10年ごしの引きニートを辞めて外出したら自宅ごと異世界に転移してた

坂東太郎

『プロローグ』

『プロローグ』

 人はあっけなく死ぬものだ。


 そんなことはわかっていた。


 それでも、衝撃だった。


 父と母が死んだのだという。


 交通事故だったと。


 ふたりが外に出る前、最後に交わした言葉はなんだったか。


 病院にも葬式にも行ったらしいが、いまいち覚えていない。


 いや、覚えているんだけれども、靄がかかったように曖昧で。


 3年ぶりに妹にも会ったはずなのに、いまいち覚えていない。


 そういえば、家の外に出たのは10年ぶりだったはずだ。


 10年ぶりの外出だったのに、あまり覚えていないというのももったいない気がする。


 あっさり出られたのは、父と母からの最後の贈り物なのかもしれない。


 引き換えがふたりの命なら、特にうれしくはないけれども。


 外に出よう。


 10年、引きこもりのニートだった俺に、温かく接してくれた父と母。


 このまま引きこもりを続けたら、ふたりの死が無駄になった気がするから。


 外に出よう。


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