最愛の人を殺されたので、復讐しようと思います

@asasin123

第1話

ドサッ。


そんな音と共に彼女は倒れた。


あの光景は、一生忘れないだろう。


最愛の人が、目の前で殺されたあの瞬間を。


まだ結婚してなかったとはいえ、彼女とはずっとこれから先一緒にいるんだろうなと、漠然と思っていた。


同じ村で、同じ年に生まれ、村で子供は俺達だけだった。


100人程度の小さな村。


だからこそ、自然といつも一緒にいて、自然とお互い惹かれあった。


狭い世界での恋愛だったから、もっと広い世界で彼女と出会っていたら、惹かれ合っていたかはわからない。


だが、俺達にとってはその狭い世界が生きている世界であり、他の人と結婚するなんてことは考えられなかった。


そんな世界が壊れたのは15の時だった。


この国では、14で結婚していても不思議ではないが、俺達の村では16になってから結婚するの常識だ。


だから、俺達も16になったら結婚しようと約束していた。


そして、先に彼女が16になり、後10日後に俺の誕生日が控えている日、俺の思い描いていた未来は突然と消え去った。


その日はとても晴れていて雲1つなく、なんとなく良い日になりそうだなと思っていた。


村での基本的な生活は、男は農業をやるか、狩りを行うかのどっちかである。


でも、狩りは誰もができるわけではなく、この村で狩りが出来るのは、俺を含めて6人しかいない。


それも毎日ではなく、2、3日おきに狩りを行う。


これは、狩り過ぎによる生態系の破壊を防ぐためだ。


そして、今日は狩りを行う日であり、六人が二人一組に分かれ行動していた。


一方村では、残りの男は畑仕事をしたり、薪を集めたりし、女は家事を午前中行い、それが一段落する昼過ぎぐらいから、畑仕事を手伝うのが習慣となっていた。


異変が起こったのは、昼頃だ。


昼休憩をとろうと、皆が休もうとしたとき一人の男がやって来たのだ。


旅人のような格好をしており、背中には剣を背負っていた。


こんな小さな村に誰か人が来るのは珍しく、徴税官がやって来るような時期でもない。


村人が、誰だろうと不審がりながらも応対しようとしたとき、いきなり斬りかかられたのだ。


突然のことに呆然とする村人達。


一拍遅れて、その事実を受け止めたとき、女達の悲鳴が響いた。





俺達、狩りチームは森の深くまで入り込み何匹か獲物を捕らえ、昼になったので休憩していたとき、その女達の悲鳴が微かに聞こえた。


異変を感じた俺は、狩り道具を捨てパートナーの大人と一緒に急いで駆け出した。


森を抜け出した時、俺の前に広がっていた光景は、酷いものだった。


俺がいつも見ていた、のどかな村の風景などそこには一切なく血と死体で埋め尽くされていた。


見渡す限り死体しかなく、この惨状を引き起こした犯人の姿はない。


「どういうことだよこれは……」


パートナーの男が、この惨状にそう呟く。


俺は、家族当然に過ごしてきた村人達の死体を乗り越え、急いで自分の家が担当する畑えと赴く。


「父さん……母さん……」


そこにあったのは、剣で斬り殺された無惨な両親の姿があった。


その事実に、自然と涙が溢れてくる。


「ルカ……ルカはどうなったんだ。ルカー!!ルカーー!!」


俺は、両親が殺された悲しみに明け暮れながらも、最愛の人の名前を叫んだ。


ここまで来るのに見た多くの死体は男が多かった。


村での風習に、男は女を守るものだというものがある。


だから、男が時間を稼ぎ、女達は逃げた可能性が高いハズなのだ。


「ハルー!!」


そんな俺の声が届いたのか、ルカの叫び声が食料を保存する貯蔵庫から聞こえてきた。


俺はその声が聞こえてきた瞬間に、貯蔵庫へと走り出した。


いつもは閉められている貯蔵庫の扉は開いていた。


その扉から血が溢れており、貯蔵庫でも同じような惨状が広がっているのは安易に予想ができた。


貯蔵庫に入った瞬間、目に入ったのは、30はある女の死体。


そして、怯えるルカの立ち姿とルカに斬りかかろうとしている男の姿だった。


男の背中越しにルカと視線が会う。


ルカはまさに斬られようとしている瞬間にも関わらず、俺と視線が会うと優しく微笑み何かを言った。


声は聞こえなかったが、口の動きから「逃げて、好きだよ」と言ったのが分かった。


ルカがそう言った瞬間、血しぶきが舞いルカは倒れた。


「ルカーー!!」

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