ワンダーオブワンダー

一ノ瀬 水々

第1話 呪われしフィブラ

 暗い海、一隻の船が向こうに流れていく。ゆっくりゆっくりと離れていくその光景を俺は忘れることはできない。この運命から逃れることができるのならば、いつかその時は笑い合えるだろう。



 クラソは宿のベッドの上で目を覚ました。そう、不穏な空気を感じたのだ。

「またか・・・」

 左肩を押さえながら起き上がり、周囲の音に集中する。突然扉を誰かがノックした。思わず身構えるクラソ。

「お客さーん、朝食の時間終わっちゃうけどどうするんだい」

 扉の向こうから、宿の主人の声がした。安心したクラソはふとため息をつき、扉に向かって歩きだした。

「どうもありがとう、いますぐ」


 ガシャンと派手な音を立てて背後の窓が吹き飛んだ。振り向く先にクラソが見たのは、異形の姿をした黒い化け物だった。化け物が鋭い爪の生えた手を振り下ろした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る