31。vivid本部ビル近く。男が比呂哉達と対面する。男が着けてるイヤモニから声が聞こえる。
「会ったね。じゃあ、まずは変身!」
指示を聞いて男が小さなシャッターのようなものが装填されたベルトを装着し、呟く。
「変身」
再びイヤモニから指示が。
「それじゃあ、次のセリフはー、、、君も変身しなよ。ってどう?うわ!かっこいいー!」
「君も変身しなよ。」
vivid本部ビル近く。比呂哉は謎の男に促されてベルトを取り出し、言った。「これと、同じ?」
男がイヤモニの指示通り喋り出す。「そう。同じ。そんで、君の敵。」
男は比呂哉に向かって走り出すと、比呂哉もとっさにベルトを装着し、変身した。
「白井、行使部の人達を見てきて。」
「了解。」
白井が本部ビルに入っていく。
男のパンチが比呂哉の顔面に炸裂。そのまま比呂哉の腹にキックを食らわせ、立て続けに膝蹴り。吹っ飛ぶ比呂哉。ゆっくりと近づいてくる男。その時、比呂哉はとっさにベルトの中の小さなドアを別のものに入れ替えた。立ち上がった比呂哉の体の右半分は銀色に変わっていた。そして比呂哉はベルトのボタンを押した。ベルトから大きな岩のようなものが現れた。それは細かくなり、比呂哉の右足に集まっていく。比呂哉はその肥大した右足で男にキックを食らわせた。
男のイヤモニから声がする。
「もういいや。戻って。」
男がその場を立ち去ると、比呂哉はその場で倒れてしまった。
次回予告
vivid本社ビル。各ゲート最低5人体制の警備に、最新鋭指紋、網膜認証搭載。緊急時には細かく区切られたシャッターを閉じる事もできる、防犯の面から見ればオフィスビル最強。
次回「ちょっと待った 何がしたいんだ」
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