第4話 聖白龍も成龍になり、つづく創生

始祖龍スプレムスが呼びかけた。


(アルブマ、あなたはそろそろ最終進化の次期では無いですか?)

(ハイ。次の眠りにつけば最後の進化が始まると思います)


長い時を経てアルブマ・クリスタが成龍となる”時代”が来ていた。


(アルブマ)

(ハイ、お姉様)

(私が見守ってあげるわ)

(お姉様、ありがとうございます)


自分達が産まれた洞窟の片隅で深い眠りに着くアルブマの側で、見守る様に寄り添うテネブリスだ。




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




この時代になると大陸は分裂し、いくつもの生命体が群れを成す様になっていた。

スプレムス達は、小さな生命体を踏みつぶさない様に長く暮らして居た洞窟を拠点として1つの大陸で暮らして居た。


テネブリスの第1ビダであるロサが成龍となって暫くすると、最終進化の為に寝ていたアルブマの身体が輝きだす。

その事に気づいたテネブリスが念話を発信した。


(ベルムゥ! お母様を呼んで来て頂戴)


皆の見守る中、一段と輝きを増し辺りが光に飲み込まれ・・・次第に終息していった。

一回り大きくなったアルブマはまだぼんやりと輝いている。

その輝きも収まり目を覚ますと、仲間の龍達に祝福を受けた。


成龍となって喜んだ聖白龍アルブマの体長は65kmで、テネブリスよりも若干小さい。

美しい白い鱗を纏い、黄金の瞳に虹色の角と爪。

成龍になると角も成長していた。


成龍となった身体を確認するアルブマにテネブリスが近づくと

(綺麗だよアルブマ。お母様と同じ角と爪だね。本当に綺麗だ)

(やだっ、お姉様ったらぁ)

するとデレまくるアルブマだ。


(お姉様。これより私の使徒を創造します)

(あなた、覚えてる? お母様に教えて頂いた方法)

(ハイ、想像力ですね)

(流石はアルブマ。私の妹だわ)


自慢げなテネブリスと嬉しそうなアルブマ。


(全体の想像力よ。形、色、魔素の量と・・・)

(ハイ、お姉様。では、始めます)


集中を始めるアルブマ。

そして両手を差し出すと手が輝き出し、二つの光がぶつかる場所が激しく輝いている。

そしてアルブマの手から光が消えて行く。

目の前には卵であろう球体が光っている。

(凄かったわ、アルブマ。あなたの創生、とても美しかったわ)

テネブリスに褒められて嬉しそうなアルブマ。


その光景を見ていた始祖龍スプレムスが

(あなたの使徒の名前は考えてあるの?)

(ハイ。私の使徒の名前はベルス・プリム、最初の美しさです)

恥ずかしそうにテネブリスを見つめるアルブマ。

(あなたに良く似て美しい使徒が産まれるのでしょうね)

テネブリスが褒めるとデレまくるアルブマだ。




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




暗黒龍テネブリスの使徒が第1ビダであるロサを創生から10,000年で成龍となる。

使徒の誕生から第1ビダが成龍となるまでの間に数多くの生命の種が現れて淘汰されて行った。

種の進化と共に小さな集落も発生するが様々な自然現象の中で、現れては消える繰りかえしで知性を持つ種が産まれるまでには至らなかった。


自然現象の中には天災や他種族との生存競争に、最上位種である龍達の無意識による踏みつぶしや不可抗力も含まれる。

そのような光景を見て”苛立ち”と”あきらめ”を持って関与せず、考えない様にする者が居た。それは”自らが望む存在の発生”には遠く及ばないからだ。

そして今は前世の種族よりも、目の仲間に前の子どもたちの事だけを考える様にしたテネブリスだった。


テネブリスの使徒ベルムからロサへ指導され創生の手順を教えられた。

それは代々教わった言葉とまったく同じ物で、今回もテネブリスからロサへと助言があった。


(ロサ、良いですか? )

