第36話 少女転生
その頃、下界では・・・
「ではラソン、手はず通りに」
「ええ、任せて頂戴」
テネブリスの前世である少女は、家族の手伝いをしているが最近は昼前に子供を母に預けて1人で山へ行き、魔法の練習をするのが日課のようだった。
テネブリスの計画に賛同したアルブマが協力して、この日の為に様々な準備用意されていた。
フィドキアとラソンは下界での保護監視と共に、互いの神の指令に忠実に動いていた。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
「さーてと、今日は
少女が山中で1人練習していると異変が起こった。
「ふぁぁぁぁっ。今日は眠いなぁ、昨日夜更かしして魔導書を読んでたからかなぁ。少し休もうっと」
少女が休憩していると次第に頭が垂れて行き結局は寝てしまった。
横たわり爆睡中の少女の後ろに立つ人影が有った。
(お許しを・・・)
その男は少女を抱えると、フッと消えてしまったのだった。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
「ラソン、後は頼む」
そう言うと、熟睡する少女を渡しラソンが受け取った。
「任せて、じゃ行って来るわ」
「うむ」
少女を抱えたまま転移するラソンだった。
※Cerounodostrescuatrocincoseissieteochonuevediez
龍国内には研究施設が沢山存在する。
大きく分けると魔法、道具、生体だ。
神々の系譜に別れた属性別の研究や、魔導具に魔導機械、属性混合研究、生体研究に、それぞれの龍族が極秘に行っている研究施設も存在する。
その中の1つで、属性混合研究に当てはまる施設にラソンは転移してきた。
「準備は良いですか!?」
「はい、全て整っております」
「では予定通りにお願いします」
ここはテネブリスとアルブマが極秘に作った施設で、属性混合による生体研究と魔法陣による転生研究に魔導具など全ての研究を総合させた場所だった。
当初は転生魔法陣の研究だったが、実験の成功が確認された後、生体実験を下界で行ない転生後の細部を任意に設定する研究が行なわれていた。
そこに、更なる要素として生体研究が追加されたのだ。
生体研究は過去において他の研究施設が行なった資料を基に、特定個体の改造と進化の準備が進められており、ラソンが持ち込んだ”特定個体”の為の施設だ。
「慎重に扱え!! 魔法で眠っているだけだからな!!」
「では、まずは複製体を作成する」
衣服を脱がされて台に横になる少女に魔法陣が輝いた。
一度、二度、三度・・・
全く同じ姿の少女が魔法で作られて横に並んでいる。
複製された少女は横型の透明な容器に入れられて、施設の奥へと運ばれていった。
「では元の衣服を」
連れてこられた時と同じようにラソンに抱きかかえられ転移室に向う。
「では皆さん、後の事は神々の指示通りに」
数人の僕達研究員がラソンと少女を見送った。
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「フィドキア、戻ったわ」
「うむ、どうだった?」
「全て順調よ」
「良し、では元に戻して来よう」
再度フィドキアに抱きかかえられ転移する。
先程まで居た森の中に優しく少女を降ろし、離れていくフィドキアだ。
姿が見えなくなって覚醒の魔法を使った。
ゆっくりと瞳が開く少女。
「あれ? 寝ちゃったの? いっけなぁい、もう日が高いわ。戻らなきぁ」
ほんの束の間だか下界では神と呼ばれていた者達によって自分の複製体が作られたなどとは夢にも思わない少女だった。
一方でフィドキアとラソンは・・・
「ふぅ、終わったぁ・・・」
「うむ、特に問題は無かったようだな」
「そうだけど・・・まだ手が震えてるわ」
「まぁな、致し方無いだろう」
「貴男はそう言うけど、神に成られる前のお体なのよぉ! 何か有ってはすまないわ、何で私が・・・」
「だが、全て終わったのだろう」
「まぁね」
「だったら良いではないか」
憤慨するラソンをなだめるフィドキアだった。
「ねぇフィドキア、あのエルフの女はあのままで良かったのかしら・・・」
「手を出すなとの
「でもぉエルフよ、私の眷族なんですけど・・・」
「だとすればアルブマ様が何とかされるだろう」
「そうよねぇ、私が出しゃばらなくとも神様同士が何とかするわよねぇ」
それは、いつもと変わらない穏やかな日だった。
家族はそれぞれの役割の仕事を担当しているので別行動だ。
父は畑仕事、母は川に洗濯、叔母は子供をあやし、少女本人は日課の魔法訓練で山へと来ていた。
まだ日が昇り切る前に異変があった。
