第31話 恐れていた出来事2
風雲急を告げる事態は龍国の中心地で
中心地は大御柱を中心に神々が成龍状態で全員が羽ばたいても余裕のある広さだ。
その大御柱の側にスプレムスの変身した姿で過ごしている建物がある。
スプレムスがタダならぬ気配を察して建物の外に飛び出した時にはテネブリスが大門を開けて中に入って来た所だった。
どれだけ遠くにいても発散する魔素で誰なのか理解している創造主だ。
「お母様ぁぁぁ!!」
叫びながら成龍体に戻って行くテネブリス。
その悲痛な叫びを感じ取ったスプレムスも成龍体に戻った。
二体の神龍がガッツリとぶつかった衝撃よりも、テネブリスの咆哮が龍国内に響き渡った。
アルブマとベルムにセプティモとセプテム、スペロが決死の覚悟で創造主たる大神の元へ続く大門を抜けて目に入って来た光景は、二体の巨大な龍が寄り添っている光景だった。
子が母に寄り添うように、泣きながら咆哮を発していた。
母は子を諭す様に翼で身体を覆っていた。
「これは・・・」
「どうなっているのかしら・・・」
「解んないよねぇ」
「最悪の事態は免れたのか・・・?」
「姉ちゃん、泣いてるの?」
その光景と咆哮は終わる事が無かった。
その場にはアルブマを残し、事態の収集を治める為に戻って行った妹弟達だ。
それぞれが持ち場に戻った時、慌てふためいて散らかした惨状を目の当たりにし、緊急事態の重要性が議題に上り、後日あの騒動が初めての避難訓練だと苦しい言い訳じみた説明を国内に説明した龍族達だった。
その後、あわや大惨事と成りえた出来事から生まれた避難訓練が定期的に行われる事となる。
テネブリスの咆哮は終わる事が無かった。
アルブマはずっとその場に留まり姉を待っている。
流石に心配をして見に来るセプティモとセプテムにスペロだ。
ベルムは定期的に顔を出し様子を伺っていた。
だが、スプレムスから心配無いと諭されて、今は時だけが悲しみを癒してくれると説明されたからだ。
悲しみの咆哮と涙は数年続いた。
そしてそれらが無くなった後も母に寄り添う子供の様に大人しくなっていたテネブリス。
成龍となったアルブマが近づいてテネブリスに寄り添う。
(お姉様・・・)
(ごめんね、アルブマ。心配かけちゃって。お母様もありがとう)
(もう良いの? )
(うん、決心したよ)
(そう。貴女が何を悩んで悲しみ、何を考えて決心したのかは解らないけど、教えてくれるのでしょ?)
(勿論よ、お母様)
(お姉様・・・)
(大丈夫だよ、アルブマ。もう同じ心配はさせないから)
念話で会話する三体の龍達。
二足歩行型に戻り母と妹と三体で休む事にしたテネブリスだ。
スプレムスが普段過ごす建物の中で。
「お姉様、本当に大丈夫なの?」
「ええ、お母様の横で泣き喚いたから随分とスッキリしたわ」
「貴女があんなに
そうそうと、未だに心配そうなアルブマだ。
「もう、忘れて頂戴アルブマァ」
「お姉様の泣き顔はずっと忘れないわよ」
クスクスと笑うスプレムス。
「所でお姉様、決心が付いたと言われたけど、どういう事なの?」
「それは私も聞きたいわねぇ」
母娘で質問攻めだ。
「もう説明するって言ったでしょう。だけど・・・私達龍族に全員集まってもらうわ。全員に聞いて欲しい事なの」
「解かったわ。待っていれば良いのね」
「ええ」
「お姉様・・・」
「アルブマ、お願いがあるの」
「なんでも・・・何でも言ってください」
「私が皆に話す場を
「そんなの、直ぐに用意するわ」
「待ってアルブマ。皆には怖い思いをさせてしまったから・・・」
「大丈夫よ、お姉様」
「そうよ、テネブリス。もう決心したのでしょ」
「ええ、決心は出来ているわ」
(流した涙と共に心に誓ったわ・・・必ず・・・)
Epílogo
何を決心したのやら。
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