(はい。テネブリス様)


テネブリスはロサに名前で呼ばせるようにしていた。

テネブリスからは孫にあたるロサ。

そのロサから祖母様などとは聞きたくなかったからだ。

前世と違い、月日や時代が変わっても容姿が全く変わらない成龍なので精神的にも”友達感覚”の方が、気が安らぐのでテネブリスの要望だった。


友達感覚と言っても姿は小さな龍なので致し方ないのだが、それでも自らが創生した者の”子”が可愛くない訳が無い。


(あなたの子は創生を必要とせず交配だけで構いません。ですから最初から性別が必要です。あなたの様に男性型か、それとも女性型か。まぁ私とベルムには性別は有りませんが・・・性格は女性型です。順番にすれば男性型ですが、あなたに任せますわ)

(はい。テネブリス様)

そう言ってロサは龍人の創生を始める。

現状の龍種で明確な性別が有るのはロサだけで他は全て無性だ。

性器は存在しない。


ロサを創生する時にベルムを連れ回り性教育をした事が懐かしく思い出すテネブリスだ。

小さな生物の交配を観察させて、男女どちらにするか問われた時に迷う事無く男型と指示したのは、自らの欲望が思わず出てしまったと後になって後悔したテネブリスだった。


目を閉じ集中するロサ。

教わった通りまずは想像している。

どの様な形で、性格や、色などを細かく思い浮かべ、その子の力となる魔素を周囲の空間から全身で集める。

魔素量を感じとり両手で放出して混ぜるように形にしていく。

集中し想像力を膨らませる・・・・集めた魔素と放出時間でこの子の力と強さが決まる。


手から出ている魔素の先には光り輝く球体状の物体が出来ていた。

それは光沢の有る真っ黒な卵だった。


テネブリスが始祖龍スプレムスの代わりに聞いてきた。

(ベルム、ロサ、あなた達この子の名前は決めているの?)

「「いいえ」」

そこにテネブリスが念話を挟む。


(分かりました。あなた達と同様に私が決めます)

「「お願いします」」

(この子の名前は・・・フィドキアです)

「「それは・・・」」

(信頼と言う意味です。今後、小さな生命体と数多く交流するこの者は、私達が信頼し任せられる者だからよ)




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




時は流れ・・・

フィドキアは創生から5,000年で成龍となる。




ある時、母であるスプレムスに呼ばれたテネブリスとアルブマだった。


(あなた達、聞いて頂戴)

「「はい、お母様」」


以前、進化の過程で覚えたと言ってエスパシオ・ボルサ空間バックを見せびらかした揚句に使い方を教えたのだが、簡単に”魔法”を使って見せたスプレムスだった。


そしておもむろに空間から卵を取り出したスプレムス。

驚くテネブリスとアルブマを余所目に語り出す。


(羽化に時間が掛ると思ってね、内緒で作ったのよ。それでね、そろそろ羽化が始まると思うからお願いね)


「「ええぇぇっ!!」」


隠し子ならぬ、隠し卵の告知だった。

スプレムスの創生する卵は自分達と同等の存在であることは知っているし、計画は聞いていたテネブリスとアルブマだ。

しかし、流石に羽化の間も無い卵を渡されるとは思っていなかった。

その事に文句を言おうとしたがアルブマが喜んでいるし、スプレムスには今更だった。


渡されたのは真紅の卵だ。

その卵をアルブマが大事そうに抱えて温めている。

テネブリスは確認の意味を込めてスプレムスに問いただした。


(お母様、一応確認しますけど、まだ卵を持っていないでしょうね?)

その念話を受けてピタリと動きが止まった。


(お母様!)

