第15話 Chiba

僕のLowrider は非常にコンディションが良かったが、それでもいくつか気になるところがあった。ハンドルとトップブリッジを接続するハンドルマウントのブッシュがヘタっていて、ハンドルがぐらぐらすること。セルの回りが悪く始動性がいまいち良くないこと。タイヤの山は充分残っているが大分古くてカチカチだったこと、等。


売った店としては、許容範囲で交換不要という判断だったのだろう。まあ、それは良いとして別料金で整備を頼もうとしたが、売れたHarleyの納車整備で忙しいのか、いまいち店の方はやる気がなかった。メカニックも専門学校を出たばかりのような若いコばかりで、今後のことを考えるともっとHarleyの整備に強い店に頼んだ方がいいと判断して、僕は別の店を探し始めた。


何軒か訪ねたり、電話をしたりしてみたが、どうもぴんと来なかった僕は少し足を伸ばして探すことにした。それで、ある日千葉市の外れにある店を訪ねた。


その店は、店長とメカニックの二人でやっていた。僕がLowrider の気になるところを説明すると、


「良ければ今すぐやりますよ。」と言われた。


ハンドルマウントのブッシュもバッテリーもあると言う。Shovelhead はもう旧車なので、こういう劣化していることが多い部品はある程度在庫しているということだった。


今まで訪ねた店は、注文を受けたら取り寄せますというところばかりで、それは当たり前の話ではあるのだが、この手の部品はHarley Davidson Japan からではなく、海外から直接取り寄せる店がほとんどだった。当時は現在と違って海外から品物を取り寄せるのは時間がかかった。


結局、お願いして、その場でハンドルマウントブッシュの交換とバッテリー、エンジンオイルの交換をしてもらった。帰りはすっかり暗くなってしまったが、ハンドルのぐらつきはなくなり、ちょっとハイグレードなオイルを入れたせいかエンジンの回りも滑らかになった。聞いたことのないメーカーのバッテリーからユアサの新品に替わって、セルの回りも良くなった。


余談だが、Harley のピストンは大きく重いのでバッテリーへの負荷が大きく起動電力の高い純正のバッテリーの使用が推奨される。純正のバッテリーだとマルチシリンダーのエンジンみたいにセルが軽く回ってエンジンがかかるのだ。高価ではあるが、それだけの価値はあると思う。


この店は良さそうだ。そう判断した僕は翌月今度はタイヤを交換してもらった。そうして僕とこの千葉の店との付き合いが始まった。



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