第5話廃村

 ルイとダイは国境を越えフィン王国に入ったが、この国とベルト王国は何かと問題があった。

 人種差別がなく身分差による貧富の差が少ないベルト王国には、人種差別と貧富の差が激しいいフィン王国から多くの人が逃げてきており、その引き渡しについて争いが起きていたのだ。

「ダイ。お金を節約したいから、狩りをしたいんだけど、どこか適当な所はないかな?」

「そうでございますね、勝手に狩りをすると領主に捕まり奴隷にされてしまいますから、どこかの領主に税を払って森での狩りを許可してもらうか、同じく税を払って冒険者として魔境やダンジョンで狩りをするかですが、どちらにしてもこの国の税は高いですから、あまりお勧めできません」

「この国の税はそんなに高いのかい?」

「ベルト王国は4割の税でございますが、この国では7割の税でございます」

「7割だって?! それでよく国民は生きて行けるね」

「7割は国の税でまだ安い方でございます。領主によっては9割の税をかけているところもあります」

「9割もの税を払っていたら、国民はろくに食べることも出来ないんじゃないかい?」

「はい。そのため多くの貧民がベルト王国に逃げてきております」

「父王陛下が貧民対策に頭を痛めておられたのは、流民が多く入ってきていたからなんだね」

「はい。ですが幸いにもわが国には多くのダンジョンがございますので、冒険者になることで食べることくらいは可能でございます」

「税を安くすれば、魔境やダンジョンさえあれば、喰うには困らないんだね」

「魔獣の肉を嫌がらなければでございますが」

二人が話しながら歩いていると、ようやく家が見てきた。

小さな村に着いたようなのだが、その村の様子はまるで廃村のようだった。

「ダイ、人が倒れている。助けてあげよう」

「はい」

「おじいさん、おじいさん、大丈夫ですか?」

「う、ううう」

「飢えているようでございますね」

二人がボロボロの家の前に倒れているおじいさんを介抱しようと近づくと、家の中にも飢えで動けなくなった子供がいるのが分かった。

「食べ物を分けてあげよう」

「若様の食べ物をそのまま食べさせるのは危険でございます。これほど飢えているのであれば、胃腸が受け付けません」

「ではどうすればいい?」

「粥を作って与えるのがいいと思われます」

「ダイは粥を作れるのか?」

「お任せください」

「では頼む」

ルイの命を受けて、ダイは急いで粥を作った。

家々を回って死人のように倒れている村人に声をかけ、僅かに残る家財の中から鍋や釜を探し出し、急いで薪を集めて火をおこした。

ダイは多めの水で米を煮て、適量の塩を加える事で重湯にして、病人でも消化吸収できるように工夫していた。

全ての村人に御粥を食べさせ一息ついたころにそれはやってきた。

「ウォ~ン」

「ウォ~ン」

「狼でございます」

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