森の中にポツンと木々が無い空間が有る。
そこで練習をしていたのだが、森からの人影が少女に向っていた。
現われたのは三人の男達であろう姿で、少女は警戒し逃げようとした。
即座に男達は頭を覆っていたフードを取り呼びかけた。
「・・ヴィさん!! ・・ヴィさんですね? 探しましたよ」
両親と叔母から聞いていた金髪碧眼のエルフと呼ばれる種族だ。
大好きなお兄ちゃんがエルフの王宮に仕事に行っている事も知っている。
そんな”初めて見る”エルフに自分の名前を呼ばれて、驚きも倍増していた。
三人のエルフは顔を晒して少女に近づいた。
「貴女が・・ヴィさんで間違いないですね」
「・・・はい」
警戒は怠らないが返事だけはした。
「実は王宮で大きな事故が有り、・・ヴィーノさんが重傷を負われました」
「うそ・・・」
「現在治療中ですが、うわごとに貴女の名前を呼ばれているので、家族を連れて来いとエルフ王のご命令なのです」
「そんな・・・」
「ご両親たちにも別の者が迎えに行ってますから、貴女も我々と一緒に王宮の治療室まで転移で行きましょう」
事故で瀕死の愛しい人が自分を呼んでいる。
家族も迎えが行ったらしい。
不安感と安心感で少女の思考は停止してしまっていた。
目の前の男達が本当のエルフで王宮の使者だと思い込んでしまったのだ。
「わ、解かった。行きます」
強い意思で答えた少女に対して男達は思った。
(良し、掛ったぁ)
「では治療室までは数回転移しますのでご了承ください。それでは参ります」
一度目の転移は王宮近くの建物と教えてくれた。
二度目の転移は王宮内だった。
「申し訳ないですが、もう一度転移してもらうのは王宮の警備の為なので」
わざわざ何度も転移するのは警備だと言い張る男達。
その事で少女に違和感を持たれない様にしたのだ。
連れてこられたのは今までとは違い大きな部屋で、壁、床、天井に魔法陣が描かれて有った。
「では転移先では係りの者が案内してくれますので」
そう言って男達は部屋の隅の制御室に入った。
「良し、やれ!!」
配下の男が魔法陣の”制御棒を下げた”。
すると部屋中の魔法陣が輝き出し視界が眩い光で覆われた。
男達に聞こえたのは「ってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」と言う断末魔のような少女の叫び声だった。
「良し、撤収だ。急げ」
何事も無かったかのように男達はエルフの王宮から立ち去った。
※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero
その行動を一部始終見ていたテネブリスとアルブマだった。
込み上げてくる怒りをアルブマが抱き付いて諌めていた。
「あいつ等は・・・簡単には殺さない。ずっと苦しめてやる・・・永遠に・・・」
「お姉様、今はまだダメよ。まずは予定通りにフィドキアとラソンに任せましょう」
少女を転生させた者達は仕事を終え、依頼者に報告したのち早々にエルフの国を離れ人族の国へ立ち去っていた。
「取りあえず今日はこの港町で休むぞ」
男達五人は仕事がうまく行き、報酬で酒と女を楽しめると思っていた。
犯罪に手を染めた者達は普通の宿には泊まらない。
裏路地に有る”どんなヤツでも”金さえ出せば泊めてくれる宿だ。
そこに向っていると目の前に”黒づくめの男”が立ちふさがっていた。
直ぐに気づき立ち止まる男達の頭目は即座に感じ取ってしまった。
それは自分と同じ系統の魔素を放っているが、明らかに自分達よりも強いという”匂い”だ。
なぜなら既に手足が小刻みに震えていた事に”気付いた”からだ。
「俺達に何か用か?」
立ち止まり頭目が訊ねると黒づくめの男が言い放った。
「我はお前達に永遠の苦しみを与える者だ」
その言葉を聞き、一瞬で逃げようとする男達。
しかし、徒労に終わる。
「な、にぃぃぃぃ!!」
男達が全員逃げようと身体を動かした瞬間、まるで世界が停止したような錯覚さえ起こる出来事を体感した。
それは自らの身体が停止して硬直しているのだ。
しかも仲間達全員が同じ事を考えていた。
(((やばいやばいやばい、殺される逃げないと・・・)))
「ではお前達を拘束する」
そう言って男は魔法を行使すると、動かなくなった男達は転移した。
転移してきた場所は草原の様な場所だった。
黒づくめの男が指を鳴らすと硬直していた男達の身体が自由になった。
「・・・いったい、俺達をどうするつもりだ」
Epílogo
どんな罰が与えられるのか?
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