(なっ、無いわよ。有る訳無いでしょ)

母を見つめていた娘が溜息をついた。

何故ならばスプレムスの目が泳ぎ、顔を反らしたからだ。

嘘をついた事を見破り確信して妹に教える姉だった。


(アルブマ、覚悟して頂戴)

(はい、お姉様。一体何を覚悟するのですか)

(いずれ又お母様から別の卵を渡される時が来ます)

(・・・)

アルブマから返事は無く溜息だけだった。


以前、計画性を持って創生しようと三体で話していたが、こっそりと創生していた事が少しだけ苛立ちを覚えた二体だ。

何故ならばスプレムスの創生を見ているのはテネブリスだけでアルブマも見たいとテネブリスに念話していたのに忘れられていた様だ。

その事にガッカリしたアルブマをなだめるテネブリス。


暫らくすると真紅の卵にヒビが入った。

それを見て騒ぐアルブマに気づき全員が集まる。

勢いよく割れた殻から出てきたのは卵と同じく真紅のチビ龍だった。

真紅の鱗と瞳。

そして漆黒の角と爪。


すると例によってテネブリスに問われて答えるスプレムスだ。

(この子はセプティモ・カエロと名付けます。意味は”七つの天体”です)


七つの天体が何を意味する事なのか誰も解らなかったが今までに無い真紅の姿に、その事を忘れさせるだけの魅力を持っているセプティモだった。


(この惑星の周りに存在する星々を見守り外敵から守る使命を持つ子よ。・・・いずれ詳しく話すわ)


セプティモの世話はアルブマが見る事になった。

産まれた順番なので当然だが、種族としてテネブリスとアルブマの同族だ。

他はそれぞれの眷族となるので今回はアルブマが担当となった。

とは言え、全ての種族が新たな属性龍の卵の世話をする事になる。




※Dieznueveochosietecincocuatrotresdosunocero




セプティモはまだ幼いが姉達と違い、かなり活発やんちゃだった。

悪戯好きで、いつもアルブマを困らせてテネブリスに怒られるのが通例になっている。


そんな時、スプレムスから呼び出された。


(あなた達、聞いて頂戴)

「「「はい、お母様」」」


以前テネブリスが予感した事が的中したと思った二体だ。


(これから最後の創生を始めます)


「「ええっ最後のぉ!?」」


考えていた事と違って驚いた二体だ。


「その前に、まずこの子を渡しておきます」


そう言ってエスパシオ・ボルサから真っ青な卵を渡された。

意表を突く最後の創生宣言に、隠し卵の事も驚きが半分以下になったのはスプレムスの作戦だったのだろう。

テネブリスとアルブマが溜息をついた。


しかしアルブマとの約束をテネブリスから事有る毎に言われて今回の宣言となったようだ。


(お母様の最後の創生が始まるからしっかりと見なさい)

(うん、お姉ちゃん)


アルブマの横で寄り添うようにスプレムスを見ているセプティモだった。






Epílogo

成長日記「アルブマの成龍時点」

暗黒龍・・・テネブリス・アダマス・成龍。

暗黒龍の使徒であるベルム・プリム・成龍。

暗黒龍の使徒の第1ビダであるロサ(男型)・成龍。

暗黒龍の龍人であるフィドキア(男型)・成龍。

聖白龍・・・アルブマ・クリスタ・成龍。

聖白龍の使徒であるベルス・プリム・成龍。

七天龍・・セプティモ・カエロ・卵の大きさ・・10km・・生後12km。

生後100,000年で体長67kmの成龍となる予定


☆ロサとフィドキアの成龍状態の体長は、その後魔法で大きさを変える事となります☆


龍の使徒とは、それぞれの龍が力を与え創造した生命体(性別無)

使徒の第1ビダとは、使徒が創造した最初の生命「Primero Vida」の意。

(性別有、後に人化になり交配も可)

第1ビダが創造した龍人とは、龍、使徒、第1ビダの使命を実行し他種族との交配する者。

(性別有、交配のみ)


龍達がこの先どうなるの?

と関心を持って頂けたらブクマお願いします。

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